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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
661/1242

決勝戦、第1試合

「それではただ今より!決勝戦を行いたいと思います!!」



係員の合図と共に会場中で大歓声が沸き上がる。



「ジェノス魔導学園から常盤沙織選手!グランバニア魔導学園から筑紫美優つくしみゆう選手!試合場へお願いします!!」


「それじゃあ、行ってくるわね。」



係員の呼び掛けを受けたことで沙織が歩きだした。


真剣な表情で試合場に向かう沙織。


対戦相手の筑紫さんとほぼ同時に試合場へと上がって行く。



「久し振りね、常盤さん。」


「ええ、久し振り。」



話し掛ける筑紫さんに対して、

沙織は挨拶を返しただけだった。


どうやら試合に向けて全力で集中している様子だね。



真剣な表情を浮かべたままで、

笑顔を見せない沙織は口数が少なかった。



「あまり会話をしたくないって感じかしら?」


「あ、いえ…そうじゃないの。」



もちろん会話を拒絶してるわけじゃないだろうね。


純粋に集中しているのだと思う



「…気に障ったのならごめんなさい。」



控えめに謝ってから、沙織は位置についた。



「でも今回だけは負けるわけにはいかないの。」


「ふ~ん、いつになく真剣ね。」



話し合うことを諦めた筑紫さんも大人しく開始位置に立ったようだ。



二人の間には緊迫した雰囲気が漂っている。



普段なら決勝戦の緊張と思うところだけど。


今回は事情が異なるからね。



今の沙織には僕でさえ近寄りがたい雰囲気があるんだ。



…大丈夫。



沙織なら必ず勝てる。



静かに見守る僕の視線の先で、

審判員が試合場の中央へと進んでいく。



高々と掲げられる右手。



その手が振り下ろされた瞬間に。


沙織の戦いが始まるんだ。



「それでは…試合、始めっ!!」



試合開始が宣言された。


ほぼ同時にルーンを発動させる沙織と筑紫さん。



二人の手にはそれぞれ異なる形状の杖が現れている。



沙織の杖は『マテリアル』で、

筑紫さんの杖は『フェアリーテイル』だ。



沙織は特徴的な大きな星を、

筑紫さんは幾つもの小さな流れ星を、

それぞれの杖の上部に掲げている。



「今回は勝ってみせるわ!」



意気込む様子の筑紫さん。


二人の対戦成績は4勝3敗で僅かに沙織が優勢だ。


それでも沙織は油断することなく、

静かに杖を掲げて魔術を展開していく。



「手加減はしません。最初から全力で行きます!」



沙織の膨大な魔力がルーンに流れ込む。



初手から最大威力を叩き込むつもりらしい。



先端にある五芒星が急速に輝きを増していった。



「マスター・オブ・エレメント!!」



白、黒、赤、青、黄。


五色の光が筑紫さんへと降り注ぐ。



「…初っ端から攻めて来るのね。」



対する筑紫さんも魔術を展開している。



「マイティーガード!!」



沙織の光に抵抗するかのように、

筑紫さんの魔術が薄い虹色の膜を張った。



…これはダメかな?



筑紫さんの結界はシールドと違って全ての攻撃を防げるわけじゃない。



だけど。


この防御結界は対属性攻撃に特化しているんだ。



沙織の攻撃魔術と筑紫さんの防御結界。


衝突する二つの魔術は同時に消滅してしまった。



…やっぱり突き抜けられなかったか。



沙織の魔術は純粋な属性攻撃だ。


マイティーガードを破れない。



「今度はこっちから行くわよ!サンシャイン!!!」



筑紫さんの放つ光が沙織に襲い掛かった。



「リフレクション!!」



沙織は魔力による防壁を作り出している。



防壁を突き抜けようとする光は即座に弾かれた。


突破出来ずに反射されたんだ。



「…ふんっ。」



筑紫さんは打ち返された光を杖の一振りで消し去った。



攻撃も、防御も、どちらも全くの互角だ。



一瞬の攻防を見た筑紫さんはため息を吐いている。



「お互いに『とっておき』が通じないわね。」



引き分けの可能性を考えている様子の筑紫さんだけど。


沙織はまだ諦めていないように見える。



「…いいえ。この魔術はもう…私の『とっておき』ではないわ。」



力強く宣言してから、

僕も知らない新たな魔術を展開し始めたんだ。



「…『とっておき』という意味では、こちらの魔術がそうです。」



膨大な魔力の奔流。


沙織のマテリアルが微かに震えだした。



…これは、何だ?



