何も知らない
《サイド:北条真哉》
試合場Bー1についた。
これからここで試合が始まるわけだが、
すでに会場にいた5人の生徒達は俺と共に試合場に向かう総魔の姿を驚きながら眺めていた。
この学園で最強の座を争う俺が会場にいること自体すでに驚きに価する出来事なのかもしれねえが、
それ以上に驚いた理由は無名の生徒が姿を現した事だろう。
当初、俺達の姿を目にしたあいつらは無謀な挑戦者が俺に戦いを挑んだのだと勘違いしていたように思う。
そして同時に勝てるわけがないとも思っただろうな。
だがその考えが間違いだということをすぐに知ることになる。
係員からの通達によって、
あいつらは自分達が無名の生徒の『対戦相手』だと知ったからだ。
まあ、驚き以上に怒りさえ感じていたやつもいたようだな。
はっきりと口に出すことはしなかったが、
あいつらは不満をあらわにした表情で俺達の待つ試合場へと歩みを進めてくる。
その理由は、今更考えるまでもねえな。
今まで有り得なかった試合が組まれたからだ。
『5対1で行われる試合』
そんな無茶な試合に関して、
あいつらは不満を感じてるってとこだな。
それでも俺の手前もあって表立って文句を言ってくるやつはいなかった。
俺が言うのも変な話だが、
あいつらは俺を恐れてるからな。
文句を言ってくるような度胸のある奴はいねえだろう。
学園1位のあいつとの対戦を除いて俺が学園内で敗北した経験は一度もねえ。
つまり。
ここにいるやつらは俺に勝った経験どころか、
まともに勝負を挑んだことさえないやつらってことだ。
そんなやつらが俺に逆らうことなんてできるわけもねえ。
だから堂々と不満を言うこともできねえってことだ。
それでも不満があるのはあいつらの表情を見ればひと目で分かる。
仮にも学園の上位100人に君臨する生徒を
5人同時に相手にしようとしてるんだ。
学園最上位というあいつらの自信を考えれば
不満が出るのも仕方がねえだろう。
…でもな。
それはあいつらが何も知らねえからだ。
総魔の『実力』と前回の会場での『圧勝』をあいつらは何も知らねえ。
そんなやつらに状況を理解しろっていう方が無理だろ?
だから知らないことは仕方がねえ。
そして知らないからこそ単純に考えるのも仕方がねえ。
1対1でも勝てる自信があるのに5対1では勝負にならないと考えるだろう。
その考えは係員や審判員達も同じだ。
この試合は単なる無謀でしかないと思ってるだろうぜ。
だからやるだけ無駄で時間の無駄だと思ってるはずだ。
ただ一人。
俺を除く誰もが総魔の敗北を予想してるはずだからな。




