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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
712/1254

譲れない想い

《サイド:北条真哉》



…ったく。



大会が終わったと思ったら今度は戦争か。



「…どうしてこうなったんだろうな。」



学園内の人気の少ない道を歩きながら呟いてみたが、たいして意味はねえな。



何となく口にしてみただけだ。



誰かに聞いてもらいたいわけでも相談したいわけでもねえ。



そんなつもりはなかったんだが。


ついついぼやいちまったってところだな。



…まあ、そこはどうでも良い。



問題は今後のことだ。



あまり大きな声では言えねえが、

くだらねえとは思ってる。



それが正直な意見だ。


自分の気持ちを偽っても意味がないからな。



だからぐだぐだと言い訳をするつもりはねえ。



…ただ、興味がないだけだ。



強くなるために戦うのは好きだけどな。


だからと言って殺し合いがしたいと思ってるわけじゃねえ。



そんなくだらないことの為に、

努力してきたわけじゃないからだ。



だから戦争が始まると聞いても、

ただただ面倒だとしか思えなかった。



…出来ることなら参加したくねえな。



別に死ぬのが怖いとかそんなつまらない理由じゃねえ。


そもそも武力ってのは殺し合いが前提だからな。


命をかけるってのはむしろ望むところだ。


だから戦い自体に不満はねえ。



…とは言ってもな。



率先して殺し合いに参加したいとも思わねえ。


殺し合いがしたくて強さを求めた訳じゃないからだ。



ただ強くなりたかった。



何のためにってこともないが。


強いて言うなら、まあアレだ。



…俺が俺であるためにってところか。



逃げるとか。


諦めるとか。


そういうのは趣味じゃねえんだ。



だからどんな状況でも。


どんな相手にも挑み続ける。



そういう自分でいたかった。



だから戦争にも殺し合いにも興味はねえ。



このまま学園に残っていようかとも思うが、

今の流れだと行くことになるんだろうな。



…まあ、それが嫌だとは言わねえさ。



ただ、な。



参加したところで頑張ろうとは思わないだろうな。



戦争がどうこうなんて理由はどうでも良い。


単純に殺し合う理由がないからだ。



何か一つでも戦争に向かう目的があれば良いんだが…個人的には何もねえからな。



総魔が生きようが死のうがどうでも良い。


命をかけて共和国を守ろうなんていう気持ちもない。


それが正直な気持ちだ。



「…つまんねえことになったな。」



そんなふうに思いながら学園内をさまよい続ける。



べつにどこかに行きたいわけじゃねえ。


もちろん会いたい人物がいるわけでもねえ。



何の目的も持たずに。


ただただ学園内をさまよってるだけだ。



「何か面白いことはねえのか?」



さっさと寮の自室に戻っても良かったんだが、

今はまだしばらく外にいたい気分だった。



夜風に辺りながら、

色々と考えたいことがあったからだ。



『これから』のこと。


そして『これまで』のこと。



それは総魔のことでもあるし。


龍馬達のことでもある。



ついでに戦争に参加する理由でもあるな。



とは言え。


戦争そのものに意識は向かなかった。



…興味がねえからな。



もちろん無抵抗に侵略を許すつもりはないが、

わざわざこっちから向かっていく理由がねえ。



ジェノスまで攻めてきたら抵抗はするが、

アストリアまで突撃する理由が思い浮かばねえってのが本音だな。



個人的な意見を言うとすれば魔術師狩りを経験している訳でもねえし、

アストリアに恨みがあるわけでもねえからな。



一人の魔術師として戦いに参加する事に不満はないが、

そこに命をかけるほどの価値が見いだせなかった。



『殺られる前に殺る』



それはそれで良いと思う。



それだけの理由で戦場に立っても間違いじゃねえだろう。



…だけどな。



俺にはもっと他に考えるべきことがあった。



親友である龍馬のことでもあるし。


喧嘩友達の翔子のことでもある。


そして度々世話になった沙織のこともある。



『仲間の為』になら、

命をかけて戦いたいと思える。



信頼する仲間を守るためなら全力で戦うことが出来るからだ。



例えこの手を血で染めることになったとしても構わない。



俺にとっての戦う理由であり、

『大義名分』でもある価値観だな。



『仲間を守る』の為なら人も『殺せる』と考えている。



実際にどうなるかはやってみなければ分からねえがそれでも思う。



両手を血で染めながら突き進まなくてはならない戦場。



そこは中途半端な覚悟では生き残れないってな。



生きてこの町へ帰ってくる為に戦い。


全力で人を殺し続ける。


その罪悪感と向き合う理由を考えたかっただけだ。



「まあ、結局は…そこに行き着くわけだけどな。」



俺にとってただ一つだけ『譲れない想い』がある。



「見捨てるわけにはいかねえだろ?」



どうしても守りたいやつがいる。



たった一つの命をかけてでも。


たとえ血を浴びて殺人鬼と化してでも。


守りたいと思えるやつがいる。



決して自分には振り返ってくれないとわかっていても諦めることの出来ない想いがある。



例え叶わない願いだとしても捨てきれない想いがある。



諦めるってのは趣味じゃねえ。


いつか願いは叶うと信じ続けている。



…だから俺は絶対に心を折らねえ。



例えどれだけ遠くても。


この手で掴みたい想いがあるから。


戦争に向かう覚悟を決められる。



「理由なんて…それだけで十分か。」



この世界で、ただ一人。



命をかけてでも守りたいと思える存在。



…この手で『あいつ』を守れるのなら。



血で染まる覚悟くらい決めてやるさ。



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