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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
639/1242

楽しめた

《サイド:御堂龍馬》



「し…試合、終了!!!」



審判員の宣言によって彼の勝利が確定した。



学園2位の実力も。


大賢者の称号も。


精霊という力でさえも。



その全てをものともせずに、

彼はあっさりと成瀬君を打ち破ってみせたんだ。



…それどころか。



新たなる力を手にしたことで、

彼は更なる高みへと上ってしまった。



…これが彼の実力なのだろうか?



嫌でも考えてしまう。



…僕と彼の距離を。



どれ程、成長しても。


どれ程、力を願っても。



…彼には追い付けない。



そんな絶望感にも似た気持ちが僕の心を支配していく。



…一体、どこまで成長を続けるんだ?



試合場を下りて僕達の所へと帰ってくる彼の表情はいつもと何も変わらない。



だけど…なんとなくだけど。



何かが違う気がする。



雰囲気ともいうべき何か。



たぶんそれは僕だけではなくて、

他のみんなも感じているような気がした。



そして、その事実を象徴するかのように。



誰も…翔子や深海さんでさえも、

彼に話し掛けようとはしなかった。



一度始まればもう、あとには引き返せないような。


そんな空気が流れているんだ。



言葉にならない言いようのない不安。



重苦しい雰囲気の中で、

彼が口を開いてしまう。



…その瞬間に。



何故かは分からないけれど。



彼の言葉を聞いてはいけないような。


そんな恐怖と絶望が、

心の中に広がってしまったんだ。



「…思った以上に楽しめた。」



…えっ?



今…なんて?



彼は『楽しめた』と言った。



それはまるで、もう終わってしまったかのような表現だ。



「これでもう俺の役目は果たせただろう。」


「な、何を…言ってるんだ?」



…役目って。



果たせたって…どういうことなんだ?



「試合はまだ…」



終わってないんだ。



それなのに。


彼は表情一つ変えずに。


まるで最初からそうだったかのように。



「今のお前達なら、俺がいなくても大丈夫だ。」



僕達に背中を向けて歩きだしてしまったんだ。



「何処に…行くんだい?」


「………。」



尋ねてみたけれど。


彼は何も答えてくれなかった。



だけどその問いの代わりに。


一言だけ伝えてくれたんだ。



「お前達と出逢えて良かった。」


「…総魔さん…っ!!」



想いを残した彼の言葉を聞いた瞬間に深海さんが泣き崩れた。



「…総魔…さん…っ。」



…どういうことなんだ?



…これではまるで。



まるでこれが『最後の別れ』かのように。



嘆き悲しんでいるんだ。



「「………?」」



深海さんの姿を見て何も言えずに戸惑う沙織と翔子。



それでも…彼は。



彼は僕達に振り返ることもないまま。



何も言わずに、立ち去ってしまったんだ。



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