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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
677/1242

失踪

《サイド:深海優奈》



「総魔さん!御堂先輩!」



私と翔子先輩が試合場に駆け付けた時にはすでに試合が終わっていました。



観戦席から急いで駆けつけたのですが、

移動の間に終わっていたようです。



…ですが。



圧倒的としか言いようのない結果だったようですね。



私達が駆けつけた時にはもう、

御堂先輩が敗北していたからです。



「…総、魔…?」



小さな声で呼び掛ける翔子先輩ですが、

総魔さんは振り返ってくれません。



「総魔さん…。」



私の声にも反応してくれないんです。



総魔さんは私達を気にせずに、

倒れた御堂先輩に歩み寄ってそっと手を伸ばしました。



発動したのは『回復の光』です。



見覚えのある光によって治療を終えると同時に御堂先輩が目覚ました。



「…っ!?」



目を覚ました直後の小さなうめき声。


治療が終わって目覚めたはずの御堂先輩ですが、

何故か起き上がれない様子でした。



「体が…動かない…っ?」


「ああ、しばらくはそのままだ。」


「な、何をしたんだ!?」


「………。」



問い掛けられた質問には答えないようですね。


御堂先輩と向き合う総魔さんは、

淡々と今の想いを告げました。



「せめて最後の別れくらいはしておかなければ悔いが残ると思ったからな。」



…最後。



やっぱり総魔さんはこのまま私達と別れるつもりのようです。



引き止めるべきでしょうか?



…いえ。



引き止めたとして、聞き入れていただけるでしょうか?



…無理、ですよね。



だからお別れなのだと思います。



「御堂、北条、翔子、沙織、そして優奈…。」



…はい。



「2週間程度の短い期間だったが…共に過ごせたことを嬉しく思っている。」


「ま…まだだっ!まだこれからも…っ!!」



動けないまま叫ぶ御堂先輩に…。


総魔さんは別れを告げました。



「ここで別れだ。俺は俺の道を行くが、お前達はここで立ち止まれ。ここから先は地獄でしかない。」



これから始まる戦争を地獄と表現した総魔さんは、

挨拶を終えたことで御堂先輩に背中を向けてしまいました。



「もう会うことはないだろう。御堂はこの国で幸せに暮らせ。それが俺の望みだ。」



たった一人で立ち去ろうとしています。



誰にも何も言わずに。


戦場に向かおうとしているんです。



そんな総魔さんを見つめる御堂先輩が。



「総魔ぁぁ!!!」



初めて総魔さんの名前を叫びました。



今まで一度も呼んだことがなかったと思います。


少なくとも私は聞いたことがありません。


今までずっと『きみ』とか『彼』と言っていたからです。



…初めてです。



初めて御堂先輩が総魔さんの名前を呼ぶのを聞きました。



「僕は必ず追いかける!!決して一人にはさせない!!」



心からの宣言だったと思います。



ですが、それでも。



「………。」



それでも総魔さんは何も答えずに試合場を下りてしまいました。



「総魔!」


「総魔さん!」



翔子先輩と私が駆け寄ってみても、

総魔さんは足を止めようとはしません。



「待ってよ、総魔!!」


「…放せ。」



引き止めようとする翔子先輩が必死に掴んだその手を、

総魔さんは振り払ってしまいました。



そして、冷たい目で翔子先輩を睨みつけたんです。



…っ!?



「…ぁ…っ…?」



初めて見る表情によって、

私達は言葉を失ってしまいました。



ただ睨まれただけで、

心の底から恐怖を感じてしまったんです。



「お前達もここに残れ。それがお前達の為だ。」



一方的に告げてから歩き出した総魔さんは私達から離れて行ってしまいます。


その背中を見つめる私達は、

何故か体を動かすことが出来ませんでした。



どうしてかは分かりません。


ですがおそらく。



御堂先輩が動けないのと同じように、

私達も何らかの影響を受けているんだと思います。



…私にはどんな魔術も効かないはずなのに。



何故か一歩も動けなかったんです。



…だから、その代わりに。



精一杯の声で総魔さんに叫びました。



「私も…私も諦めません!!必ず!必ず捜し出します!!だから…だから帰ってきて下さい!!」


「総魔〜!!私も諦めてなんかあげないわよ!!絶対に追いかけるから!このままさよならなんて、絶対に!絶対に許さないんだからね!!!」


「………。」



涙を流しながら訴える私達の言葉にも答えないまま。



総魔さんは…。


会場から姿を消してしまいました。



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