マスター・オブ・エレメントとは異なる魔術。



…いや。



それ以上の力を感じる何かが発動しようとしているんだ。



「あの時の彼の助言によって生まれたこの力は…『魔術師』と言う名の、偽りの限界を越えるための力です!!」



沙織が魔導師として成長するきっかけとなった深海さんの治療。


そこから何かを学んだ様子の沙織は、

魔術師としての限界を超えようとしていた。



「これが…これこそが『真の魔法』です!!」



…魔法!?



僕も知らない間に。


沙織は『魔法』を完成させていたらしい。



「アストラルフロウ!!!」



突如として帯電するマテリアル。


先端に輝く五芒星が虹色の煌めき。


沙織の全魔力を込めた最強の一撃が発動する。



「全属性攻撃。これが私の本当の力です!」



杖から放たれる幾筋もの光。


だけどその光は一色ではなくて、

あらゆる色彩を持っていた。



沙織の宣言通りに。


炎…氷…風…雷…光…闇…重力。



ありとあらゆる属性の魔術が放たれて、

色とりどりの光が筑紫さんの体を飲み込もうとしているんだ。



「マイティーガード!!!」



防御膜を張って沙織の魔術を防ごうとする筑紫さんだけど。


その結界はあっさりと突き破られてしまう。



「な…っ?嘘でしょっ!?」



属性耐性に特化した防御結界が破られたんだ。



…これが『魔術と魔法』の真の違いなのか?



圧倒的なまでの格差。


その差は歴然だ。



…これはもう、防げない。



ガラスが砕け散るような音と共に消失する結界。



驚愕に染まる筑紫さんの表情。


動きを止めた筑紫さんに虹色の光が降り注ぐ。



「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



全属性を持ち合わせる光に飲み込まれた。



防御はもう間に合わない。


そして耐えきれるような攻撃でもない。



…もしもこれが初見だったら?



僕でさえ何もできなかったと思うほどだ。



圧倒的な速度と殲滅力。



一撃必殺のアルテマと対を成す、

広範囲殲滅魔法アストラルフロウ。



…これはさすがに僕にも無理かな。



真似ができる気がしない。



これは膨大な魔力を持つ沙織だからこそ放てる究極の魔法だ。



…遠距離からの殲滅魔法。



これが戦場だったら近づくことさえ出来ないだろうね。



だからこそ思う。



筑紫さんはもう戦えない。



沙織の一撃によって試合場の防御結界すら突き抜けて、

場外まで吹き飛ばされてしまったからだ。



あれだけの魔法が直撃したんだ。


即死していてもおかしくはない。



「………。」



試合場に漂う沈黙。



審判員が慌てて筑紫さんの様子を確認している。



「………。」



筑紫さんは起き上がらない。



力を出し切ることも。


一撃を入れることさえも出来ないまま終わってしまったようだ。



そのまま審判員の確認が進む。



…終わりかな?



筑紫さんは動かない。



呼吸はしている様子だから即死は回避できたようだね。



だけど、起き上がる様子はなかった。



すでに意識を失っているのかもしれない。



そう思った直後に。



「試合終了!!!勝者、ジェノス魔導学園!!!」



沙織の勝利が宣言されたんだ。



無傷で勝利した沙織はほっと安堵の息を吐いている。



そしてそのあとで。



特別観戦席に向けてささやいたんだ。



「これが…これが『魔術を使いこなせる』ということ。そうでしょ?天城君。」



返って来ない返事。


彼が沙織の試合を見ていたかどうかさえ分からない。



…それでも。



それでも沙織は言葉を続けていた。



「私は私の特性で貴方を越えるわ。その方法を貴方が教えてくれたから…。だから私もね。まだまだ強くなれるのよ。」



火力不足という欠点さえも乗り越えて。


沙織も彼の背中に手を伸ばそうとしていたんだ。



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