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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
645/1242

ミルク

「みゃ~♪」



生まれたのはとても小さな小猫ちゃんです。


私の想像した精霊は、

両手で持ててしまうくらいとても小さな白猫でした。



ですがその鳴き声はとても愛おしく思えます。



…可愛すぎです♪



それなのに?



「そ、そんなっ!?有り得ないわっ!!!」



金田さんが突然叫びだしました。



「精霊が声を出すなんて!?ただの『魔力の塊』なのよっ!?そんなの絶対に有り得ないわ!!」



…えっと。


…絶対に?



あり得ない?



そうなのでしょうか?



戸惑う金田さんを見ていると不安になってしまいます。



私は何か間違ってしまったのでしょうか?



吸収した精霊の構成を再現したつもりだったんですけど。


私の精霊を見た金田さんは有り得ないと断言しています。



…だとしたら。



どこかで失敗してしまったのでしょうか?



私には判断できません。


ですが。


私の足元に擦り寄る子猫ちゃんは嬉しそうに鳴いてくれていました。



「みゃ~♪」



うん♪


可愛いです♪



…って。



今はそういうことじゃないですよね?



「声は出さないんですか?」


「だから有り得ないって言ってるでしょ!!」



問い掛けただけで金田さんに怒られてしまいました。



「一体、何をしたのっ!?」



…えっと?



何を、と聞かれても困ります。



怒鳴られても答えられません。


そもそも私には違いが分からないからです。



精霊の知識がないので答えようがありません。



…何かが違うの?



足元に転がる弓を拾い直してから、

可愛く擦り寄ってくれる小猫ちゃんも拾い上げてじっくりと眺めてみました。



真っ白で汚れのない毛並みです。


精霊でもふわっふわの触り心地ですね。



…気持ち良いです♪



このまま何時間でも撫でていられそうな気がします。



…今は試合中なので無理ですけど。



改めて眺めてみました。



精霊の体は私の手よりも少し大きいくらいなので20センチから25センチくらいでしょうか?



体を伸ばしたり尻尾まで考えるともっと長いかもしれません。



ですが。


どちらにしても両手で収まるくらいの大きさです。



ただ、元が魔力なのでルーンと同じように重さは全く感じません。



片手でも軽々と持ててしまいます。



…それでも。



本物の小猫と比べても全く違いが分からないくらい可愛らしい存在だと思いました。



「みゃ~♪」



…はぅぅぅ〜。



可愛すぎです。


可愛すぎます。



この子はきっと天使です。


私の心を癒してくれる天使様だと思います。



私を見上げながら鳴いてくれる小猫ちゃんの姿を見ているだけで。


ただそれだけで心が癒されていくような、

そんな可愛らしさがあるんです。



こういうのも親馬鹿って言うのでしょうか?



もしもそうだとしても、

満足できるほど可愛いと思ってしまいました。



だからこの子はこれで良いんです。



何もおかしくなんてありません!!



「ちゃんと鳴いてくれてますよ?」


「だからそれがおかしいって言ってるのよ!!精霊に意思なんてないのよ!?そもそも魔力が声を出すわけないじゃないっ!そんな行動は絶対に有り得ないわっ!!」



…あ〜。



確かにそうですね。



戸惑い続ける金田さんの言い分は何となくですけど理解できました。



確かに魔術は喋りません。


もちろんルーンが話すこともありません。



ですが、そうは、言われても?



今、ここに、こうして、

目の前に存在していますので、

否定されても困ります。



「そもそも!!そんな小動物で何が出来るっていうのよっ!?」



…むっ!



今の言葉はちょっぴり許せません。



私の大事な小猫ちゃんを馬鹿にしないでください!



…なんて、直接反論する勇気はありませんけど。



心の中で反論しながら、

小猫ちゃんを試合場に下ろしました。



何が出来るのかを実証する為に、です。



「あなたの名前は『ミルク』。今日から『ミルク』って呼ぶからね♪」


「みゃ~♪」



小猫ちゃんの名前を決めました。


ただ名前を呼ぶだけでも、

ミルクは可愛らしく鳴いてくれるんです。



もう可愛すぎて目が離せません。


心の底からメロメロです。


一生愛し続ける自信しかありません!



「頑張ってね♪」


「みゃ~♪」



返事をしてからちょこちょこと歩き出したミルクは金田さんの足元に近づきました。



「な…何をする気なの…!?」



それはこれから披露します!



戸惑う様子の金田さんの足元に近づいたミルクは、

精一杯の鳴き声をあげました。



「にゃ~っ!!」



威嚇いかく的な鳴き声ですね。



その声が周囲に広がった瞬間に、

突如として金田さんの足元が崩壊したんです。



「え…っ?きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…っ!!」



金田さんを巻き込みながら、

試合場に大きな穴が発生しました。



「…なっ、何が起きたのっ!?」



大穴の中に落ちてからも起き上がれない様子ですね。



『引力』に引かれて立ち上がれない金田さんは、

大穴の中で叫ぶことしか出来ないようでした。



…そして。



「みゃ~!!」



ミルクがもう一度叫んだ瞬間に、

金田さんの体は上空へと浮かび上がりました。



「ちょ…っ!き…きゃあぁぁぁぁぁぁぁ…っ!!」



斥力せきりょく』によって身動きが取れないままふわふわと浮かんでいます。



…ちょっとだけ。



ちょっとだけ羨ましいと感じた私はいけない子でしょうか?



