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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
703/1242

仮説の仮説

《サイド:美袋翔子》



う~ん。


ホントに謎だらけよね~?



「みゃ~♪」



優奈ちゃんに懐く子猫の行動はとても精霊には見えないわ。



そもそも、どうやって声を発してるのかが疑問よね?



声帯とかないわよね?


そもそも呼吸すらしてないわよね?


もっと言うなら肺とか喉とかもないわよね?



「…って言うか、なんで猫なの?」



もっと他に選択肢はあるはずよね?



狼とかドラゴンだっているわけだし。


猫である必要がないのよ。



だから気になって問い掛けてみたんだけど。



「以前…猫を飼ってたんです。」



優奈ちゃんは体調を崩しながらも精一杯の笑顔で答えてくれたわ。



「見た目はこの子そっくりで、名前も『ミルク』って呼んでたんです。でも…。」



そこまで言ってから優奈ちゃんは僅かに表情を曇らせてた。



これはもう、あれよね?


もういないっていう意味よね?



「私が子供の頃からずっと一緒だったんですけど。でも今年に入ってからすぐに寿命で…」



あ~、やっぱりそうなるのね。


亡くなったってことよ。



はっきりとは言わなかったけど。


それ以外に答えはないわよね?



その先は聞かなくてもわかるから、

優奈ちゃんの言葉を察してそれ以上の追求は避けたわ。



ただ、今ここにいる精霊を見つめながら、

もう一度優奈ちゃんに問い掛けてみる。



「つまり、その子は前に飼ってた猫を思い出しながら召喚したって感じ?」


「あ、はい。一応そうです。亡くなる前はもっと大きかったんですけど…。子猫の頃の姿とはそっくりです。雰囲気というか行動もそうですけど…懐かしいくらい全てがそっくりなんです。」



ふ~ん。


そういうこともあるのね~。



…って言うか。



自分で考えて精霊として作り上げたんだから姿が似てるのは当然よね。



どうして鳴くことができるのかは不明だけど。


優奈ちゃんの話を聞いていた龍馬も会話に参加してきたわ。



「もしかすると、その猫を本当に精霊として召喚したとか?」



あ~。


ありえるかも?



どうやって?っていう部分は分からないけど龍馬の意見が正解っぽい気がするわ。



でも、肝心の優奈ちゃんは首を傾げてる。



そうであれば良いとは思っても、

そうなのかどうかは分からないっていう感じ?



じっと精霊と向き合う優奈ちゃんは、

以前と変わらない面影を持つ子猫を見つめながら話しかけていたわ。



「そうなの?」



向き合って問い掛けてみるけれど。


もちろん子猫は話せないのよ。



「みゃ~♪」



鳴き声を上げるだけで、

質問に答えることはなかったわ。



「ん~?」



再び首を傾げる優奈ちゃん。



龍馬の推測が事実かどうかは優奈ちゃんにも分からないようね。



ただ、龍馬の意見に対して理事長が自分の意見を話し出してきたわ。



「ありかなしかで考えるとありえそうな気はするけど…。でも、どうかしらね?絶対とは言い切れないけれど、生命に関する魔術は現状存在しないわ。」



まあ、確かに?



生き返らせるとか、死者を喚び戻すとか。


現在の理論では不可能なのよ。


総魔だって出来ないの。



「少なくともこの国にはそういう魔術は存在しないし、そんな魔術は噂さえ聞いたことがないわ。」



私だって知らないし。


人とか動物とか、そういう部分に関係なく。


死者を生き返らせる魔術は存在しないはずなのよ。



理事長の指摘は龍馬の予想を完全に否定する意見だったわ。



だけど他に考えられる理由はなさそうだし。


思い浮かぶような仮説もないわよね?



だからかどうかは分からないけれど。


理事長は龍馬の考えを否定してから説明を付け加えたわ。



「もしもの話だけど…。もしも御堂君の仮説が正しいとすれば、それは魔術の理論どうこうよりも深海さん個人の能力なのかもしれないわね。」


「私の力…ですか?」


「まあ、仮説に対する仮説だから上手く説明は出来ないけれど。そもそも仮の定義として『吸魔』と呼んでいる貴女の力が本当に『魔術や魔力を吸収するだけの力』とは言いきれないでしょう?」



…え?


…違うの?



う~ん?


でも…まあ、確かに?



何が正解かなんて誰にも決められないし。


そうだと決めつけた時点で成長が止まっちゃうわけだし。



優奈ちゃんの能力がどういうものなのかは正直に言って誰にも分からないのよね〜。



総魔のおかげで明らかになったはずの優奈ちゃんの力だけど。


ここにきて再び疑問が生まれちゃったわ。



「まだ他にも隠れた力があるってこと?」



だとすれば凄いとは思うけど。


理事長は首を傾げていたわ。



「さあ?仮説の仮説だから実際にどうかは知らないわ。ただそういう可能性もあるんじゃないかしら、って言ってるだけよ。本当のところがどうかなんて私にも分からないわ。」



まあ、理事長に限らず、誰にも分からない話よね。



吸収の能力なんて今まで誰も持ってなかったわけだし。



分析できそうな総魔も失踪中だから私達だけだと考えようがないのよ。



…それに。



そもそも隠れた力なんて考えようが…って?



…あれ?



これってもしかして、そういうことなの?



理事長の言葉を聞いたことで、

あることを思い出したのよ。



「あ~っ!!」



慌ててポケットに手を入れてみる。


そして掴み取った小さな水晶玉を

優奈ちゃんに差し出してみたわ。



「これを使えば分かるんじゃない!?」



私の手にあるのは原始の瞳よ。


総魔の荷物から回収していた潜在能力を教えてくれる水晶玉。



私の手の上では光らないけれど。


水晶玉を見た沙織が問い掛けてきたわ。



「翔子が持ってたの?」


「あ〜、うん。今はね。まあ、総魔が置いて行った荷物の中にあったのを私が勝手に預かってるんだけどね〜。」



取り出した原始の瞳を優奈ちゃんに手渡してみる。



「ちょっと持ってみて。」


「あ、はい。」



右手で精霊を抱えながら、

そっと左手で受け取る原始の瞳。



優奈ちゃんの手の上にある原始の瞳は…何の反応も示さなかったわ。



「あれ…?」



首を傾げちゃう。



潜在能力はないの?


隠れた能力があるわけじゃないの?



そういうことじゃないの?



「少し前にも総魔さんから受けとったことがあるんですけど、その時にもこの水晶は光りませんでした。」



ちょっぴり悩んでしまう私に、

優奈ちゃんが以前の出来事を話してくれたわ。



「え?そうなの?」


「あ、はい…すみません。」



光らなかったことに対して謝られちゃった。



別に謝ることじゃないんだけど。


期待ハズレに終わったことでため息を吐いてしまったわ。



「潜在能力はないのね~。だったら何なの?」



頭を抱える結果よね。


謎は更に深まるばかりだったわ。



優奈ちゃんの力に関して有力な意見は出ないまま時間だけが過ぎていったのよ。



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