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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
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作戦会議

《サイド:米倉宗一郎》



午後11時。



ほぼ半日かけたことで、

大筋の作戦の立案を終えることができた。



「ひとまずここまでだな。」



現段階で考えられる計画はこの程度が限界だろう。


あとは実際に相手の動きを見ながら判断するしかない。



よく言えば臨機応変だが、

悪く言えばいきあたりばったりだろうか。



…とは言え。



各国の動きがどうなるか分からない状況では完璧な作戦など立てようがない。



もちろん共和国としても周辺各国に密偵を送り込んではいるが、

手に入る情報の全てが真実とは限らないからな。



偽の情報をつかまされて踊らされた挙句、

手痛い被害を受けて部隊が壊滅などということがあっては笑い話にもならない。



現時点では予想できる範囲内で対策を練るしかないのだ。



それでも俺の判断を、

琴平も新藤も桜井もリンも納得してくれていた。



誰もが現状を把握しているからな。


不満などあるはずもない。



現状で考えられる作戦は限られている。



セルビナとミッドガルムに関しては、

ひとまず偵察と牽制しかできないだろう。



時間を稼ぎながら少しずつでも戦力を集めて防衛力を高めるしかない。



あくまでも防衛を最優先事項としつつ。


町への被害が及ばないように、

出来る限り国境近辺で食い止めることが重要になる。



…まずは持久戦に重点を置いて国の動きを観察するしかない。



主力の陸軍はミッドガルムの牽制役だ。


そして海軍は海域の確保に専念する。


もちろん海域の確保には食糧の確保も含まれている。



戦争によって起こる労働力の低下を緩和する為だ。



食糧の確保が出来なければ飢餓が起きてしまう。



精神的な疲労も蓄積すれば、

やがて戦う意思さえなくなってしまうのだ。



その危険性を防ぐ為にも。


漁業を守り。


食糧を確保することが重要な作戦の一つとなる。



そして何よりも深刻な状況なのはマールグリナだな。



正式な軍ではなく、

国内での活動を主とする傭兵を送り込むことになるからだ。



総勢3万2千の魔術師達と、

国境警備隊3千人が加わった3万5千の魔術師がアストリアに対する主力部隊となる。



その軍勢を率いるのは美由紀だ。



本来なら陸軍を派遣したいところなのだが、

俺も新藤も琴平も、

ここにいる者達もいない者達も、

全ての考えは一致してミッドガルムへの派遣を提案している。



本当に恐れるべき敵は軍事国家ミッドガルムだからだ。



本腰を上げて進軍を開始したらどれ程の戦力を集めても防ぐことは難しい相手だと考えている。



いつ攻めて来るとも知れないアストリア王国よりも、

本気になったミッドガルムへの対応の方が何よりも重要な課題なのだ。



そのせいでマールグリナに軍を送る事が出来ずにいた。



だからこそ俺は早期の段階で戦力を考慮して独自の判断で傭兵部隊をマールグリナへ集結させるように事前に対策をとっていたのだ。



その結果としてアストリアへの行軍は傭兵を主力とした部隊になった。



もちろん傭兵といっても陸軍に匹敵するほどの実力はある。



各町の魔術師ギルドに所属する精鋭部隊だからな。



戦闘に特化した魔術師を集めた部隊だ。



分類上は傭兵といえども、

この国を守る為に戦う意思は他の誰とも違いはない。



この国を失えば全ての魔術師は居場所を失うことになるからな。



傭兵だからといって統率力や実力が劣る等ということはない。



単に軍に所属しているか、していないか。



ただそれだけの違いがあるだけで、

戦力としては申し分ないはずだ。



自信を持って誇れる主力と言える。



そこに嘘偽りはない。



何より総力戦ではなく局地戦という面で考えれば軍隊よりも傭兵の方が能力的には上だろう。



魔術師ギルドの総力とも言える戦力だからな。



数はともかく、質は一級品だ。



現時点で用意できる最高戦力とも言えるはず。



まずはアストリアへの進軍を目的として、

マールグリナを本拠地とした傭兵部隊を美由紀が率いることになる。



そしてミッドガルムへの対応として、

