中立
《サイド:北条真哉》
「私も協力するわ。だからみんなで頑張りましょう。」
…頑張る、か。
どうやら沙織は翔子と共に行動するつもりのようだな。
沙織の励ましによって、
翔子は元気を取り戻したようだ。
「絶対に総魔を見つけだすわよ〜!!」
「はいっ!」
「ええ。」
力強く宣言する翔子に応じるように
優奈と沙織が笑顔で頷きあっている。
…それはまあ、どうでも良い。
この3人の関係は、
以前からこんな感じだったからな。
今回の件で、より一層絆が深まったっていう感じがするだけだ。
それ自体に問題はねえ。
むしろ微笑ましく思えるな。
…それは良いんだが。
問題はその理由だな。
…総魔を捜す、か。
盛り上がる3人から少し離れた場所にいる俺は黙って成り行きを見守っていた。
もちろん色々と言いたいことはあるんだが。
現時点では俺が口を出すべきじゃないと思っているからだ。
…俺は立場が違うからな。
天城総魔に関して、
そこまでの想いも関わりもないからだ。
だから余計な口出しするつもりはなかった。
…まあ、個人的な意見を言ってしまうなら興味がねえってところか。
さすがにそれを言ってしまうと全員から文句を言われそうだから口には出さねえが。
他の誰よりも複雑な心境だったのは間違いない。
…俺は他とは違うからな。
龍馬のようにあいつを尊敬してるわけでもねえし。
翔子や優奈のように思い入れがあるわけでもねえ。
もちろん沙織のように翔子の為なんて気持ちもねえ。
そこまで天城総魔と関わりがあるわけじゃないからだ。
一時的に敵対してた思い出しかないからな。
仲が良かったかどうかって言うとそうでもないってのが事実だと思ってる。
まあ、面白いやつだとは思うがその程度だ。
嫌う理由はないが、
好きになるほどの理由もないって感じだな。
一応これまでの行動を考慮して仲間とは認めているが、
それは他の特風の生徒と同程度だ。
俺にとって天城総魔の行動は悩む程ではないってことになる。
一言で言うなら、まあアレだ。
『中立』ってやつだな。
俺の目標は『龍馬を越えること』だった。
そして気の合う仲間の為に力を貸すことだ。
はっきり言うなら大会自体も興味はねえ。
結果がどうこうよりも戦いそのものを楽しんでる部分があるからな。
楽しければそれでいい…っていう考えだ。
だから龍馬や翔子達とは違って、
俺は一歩引いた目線で事態を観察していた。
「…何だか面倒なことになってきたな。」
呟いてみたが俺の声が聞こえたやつはいなかっただろうな。
そもそも誰かに聞いてもらいたいとも思わなかったからどうでも良い。
…どうでも良いんだ。
一人だけ違う目線で見守る状況だが、
それでも思うことはある。
…仲間の為に、って部分だな。
天城総魔に思い入れはなくても、
龍馬や翔子達が向かう先には俺もいたいと思っている。
あいつの為とは思えねえが、
仲間の為なら行動出来る。
それが正直な気持ちだな。
これから何が起こり、
どういう状況になるのかは知らねえ。
…それでもな?
事情なんてどうでも良いと思ってる。
あいつがどこへ行ったか?ではなく、
仲間がどこへ向かうのか?
それだけが分かればそれで良い。
「これからどうなるかなんて知らねえが、龍馬達と一緒なら…まあ、悪くはねえか。」
翔子。
沙織。
優奈。
そして龍馬。
それぞれの想いを胸に秘めながら試合場を眺める。
…ようやく。
表彰式が始まるようだな。




