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THE WORLD  作者: SEASONS
4月16日
741/1230

最重要施設

《サイド:天城総魔》



宿舎を離脱したあと


単独での行動を開始した。



現在は砦の内部を移動して、

目的の場所に向かって歩き続けているところだ。



向かうべき場所はこの砦の中心に位置する建物になる。



すでに見取り図は記憶しているから迷う心配はない。



これから向かう場所こそが、

この砦において司令塔の役割を果たす拠点だと推測しているのだが、

実際にどうかは行ってみなければわからない。



ただ…遠目から見ても最重要施設であることは十分に感じ取れた。



「…目的地はアレか。」



数多くある建物の中でも最も頑丈な造りの建物だ。



最も大きなアストリアの国旗が掲げられ、

偵察用の展望台まで用意されている。



ここがこの砦で最も重要度の高い場所なのは間違いないだろう。



見取り図だけでは各施設の詳細までは分からないものの。


探せば武器庫や食料庫などもどこかにあるはずだ。



それらを破壊できればかなりの痛手を与えることができるとは思うが、

今は破壊工作に時間を割く余裕がない。



まずは生きて脱出することが最優先だからな。



調査に費やせる時間を有効に使う必要がある。



破壊工作は後続の共和国軍に任せればいい。



今回は情報収集が目的だ。



そのために最も情報を得られそうな場所を選んで侵入する必要がある。



通常なら決して近づけない最重要拠点だが、

今ならまだ接近できる可能性があるだろう。



宿舎で手に入れたアストリア軍の服を着て行動しているからな。



それになにより、

共和国軍がまだ接近していないという理由もある。



現段階ではまだ敵の警戒はそれほど高くないはずだ。



少なくとも拠点に向かって歩く俺を呼び止める者はいない。



何の問題もないまま、

目的の建物に近付くことはできた。



…とは言え、そこまでだ。



入口を固める屈強な兵士達が配備されているからな。


通り抜けるのは難しく思える。



何らかの理由がない限り、

通してくれそうな雰囲気は感じられない。



思いつく適当な理由を並べて説得を試してみるのも良いとは思うが、

この砦に関して何の知識もない現状で賭けに出るのは得策ではないだろう。



余計な詮索を受けた場合にまともな対処は出来ないからな。



今はまだ兵士達との接触は出来る限り避けておくべきだ。



…だとすれば、どうする?



別の場所からの侵入を考えるべきだろうか?



あまり目立たないように拠点の周囲を周って裏側へと回り込んでみる。



裏側にも扉はあるのだが、

やはり鍵がかかっているようだ。



内部の状況もわからない状況で鍵を破壊して侵入するのは危険でしかない。



周囲に警備兵はいないとはいえ、

巡回兵は数多くいる。



扉を破壊して中に入るのは諦めたほうがいいだろう。



…そうなると、正攻法は無理だ。



鍵の破壊は簡単だが、

痕跡が見つかれば騒ぎになるからな。



その危険性が分かっていて強行するのは避けたほうが良い。



…だとすれば。



扉ではない別の入口を探すしかない。



そうなると。



考えられる方法は一つしか思い浮かばない。



さ迷わせる視線が、ある場所で止まった。



3階建ての中心になる2階の窓だ。



建物には数多くの窓があるのだが、

その窓だけが半分ほど開かれているのが見える。



…誰かいるのだろうか?



窓からの侵入を考慮していないような不用心さだが、

もしも無人だとすれば上手く侵入できるかもしれない。



周囲を警戒しつつ。


風の魔術を使って窓まで浮かんでみる。



こっそり内部を覗いてみると、

そこは手洗い場だったようだ。


おそらく換気のために窓を開けていたのだろう。



一階の窓は全て閉まっていたが、

二階は警戒心が緩んで開けてしまったのかもしれない。



俺にとっては好都合と言える状況だ。



静かに建物の内部へと侵入してみる。



事前に入手した見取り図だけでは建物の内部までは分からない。



宿舎もそうだが、

内部構造の図面までは手に入らなかったからだ。



マールグリナが派遣していた密偵も各施設の内部までは侵入できなかったらしい。



部分的な情報なら見取り図にもあるが、

拠点の内部までは調べられていなかった。



そのため。



内部の状況は自分自身で調べるしか方法がない。



「…ここから始めるか。」



外から見ている時にも感じていたことだが、

薄暗い建物の内部は思った以上に広いようだ。



トイレだけでも学園並みの規模がある。


さすがに10万の部隊を抱える最前線基地と言うべきか。



まともに調査しようと思うなら、

とても2時間では足りないだろう。



最低限の情報を調べるだけでも相当な時間が必要になってしまうからな。



できる限り短時間で終わらせるために、

調査範囲を絞り込むべきだろう。



何より、いつまでもここにいれば誰かと鉢合わせしてしまうかもしれない。



早々に行動するべきだ。



「一旦、出るか…。」



忍び込んだトイレの出入り口に接近して外部の様子を窺ってみる。



幸いにも周辺に人の気配はあまり感じられなかった。



何人かの兵士達が建物の内部を巡回しているようだが、

思ったほどの人数ではないらしい。



この程度の監視なら上手く回避できるように思える。



…行くか。



隙を見て通路に飛び出す。



そして近場の部屋から一つ一つ内部を確かめてみる。



…だが。



気になるような部屋は何もなかった。


ほとんどが物置か空室のようだ。



まともに使用されている形跡が見つからない。



おそらくはまだ砦が出来たばかりで物資の搬入が間に合っていないのだろう。



あるいは籠城ろうじょう戦になった場合に備えて兵士達を収容するための空き部屋を用意しているのかもしれない。



どういう意図があるのかは不明だが、

どちらにしても現段階では探りようがないな。



とはいえ。


現状でも分かることは幾つかある。



『2階は窓が空いている』こと。


そして『未使用の部屋が多い』ということだ。



これらの事実を考慮して2階の探索を打ち切ることにする。



理由は簡単だ。



この階に重要度の高い部屋はおそらくないと推測できるからだ。



例え内部に侵入されても困ることはないとしか思えない。



だからこそ巡回兵の数も少ないと考えられる。



そうなると、別の階に向かうべきだ。



…ただ。



一階の警備は厳重だったように思う。



直接確認したわけではないが、

外部から偵察している時に窓から兵士達の会話が漏れ聞こえていたからな。



一階に向かうのは危険だろう。


だとすれば移動できるのは3階になる。



行ったところで何もない可能性はあるが、

危険度の高い一階に向かう前に調査しておくべきだ。



何もなかったら一階に向かえばいい。



まずは安全に調べられる範囲から探索してみよう。



そう判断して、

3階に向かって移動することにした。



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