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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
699/1254

それだけ

《サイド:美袋翔子》



「えっと、その…。テーブルの上に置いてあったんですけど…」



あ~、なるほどね。


優奈ちゃんが回収してくれたのね。



差し出された鞄を受けとってから、

迷わず鞄の中を覗き込んでみる。



……うん。



みごとに何もないわね。



「これって本当に着替えだけじゃない?」



確認できたのは予備の制服と着替え用の服だけだったわ。



本当にね。


他には何もなかったのよ。



…うわぁ~。



ここまで何もないと寂しすぎるわね。



ちょっとくらい私物が入っててもいいと思うんだけど。



総魔の趣味が感じられるような物は何もなかったわ。



ただ…ね。


鞄の中を漁る私の手が何かに触れた気がしたのよ。



…ん~?



小さな塊…かな?



片手で掴めてしまう程度の大きさね。



取り出してみないと何か分からないはずだけど。


それが何なのかは考える前に理解できたわ。



これって、アレよね?



原始の瞳よね?



取り出してみると。


やっぱり見覚えのある水晶玉だったわ。



見慣れた水晶玉を手の上で転がしてみる。



だけど以前とは違って何の反応も示さなかったのよ。



「これってもう潜在能力はないってことよね?」



自分で解釈して納得してみる。



指輪の封印も解除して、

完全に融合を使いこなせるようになったんだから当然の結果よね?



私が持っても水晶が光ることはなかったわ。



「何て言うか…改めて思うわね。ついこの間まで自分の特性さえ分からなかったのよ?そんな私が今はこうしてここにいることが…すっごく不思議な気がするわ。」


「あ…はい。そうですね。」



私の呟きに、優奈ちゃんが頷いてくれてる。



「私も同じです。総魔さんと出会うまでは自分の力が何か分からずに、ただただ悩んでいただけでしたので…。」



それってホンの1週間前の出来事よね。



それなのに。


私達はとても遠い昔の出来事のように感じてしまっているのよ。



実力はあっても自分の特性を理解していなかった私と優奈ちゃん。



私達は総魔と出会ったことで、

自分の能力を知るきっかけを得たの。



だから私達にとって、

総魔の存在は他の誰にも変えられないかけがえのない存在なのよ。



「とりあえずこの荷物は預かっておくとして、総魔を見つけたら全力で投げ返すわよ!」



宣言する私を見ていた優奈ちゃんは苦笑いを浮かべてる。



どうあっても暴力的な解決は遠慮します、って感じね。



まあ、私としても総魔を殴りたいわけじゃないんだけどね~。



「とりあえず優奈ちゃんも荷物を回収してきたら?」


「あ、はい。取ってきますね。」



優奈ちゃんも自分の個室へと向かっていったわ。


残された私の手には総魔の鞄と小さな水晶玉があるだけ。



たったそれだけなのよ。



総魔の残した思い出は、

たった『それだけ』だったの。



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