大会順位
《サイド:米倉美由紀》
…ふう。
色々とあったけれど。
ひとまず当初の予定は達成しつつあるわね。
無事にジェノスの優勝で表彰式までこぎ着けたからよ。
「それでは!!ただ今より、表彰式を行いたいと思います!!!」
ようやくここまでこれたわ。
突然、御堂君が撤収を始めた時にはどうなることかと思ったけれど。
ひとまず説得が成功したことで、
予定通り表彰式を進められそうな状況にはなったわね。
あとは大会の終了を見届けるまでが私の役目になるわ。
…まあ、個人的にはね。
これから戦争が始まるっていう状況で浮かれてる場合じゃないとは思うんだけど。
だけどね?
これも一種の外交政策なのよ。
下手な小細工を考えるよりも、
共和国には戦争を戦い抜けるだけの戦力があるということを一般的に示したほうが士気が上がるの。
それにね。
他国から侵入してくる密偵に対してもちょっとした牽制になると思うわ。
共和国の武力を示すこと。
そのために魔術大会は存在していて、
実力者の栄光を称えるための表彰式が重要視されているの。
それなのに。
肝心の優勝校が表彰式を辞退するなんて笑い話にもならないわ。
だから御堂君達がどう思うかに関係なく、
大会は最後までやりきる必要があるのよ。
それが共和国を守ることに繋がるの。
「それでは!!今大会を制した上位3校に登場してもらいましょう!!」
係員の宣言をきっかけとして一気に盛り上がる会場。
数え切れない程多くの人々の歓声と称賛の声が飛び交っているわね。
…この状況こそが、最大の成果なのよ。
魔術師の力が頼りになるということを多くの国民に知らしめることで戦争という絶望的な戦いに一致団結して立ち向かうことができるようになるの。
…とは言っても、今はまだ宣言なんて出来ないわ。
御堂君達を含めた今この場にいる人達にね。
これから戦争が始まるなんて説明をする予定はないの。
さすがにこの場での情報公開は混乱しか生み出さないと思うからよ。
だから徐々に情報を拡散させるつもりでいるんだけど。
数日中には全ての情報が公開されることになるでしょうね。
…こういうのってね。
いつまでも隠し通せるような話じゃないから必ずどこかで情報が広がり始めるのよ。
すでに軍は動いているし、
マールグリナへの増援部隊も手配されてる。
この状況で何もないなんて、
普通は誰も思わないわよね?
だから情報は流れてしまうのよ。
…とは言え。
今はまだ私達も迎撃部隊の準備中だから公表できる段階ではないわ。
出来ることならすぐにでも公表すべきなんだけど。
中途半端な状況での情報公開は余計な混乱を招いてしまうから今はまだ言えないの。
だけど、公表すると決めた時にね。
一人でも多くの人が前向きな気持ちで戦争と向き合えるように必要な情報を操作する必要があるのよ。
そのために『英雄』の存在は必要なの。
最後の試合で御堂君が敗北したのは、
ちょっとした問題があるけれど。
だけど今まで誰も倒せなかった御堂君を制するほどの人物が戦場の最前線に向かったという噂が流れれば、
それだけで十分すぎるほど大きな影響を国民に与えることができるはずなのよ。
魔術師が戦力として重要な価値を持ち。
特筆すべき英雄が戦場の最前線に立つ。
それが国民の希望となって戦争を乗り切る力となるの。
そのためにもね。
何としてでも表彰式を無事に終える必要があるのよ。
「『ヴァルセム精霊学園』および『グランバニア魔導学園』。そして優勝校である『ジェノス魔導学園』の代表選手は、それぞれ表彰台へとお願いします!!!」
係員の呼び掛けに応じて、
各学園の生徒が動き出したわね。
『グランバニア魔導学園』から澤木君。
『ヴァルセム精霊学園』から大塚君。
二人が表彰台へと歩み出ているわ。
そして最後に。
私の側で待機していた御堂君も表彰台に上がってくれたのよ。
優勝は『ジェノス魔導学園』
準優勝は『グランバニア魔導学園』
3位は『ヴァルセム精霊学園』
それが今回の大会の結果よ。
決勝戦とほぼ同時に別の試合場で行われていた3位決定戦はランベリア多国籍学園を下したヴァルセム精霊学園が勝利していたわ。
だから表彰台には呼ばれてないけれど。
4位は『ランベリア多国籍学園』になるのよ。
今大会でもシェリルさんは全勝していたけれど。
他の生徒が敗北を重ねた結果として表彰台を逃してしまったようね。
…それでも十分な好成績だと思うわ。
32校中の4位。
その結果恥じる必要はないわよね。
それよりも辛い思いをしているのはマールグリナでしょうね。
今大会でも敗北を重ね続けて最下位になったのは『マールグリナ医術学園』だったからよ。
毎回毎回、最下位に名前を記されるマールグリナは常に不名誉な扱いを受けているけれど。
攻撃魔術の訓練を行う生徒なんてほとんどいないんだから、
戦闘能力を重視する大会では仕方がない結果になるわ。
救うことを目的としているマールグリナに戦う力なんて必要ないからよ。
学園主席である栗原薫さんを筆頭に、
魔術医師として数多くの人々に救いの手を差し延べることに情熱を注ぎ込む彼女達にとって、
戦いに負けるのは当然のことで、
誰も傷付けないことこそが最高の選択肢なのよ。
…まあ、それでもね。
一応、無傷での制圧を目的とした魔術もあるんだけど。
捕獲系の魔術だけで勝ち上がれるほど、
この大会は甘くないわ。
努力や戦術しだいでは勝ち点を上げることは出来るかもしれないけれど。
そもそもそんなつもりすらないでしょうね。
戦闘技術の向上に時間を費やすくらいなら、
一つでも多くの医療技術を身につけたいと願う子達だから。
攻撃力を持たないマールグリナが大会で最下位となるのは当然の結果なの。
だから大会の結果を悔やむ生徒なんて、
マールグリナには一人もいないはずよ。
そしてそれが事実であるかのように。
堂々と誇らしげに会場の清掃活動を行うマールグリナの精神に心打たれて、
毎回、大会終了後に協力を申し出る人々が後を絶たないそうよ。
それくらい彼女達の周りには多くの人々が集まっているらしいわ。
…と言っても。
私はそれなりに忙しい立場だから大会終了後の清掃作業なんてはっきりと見たことがないし。
ジェノスに帰らなければいけない御堂君達も手伝いに参加してる暇はないから、
実際にどうなってるかまでは知らないわ。
それが良いかどうかは難しいところだけど。
肝心のマールグリナの生徒は特に気にしてないようね。
ある意味、清掃作業も業務の一部って思ってるそうよ。
そんな話をね。
琴平学園長が苦笑気味に話していたことを覚えているの。




