下がる一方
「いただきま~す!」
両手を合わせる私の隣で、
優奈ちゃんも手を合わせてからお箸を手にとったわ。
「いただきます。」
「いただきます。」
沙織と龍馬も二人仲良く食事を始めたわね。
ぶちぶちと文句を言いながらも食事を始める真哉に続いて、
総魔はいつものように無言で食事を始めてるわ。
…と、まあ。
そんな感じで食事が始まったんだけど。
食事の合間に沙織が龍馬と真哉に話し掛けていたわ。
「あれからずっと二人で練習していたの?」
沙織が質問したことで苦笑いを浮かべる二人。
どうやら私達が見ていたことに気づいてなかったようね。
「なんだ、見てたのか?こっそりやるつもりだったんだけどな。」
真哉の言葉に続いて、龍馬が答えてくれる。
「ずっと、っていう程でもないけれど。1時間くらいかな?」
1時間だけ?
…と言うことは。
私達が部屋に戻ってくるちょっと前くらいから特訓を始めたのかな?
「練習って、こっそりやる必要があるの?」
堂々とすればいいじゃないって思うんだけど。
真哉は何故か胸を張って頷いてる。
「努力ってのはな。人に見せないようにやるもんだ。」
…えっ?
…はぁ?
…本気で言ってるの?
「うわ〜っ!真哉が『努力』とか言っちゃってるぅ。」
たっぷりと哀れみを込めた視線を向けてあげると。
真哉は不満そうな表情で睨んできたわ。
「お前、今、俺のことを、完全に馬鹿にしてるだろ?」
「うん。してる。」
速攻で断言してあげるとね。
真哉は激しくため息を吐いていたわ。
「はあ…。ったく、好きにしろ。だがな。俺もいつまでも負けっぱなしってわけにはいかねえんだ。明日はちゃんと俺の『実力』ってもんを見せてやるぜ!」
自信たっぷりに宣言する真哉だけど。
いまいち信用できないのよね~。
ここ最近…と言うか?
総魔と関わって以来ずっとまともな活躍の場がないからよ。
だって…ね。
総魔でしょ?
龍馬でしょ?
そして私でしょ?
番号だけで言えば優奈ちゃんもそうだけど。
真哉の評価は下がる一方なのよ。
試合でもフェイに負けて全然活躍してないし。
なんだかもういなくてもいいんじゃない?って思うくらいの存在感になりつつあるのよね〜。
だけど多分それは真哉自身も感じてると思うわ。
…まあ、こればっかりはね〜。
私と優奈ちゃんは特にそうだし。
沙織だってそう。
龍馬も多少の関わりがあるけれど。
私達は皆、総魔の指導や協力を受けて成長してきた部分があるの。
だけどね。
真哉だけは違うわ。
直接的な関わりは少なくて、
総魔の協力をただ一人受けていないのよ。
だから自分自身の力だけで這い上がろうとしてる真哉の努力と心意気は認めてあげたいと思ってる。
でもまあ、だからってそんなにすぐに結果に繋がるとは思わないんだけどね。
それでも自分自身で努力する気概は認めるべきだと思うのよ。
…例え結果は伴わなくてもね。
努力する気持ちが大事なの。
だからね。
私なりに真哉を応援することにしたのよ。
「まあ、精一杯頑張って?」
「なんで、疑問形なんだ?」
不審に思う真哉に、
私は精一杯の笑顔で答えてあげる。
「なんとなく!」
「ったく、お前は…っ!」
怒りに燃える真哉だけど。
ひとまず真哉を無視して総魔に視線を向けてみる。
口数が少ない総魔…と言うか。
放っておくと一切喋ることがないんだけどね。
無言で無表情の総魔の感情は良く分からないけれど。
それでもたまに微笑んでくれる瞬間を見ると私はドキッとするの。
ずっとそんなふうに微笑んでいてくれたら、
きっと私は『幸せ』なんじゃないかなって思うくらいにね。
居心地が良いのよ。
見た目だけで言えば近づきにくい雰囲気があるけれど。
それでも会話が出来ないってわけじゃないわ。
多くを語らないだけで。
ちゃんと感情があって。
周りに意識を向ける優しさだってちゃんとあるのよ。
何も分からなかった優奈ちゃんに手を差し延べたように。
私や沙織の成長を考えてくれたり。
龍馬の成長を見守るような行動を見せたりもしてくれてるの。
最初は敵対してた私達のことをね。
ちゃんと考えてくれてるのよ。
だから総魔は決して冷たい人間なんかじゃないと思ってる。
そういうふうに見せているだけで、
本当はきっと優しい人だと思ってるの。
だから、ね。
そんな総魔が私は『好き』なの。
現状に満足せずに更なる力と成長を追い求める総魔が何を考えて何も追い求めているのかなんて私には分からないけれど…。
だけどね。
もしもね。
許されるのなら。
もしも総魔が認めてくれるのなら。
私は最後までずっと総魔と一緒にいたいって思ってる。
そんなふうにね。
ずっとずっと、思っているのよ。




