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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
719/1230

最初で最後の強がり

《サイド:深海優奈》



「…ごちそうさま。」



夕食が終わりました。


時計に視線を向けてみます。



時刻は午後9時45分ですね。



お母さんの手料理を味わって、

久し振りに両親と過ごした時間はすごく楽しかったです。



…でも。



それもそろそろ終わりに近づいています。



このまま朝まで…というわけにはいきません。



私にはまだ会わなければいけない人がいるからです。



…だから今は。



この幸せな時間にさよならを告げる覚悟を決めました。



「そろそろ学園に戻らないと…。」



時間を気にして立ち上がると、

お父さんとお母さんが引き止めてくれました。



「今晩は泊まっていったらどうだ?」


「そうよ。こんな時間から出歩くなんて…。」



危険だから止めなさいと心配してくれる両親ですが。


明日は朝6時に集合なので、

どちらにしても夜の間に家を出ることになると思います。



「ごめんね。まだ、しなくちゃいけないことがあるから…。」



両親に感謝しながらも、

学園に戻るために荷物をまとめることにしました。



そうして小さな鞄を背負って玄関に向かう私を、

両親は家の外まで見送りにきてくれたんです。



「気をつけて行くのよ、優奈。」


「何かあったらいつでも帰ってきなさい。」


「…うん。行ってきます。お父さん、お母さん。しばらく帰って来れないと思うけど、これからも元気にしていてね。」



溢れそうになる涙を必死に涙を堪えました。



最期は笑顔で別れたいと思うからです。



そう心に決めていたから、

精一杯の笑顔を浮かべて両親と向き合いました。



「ありがとう。お父さん、お母さん。ずっとずっと感謝してるから。だから、ずっとずっと元気でいてね。」



これからのことを何も言わなかったのに。


両親は何も追求しませんでした。



私の意志を尊重して、

静かに見送ってくれたんです。



「いつでも帰ってきなさい。ここは優奈の家なのだから。」


「今度、時間がある時にお料理を教えてあげるわね。」



両親の優しい言葉。



その言葉に幸せを感じながら、

私は『別れ』を選びました。



「ありがとう、お父さんとお母さん。」



今日は会えて嬉しかったです。



「大好きなお父さんとお母さんに会えて本当に良かった…。」



…だから。



だから私はとっても幸せです。



お父さんとお母さんがいてくれるこのお家に、

これからもまた帰ってきたいから。



…だから今は。



「行ってきます♪」



両親に背中を向けた私は、

振り返ることなく歩き始めました。



こぼれ落ちる涙を両親にみせないために。


そのまま歩き続けることにしたんです。



これは私の最初で最後の強がりです。



それでも。


これが私の選んだ道です。



ゆっくりと確実に家から離れる私の後ろ姿を、

両親はいつまでもいつまでも見送ってくれているような。



そんな気がしました。



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