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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
722/1236

子供の頃から

《サイド:美袋翔子》



うぅ~ん。



…困ったわね。



実家の玄関先まで帰ってきたのはいいんだけどね〜。



何となく中に入りづらいのよ。



どうしたらいいのかな~?って、

ひたすら悩んじゃうの。



…まあ。



家に入るのはね。


すっごく簡単なのよ?



鍵がなくて入れないとかそんな理由じゃないから。


入るのは簡単なの。



…でもね?



なかなか踏ん切りがつかないのよ。



そもそも何をどう説明するばいいのかなんてわからないし。


何をどう話せばいいのかも分からないの。



だからね。


帰ってきたのはいいんだけど。


これからどうすればいいのかがさっぱり分からなかったのよ。



…さすがにね〜?



馬鹿正直に「戦争に行ってくる」なんて言えないわよね?



そんなの絶対、反対されるに決まってるわ。



ごくごく普通に考えて。


「戦争に行ってきます!」なんて言って。


「いってらっしゃい♪」なんて。


言ってもらえるわけがないわよね!?



…って言うか。



間違いなく喧嘩になると思うわ。



そうなるとね。



最終的にお互いに嫌な思いをするだけだと思うのよ。



…だから。



本当のことなんて何も言えないの。



…でもね~?



何も言わずに「はい、さよなら」って訳にもいかないわよね?



そんな別れ方だと味気ないというか。


何のために帰ってきたのかが分からないし。



そもそもそんないい加減な挨拶をするくらいなら、

最初から何も言わないほうがましだと思うのよ。



…だからね。



ちゃんと向き合って話し合いたいんだけど。


どこまで話せばいいのかが分からないのよ。



…と、まあ。



そんなことを延々と悩んでるところなの。



悩んだところで都合の良い言い訳なんて思い浮かばないけどね。



それでも正直に話をするわけにはいかないと思うのよ。



これからどこに向かうとか。


何をするつもりとかは言えないの。



全てを話すことは出来ないわ。



…だって、言えるはずがないわよね?



戦争に行ってくるなんて両親に言えるわけがないわ。



きっとお父さんもお母さんも反対するに決まってる。



それが普通で、当たり前のことだから。



娘を殺し合いの戦場に送ることを素直に認める親なんているはずがないわよね?



だから、悩んでいるの。



今日で最期になるかもしれないからちゃんと話し合いたいんだけど。


それが分かっていながらも何も言えないの。



だけどね?


それでもね?



死ぬかもしれないって思うからこそ、

両親に対して『嘘』はつきたくないって思うの。



最期の言葉が適当に繕った『嘘』なんて、

絶対に悔いが残るからよ。



もう会えないかもしれないと思うからこそ、

ごまかすような別れ方だけはしたくないの。



ちゃんとお父さんとお母さんと向き合って、

ちゃんと挨拶をして別れたいって思っているの。



だから悩んでいるのよ。



どう話すべきなのかを…ね。



…嘘はつきたくないわ。



出来れば笑顔で別れたいの。



それが正直な気持ちなのよ。



…でもね?



そんなに都合よく説明できるなんて思えないわ。



何もかも思い通りになんて絶対に無理に決まってる。



自分で言うのもどうかと思うけど。


そんなに器用な人間じゃないのよ。



だから出来る範囲で話し合うしかないの。



「結局は、まあ…そういうことなのよね。」



ぐだぐだ考えてもどうにもならないし。


出来ることをするしかないのよ。



…ふう。



こうなったら行くしかないわね。



覚悟を決めて扉に手を伸ばしてみる。



鞄から取り出したまま悩み続けて、

ずっと握り締めていた鍵を使って玄関の鍵を開けることにしたのよ。



『カチン…』っていう小さな音が響いた瞬間に緊張感が高まったわ。



…でも、もうね。



後戻りは出来ないし、しない。


ちゃんと会って話をするって決めたのよ。



ゆっくりと深呼吸を繰り返したあとで、

扉に手をかけて開けてみる。



『キィィィ…』って、

扉のきしむ音がとても懐かしく感じるわね。



…そう言えば。



この扉って子供の頃からうるさかったかも?



何度も何度も油を指してもね。


しばらくするとまたすぐに調子が悪くなるのよ。



まあ、築40年以上の建物だから何かしら問題は出てくるものよね。


お父さんが生まれた年に建てた家らしいから、

古いのは仕方がないのよ。



…なんて。



そんなことも考えながら家の中へと歩みを進めてみる。



そしてもう一度『キィィィ…』と鳴り響かせながら扉を閉めてみると。



…扉の音が聞こえたのかな?



家の奥からお母さんの声が聞こえてきたわ。



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