…ミルクの能力があれば空を飛べるのかな?



そんなふうに思ったんですけど。


金田さんはそれどころではありませんね。



「にゃ~~~!!」



さらにもう一度ミルクが叫んだ直後に、

試合場へと強く叩き付けられてしまったからです。



「か…あ…っ!?」



口から血を吐き出しています。


高さを考えると3階から落ちた…と言うか、

叩きつけられた感じでしょうか?



衝突の威力を考えると。


間違いなく骨が折れるほどの衝撃があったと思います。



だからでしょうか?



金田さんはミルクの力によって瞬く間にぼろぼろになってしまいました。



「…一体、何…を?」



…と、聞かれても。



説明を求められても上手く説明する自信はありません。



ですが恐怖の眼差しでミルクを見つめる金田さんに、

私が理解している範囲で説明することにしました。



「ミルクが持つ自然現象は重力です。私の吸収と同じような引き寄せる力になります。」



波のように引き寄せて押し返す

『引力』や『斥力』もミルクの能力です。



「もちろん元が私の魔力ですから『吸収』の能力も兼ね備えています。」


「重力の操作…ね。やっぱりあなたもとんでもないバケモノだわ…。」


「どういうふうに呼ばれても構いません。私は私の目的の為に強くなりたいだけです。その為になら、『バケモノ』と呼ばれても悔いはありません。」



…今なら何を言われても怖くありません。



以前の私なら泣き寝入りしていたと思います。



誰も知らない吸収という能力のせいで、

学園に入学するまでは誰にも相手にされない存在だったからです。



名前も知らないような人に『呪われた子』と罵られた経験もあります。


物心がついた日から今日までの間に、

バケモノと呼ばれた回数は数え切れません。


100や200程度ではないからです。



だから。


以前の私なら傷付いていたと思います。



…ですが。



今の私は違います。



こんな私を受け入れて、

優しくしてくれた人達がいるからです。



両親以外で初めて優しくしてくれたのは悠理ちゃんでした。


だから私は悠理ちゃんが大好きです。


たった一人の大切な親友です。



ですが今は悠理ちゃんだけではありません。



翔子先輩がいてくれて。


沙織先輩がいてくれて。


御堂先輩がいてくれて。


北条先輩がいてくれます。



そして何より。



総魔さんと出逢えたことで、

私の人生は変わったんです。



臆病で泣き虫なこんな私に。


総魔さんは力の使い方を教えてくれました。



人と関わることを恐ていた私に。


生きる喜びを教えてくれたんです。



…だから私は。



総魔さんから受けた恩をお返しする為に。


強くなりたいと思っています。



ホンの少しでもいいから。


総魔さんのために出来ることをしたいと思っているんです。



「私は…勝ち上がります!」



総魔さんに必要としていただくために。


総魔さんに傍にいても良いと言っていただくために。



身動きが取れない金田さんに向けて、

魔術を発動することにしました。



「これが…これが私に出来る『最高』の魔術です!!」



きらめく両手の先に生まれる幾百の魔術。


この全てが吸収によって得た魔術です。



ですが。


これは『アルテマ』とは違います。



私には融合の能力がないからです。



それでも私は、私に出来る『精一杯の魔術』を発動させました。



「マジック・レイン!!!」



今までに吸収してきた数々の魔術を一斉に解放したんです。



激しく降り注ぐ魔術の雨。


翔子先輩のメテオストライクとほぼ同じ現象です。


ですが、大きな違いがあります。



私の魔術は『自分自身の魔術』ではなくて、

『吸収して集めた魔術』だからです。



私自身も制御することが出来ません。



まだまだ使いこなせない強力な魔術が数多く含まれているからです。



だからこれはあくまでも吸収した魔術の乱発になります。



乱舞と言えるほど格好良くもありませんし、

常に一定の威力を期待することもできません。



一度使ってしまったら再び魔術を吸収しない限り二度と発動することができない最後の切り札です。



…それでも、良いんです。



私の精一杯を総魔さんに見ていただけるのなら、

撃ち尽くしたとしても問題なんてありません。



総魔さんに私の成長を見ていただくために。


それだけのために。



これまでの試合で吸収してきた全ての魔術が尽きるまで解放し続けました。



「これが…私にできる精一杯です!!」


「い、いやあああああああああああああああああああっ…!!!!!!」



金田さんは降り注ぐ魔術の雨の中で泣き叫びながら倒れてしまいました。


魔術が尽きて攻撃が停止した時にはすでに意識がない状況だったと思います。



「試合終了!!!」



審判員さんが即座に試合を止めたことで、

私にとって大会初の『勝利』が決定しました。



「みゃ~♪」



嬉しそうに擦り寄ってくれるミルクも、

私の初勝利を祝福してくれているように思えます。



「ありがとう、ミルク♪」



ひとまず試合は終わリました。



…ですが。



用が済んだからといってミルクを消してしまうのは何となく申し訳ない気がします。



私のために頑張って戦ってくれた大切なお友達です。



だからルーンは解除しても、

ミルクは召喚したままで試合場を下りることにしました。



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