護身用
「あらあら?意外と似合ってるじゃない。」
美由紀に続いて、
琴平話し掛けてきた。
「着心地はどうですか?」
「問題ない。」
服のサイズもそうだが、
特に違和感もない。
そして軽くて動きやすいからな。
「学園の制服よりも使い勝手は良さそうだ。」
「そうですか。それは良かったです。」
微笑みながら何度もうなずく琴平と同様に、
隣に座る栗原も満足そうな表情だった。
「うんうん。不満がないなら十分ね。個人的には正確な服の大きさが分からないから結構苦労したのよ。」
あえて主張するかのように傷だらけの両手を見せてきた。
「一晩で作ったにしては上出来でしょ?」
どうやらこの服は栗原が自ら製作したらしい。
「マールグリナは治癒や防御に関して特化しているから、こういう物を作るのは得意分野なのよ。」
なるほど。
マールグリナにそんな技術があるのは知らなかったが。
そうなると裁縫から魔術の組み込みまで、
全て一人でやり遂げたのだろうか?
だとしたら、十分な才能だと思う。
治療に関して最先端技術を誇るマールグリナ医療学園が『防御』に関しても優秀な実力を持っていることが窺い知れる一品だったからだ。
「感謝する。」
「うん。大事に使ってね!」
「ああ、努力はしよう。」
「うん!」
栗原は笑満そうに頷いてから、
回復魔術で自分の両手を治療していた。
「まあ、この主張の為だけに、あえて治療せずにそのままにしておいたんだけどね。」
ああ、なるほどな。
治療に特化しているはずのマールグリナの生徒が何故指先を治療せずに傷だらけのまま放置していたのかと思えば、
自分の努力を強調するためにわざと治療をしていなかったらしい。
「俺に恩を着せるつもりか?」
「あはははっ。違うわよ。そうじゃなくて、あくまでも大事にしてほしいな~っていう願いを込めてみただけ。せっかく頑張って作ったんだから、少しでも長持ちして欲しいなって思うのは製作者として当然の願望でしょ?」
ああ、そうだな。
「期待に添えるように努力はしよう。」
「うん。それでいいわ。」
…ふっ。
…良い笑顔だな。
微笑みを見せてくれた栗原の笑顔は人を惹き付ける優しさに満ちているように感じられた。
…これが栗原の性格なのだろうか?
だとすれば。
沙織と仲が良いというのも理解できるような気がする。
「感謝する。」
「うん。その気持ちだけで十分よ。」
俺の返事に満足してくれたようだ。
話し合いを終えた栗原が席を立つ。
「それじゃあ、私の出番はこれで終わりだからお先に失礼するわね。これからどうするのか知らないけれど、あまり無理はしないようにね。」
俺と琴平。
そして美由紀と宗一郎にも挨拶をしてから。
栗原は部屋を出て行った。