カリーナを本拠地とした各町の志願兵達を桜井由美が率いる。



さらにミッドガルムとの国境の防衛として、

陸軍を新藤輝彦が率いる。



残るセルビナへの対抗戦力として、

ランベリアを本拠地とした多国籍軍を、

リン・ラディッシュが率いる。



俺自身は海軍を率いて海上の安全を確保しつつ。


アストリアとセルビナ両国への牽制を行うことになっている。



琴平重郎はマールグリナの医療部隊を率いて各地の後方支援を行う予定だ。



それらが現在で考えられる大まかな流れになる。



実際に各地で起こる小競り合いや駆け引きなどはその都度対応していくしかない。



その結論を出して、会議は終了となった。



「あとは祈るしかないだろう。」



その言葉をきっかけとして、

新藤輝彦が問い掛けてくる。



「例の少年はどうしているのかね?」



例の少年とは天城君のことだ。


国境へ先行させるためにすでに旅立っているのだが、

その辺りの事情は琴平重郎が答えてくれた。



「時間的に考えて、そろそろマールグリナへ到着する頃でしょう。彼にはすでに仕事を一つ頼んでいます。問題の砦への潜入調査ですが…上手く行くかどうか分かりませんが、現時点では彼に任せるのが適任かと思います。」



重郎の言葉を聞いたことで、

桜井由美が頷いていた。



「…まあね~。私も試合を見ていたから彼の実力は認めるけれど。だけど10万の敵軍の中に潜入なんて、まともな作戦とは思えないわ。」



その指摘は当然だな。


琴平も申し訳なさそうな表情で答えていた。



「申し訳ありませんが、これは仕方がありません。情報を集めないことには作戦の立てようもないのです。潜入調査は誰かがやらなければいけません。もちろん、彼一人に全てを押し付けるつもりはありませんが、最も生存確率が高いのは彼で間違いないでしょう。」


「…う~ん。頼む方も頼む方だけど、引き受ける方も狂ってるわね~。」



…そうかもしれないな。



直接俺が動けるのであれば危険な役目は全て引き受けたいが、

戦闘どころか日常生活にさえ苦労する病状の身では潜入どころか移動すらままならないからな。



そのせいで天城君に頼ることになってしまったが、

桜井の言い分も理解できる。



敵軍の中に飛び込むことなど正気の沙汰ではないからだ。



だが。


だからこそ上手くいけば戦況を変えられる可能性がある。



少しでも多くの情報を手に入れて少しでも有利に動くことができればアストリアの軍を押し戻すことができるかも知れないからだ。



その可能性を掴み取るためには命懸けで諜報を成功させるしかない。



「殺し合いの戦争という時点で狂っているのはどこも同じだ。命の危険を理解していながらも、この国の為に決断した彼の勇気は称賛に値するだろう。」


「まあ、ね…。」



俺の言葉によって桜井由美は再びため息を吐いていた。



「だけど、この国の存続を一人の少年に委ねるというのはどうかと思うのよね〜。」



ああ、確かに無茶かもしれない。



だが、一人ではないはずだ。


そのことを琴平重郎が真剣な表情で答える。



「もちろん一人ではありません。彼には十分な戦力は用意するつもりです。ですが、帰って来られるのはおそらく彼だけでしょう。例え護衛は全滅したとしても、彼さえ生存できれば作戦は成功するのですから。」



琴平の言葉には何らかの意思が込められている。


何かを隠しながらも覚悟を決めているようなそんな意思だ。



「何が起ころうとも彼の生存を最優先するように指示を出してあります。我々は情報と彼の帰還を信じるだけです。」



強い意思を秘めた瞳。



琴平の覚悟を感じた桜井由美は口を閉じた。


これ以上口を挟むべきではないと感じたのだろう。



俺としても余計な口出しをするつもりはない。



マールグリナで用意した戦力がどの程度のものかは俺も知らないが、

今は重郎の言葉を信じようと思う。



「…さて…」



重苦しい空気を断ち切るために、

全員に話しかけることにした。



「ひとまず会議はこれで終わりにしよう。この中の何人が生き残れるかは分からんが、全員が生きて戦争を終わらせることが出来るように切に願う。」



決戦前夜の作戦会議はひとまず終了だ。


ここからはそれぞれに行動することになる。



「全員の生存を願う。」



改めて祈りを込めてから、

それぞれの戦場へと向かうことにした。



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