潜入方法
《サイド:琴平愛里》
………。
調査を開始してから30分くらい経過したでしょうか?
私達は先ほどまで隠れていた集合地点へと戻りました。
「…そちらはどうでしたか?」
「無理!無理!南側は戦力が集中してるみたいで、隙どころか接近さえ出来なかったわ。」
問い掛ける徹さんに、
三倉さんが率先して答えています。
「まあ、いつ共和国軍が攻めて来るかわからない状況だから、当然といえば当然なんだけどね。とりあえずは警戒が厳しくて接近は不可能よ。」
南側は接近さえ難しいようですね。
ここから南側には共和国の国境警備隊の軍事拠点がありますので、
警戒されるのは仕方がありません。
三倉さんの報告が終わったことで、
続いて朱鷺田さんも説明してくれました。
「東側も似たような状況です。マールグリナに向かう街道が近い為に、見張りが数多く配置されています。うかつに近付けば、それだけで危険にさらされるでしょう。」
共和国側の交通の便という意味で、
東側が最も行動しやすいということです。
そのせいで監視の目も厳しいようですね。
そうなると身を隠すのも困難ですので、
東側からの接近も無理ということになってしまいます。
そんな朱鷺田さんの報告を聞いたことで徹さんはため息を吐いていました。
「はあ…。やっぱりそうですか。残念ながら北側も似たような状況です。警備自体は他の方面に比べれば緩めかもしれませんが、輸送部隊の護衛のためか、巡回兵の数はかなり多く感じられました。ですので、おそらくは潜入どころか、接近そのものに無理があると思います。」
北側はアストリア方面になりますので、
見張りの数がどうこう以前にアストリア軍の往来が多いようですね。
だとすると。
やっぱり北側も接近できないということになってしまいます。
徹さんの説明が終わったことで最後に私も報告することにしました。
「すみません。西側も見張りが多くて近付けそうにありませんでした。多分、他の場所に比べれば一番警備が手薄だとは思いますが、それでも潜入する隙があるようには思えません。」
そもそも防壁を突破する方法がないんです。
各方面にある門は警備の方々が厳重に監視していますし。
防壁をよじ登って乗り越えるにしても、
防壁の上部からの監視を逃れる方法がありません。
砦の内部に侵入するためにはどうしても防壁を超えなければいけないのですが、
その方法が存在しないのです。
これでは接近は出来ても潜入は不可能です。
四方を確認した結果として、
砦へ潜入出来そうな隙間は『どこにもない』という結論に達してしまいました。
「これは困りましたね…。」
頭を悩ませる徹さんですが、
その気持ちはみんな同じだと思います。
「どうしますか?」
これからどうすればいいのかを訊ねてみると、
全ての報告を聞き終えた天城さんが方針を決めてくれました。
「砦の西側に水路がある。上手く忍び込めれば、そこから侵入出来るはずだ。」
…水路、ですか?
天城さんは砦の見取り図を広げながら説明してくれました。
「場所はここだ。」
砦から西に向かって1キロメートルくらいでしょうか?
「少し距離はあるが数分程度だ。直接、砦に忍び込むよりは安全に潜入できるだろう。」
森の中の月明かりだけでは正直に言ってすごく見にくいのですが、
図面には幾つかの用水路が記されているようです。
「さきほど確認してきたが、見張りは数名だったからな。突破出来ないということはない。」
私達が砦の各方面を調査してる間に下見を済ませていたようですね。
だとしたら間違いないはずです。
天城さんは図面を指差しながら道順を全員に示してくれました。
「水路を越えた先には兵の宿舎があるはずだ。宿舎は四隅に計4つあるが、ひとまずは最も近い南西側の兵舎を目指す。敵の数は推測出来ないが、時間的に考えて行動している兵士はそれほど多くはないはずだ。それに上手く兵士の服でも手に入れられれば、安全に行動出来るだろう。潜入を成功させるために、まずはここを突破することにする。」
…ああ~。
…なるほど。
そうですね。
アストリア軍の服を手に入れられれば行動がしやすいですよね。
そのためには兵士の方々が多く集まる宿舎は好都合だと思います。
未使用の予備か洗濯済みの服は必ずあるでしょうから探す価値はあるはずです。
「賛同します。おそらく最も成功率の高い作戦でしょう。」
「私も良いと思うわよ。」
朱鷺田さんに続いて、三倉さんも賛同していました。
「特に兵士の服の入手は価値があると思うから、上手く行けば砦の内部を自由に行動できるでしょうね。」
「ええ、そうですね。成功を信じてやってみましょう。」
三倉さんに続いて、
徹さんも賛同しています。
みなさん異論はないようですね。
もちろん私もありません。
天城さんの方針に全員で頷きました。
「私も頑張ります。」
全員が覚悟を決めたことで、
私達は西側の水路に向かって行動を開始することになりました。




