大規模攻撃
「ここからが本番だ!!」
先程とは違う殺意のこもった威圧。
戦士としての本能を解放したフェイからは、
寒気すら感じるほどの冷たい気配が感じられる。
「手加減はしない!!」
洗練された動きで構えるフェイが上段に構えた槍に膨大な魔力を流し込む。
「これが俺に出来る最強の一撃だ!この攻撃がお前に届くかどうか!この一撃に全てを賭ける!!」
宣言と共に全力で振り下ろされる槍。
「煉獄の炎!!」
フェイが叫んだ瞬間に。
槍から放たれる炎が漆黒に変質した。
「全てを灰に化せ!黒炎衝!!」
風を切り裂いて。
全力で振り下ろされる漆黒の炎が頭上から迫り来る。
…一撃必倒か。
北条の攻撃にも似た強引な力技だ。
どんな防御も叩き伏せる気迫に満ちている。
「これで終わりだ!!!」
最大威力で放つ炎で迫るフェイだが、
まともに受ける必要はない。
「ディスペル!!!」
解呪によって、
炎は再び一瞬にして消え去った。
…だが、それだけか。
黒い炎だけは解呪で対処できたのだが、
振り下ろされる槍の勢いは止まらなかったようだ。
剣と槍の二つのルーンが金属音を響かせながら激突しあった。
その結果。
「…くっ…」
フェイの一撃を受け流し切れなかったことで片膝を着いてしまった。
…一撃の重さも北条以上か。
攻撃力も御堂と同格だ。
速さと力を兼ね備えたフェイの実力は確かに近接戦最強と言えるだろう。
「うおおおおおおおっ!!!」
強引に力を込め続けるフェイが追い撃ちをしかけてくる。
「細雪突き!!!」
指先の動きだけで槍を回転させて軌道を変える。
そして高速で放たれる連続突きが俺の体を次々と貫いていった。
…ぐ…ぅぁ…っ…!
防御が間に合わなかった。
…ちっ。
刺突の勢いに押されて後方に吹き飛ばされてしまう。
数メートル程度だったが勢いに負けたのは事実だ。
…技の流れが北条とは格が違うな。
力押しではない技量。
体に染み付いた技がフェイの実力を物語っている。
…間違いなく近接戦では最上位だな。
武術だけを見れば御堂も北条も敵わないだろう。
もちろん俺の技量でも届かない。
…単純な斬り合いでは分が悪いな。
それでもフェイは手を休めることなく追撃に出る。
近接戦に持ち込むために、
一足飛びに距離を詰めてくる。
「このまま一気にねじ伏せる!!」
槍を構えるフェイの勢いは一切衰えない。
本気で全力攻撃を仕掛けるつもりのようだ。
このまま攻撃を受け続ければ、
どこかで致命傷を受けてしまうだろう。
そうなる前に体勢を立て直す必要がある。
「今度こそ叩き伏せる!黒炎衝!!」
今度は横薙ぎの一撃だ。
…受けるのは難しいか。
近接戦で操作の能力は間に合わない。
構呪による迎撃はできなくもないが、
今は小細工を仕掛けるよりも最善の手段がある。
…相手の得意分野を叩く!!
そのために強者との戦いを望んだのだ。
…フェイの技量を超えてみせる!
聖剣を下段に構え直して、
突き出された槍に狙いを定める。
「飛燕!!」
かつての翔子の技だ。
地面スレスレの下段から上空へと舞い上がる垂直斬りによってフェイの槍を切り飛ばした。
「…なっ!?」
「元を断てば済む話だ。」
武器破壊。
槍を破壊してしまえばどんな攻撃も不発に終わる。
「…大した技量だが、俺を越えるにはまだまだ力が足りていない。」
フェイがどれほどの達人だとしても、
これが魔術戦だという事実を覆すことは出きないからだ。
「俺を止めるには魔力が足りないな。」
「…くっ。」
槍を破壊されて動きを止めたフェイに対して聖剣の力を解放する。
「オメガ!」
聖剣を横薙に振り抜いたことで、
刃が描く軌跡に沿って破壊が巻き起こった。
大規模の爆発と衝撃だ。
「ぐっ、がぁぁっ!!!!」
ジェリルを吹き飛ばした攻撃を仕掛けたことでフェイの体もあっさりと宙を舞った。
だが、まだここで終わるつもりはない。
「最後に見せてやろう。これが真の破壊の一撃だ。」
聖剣を構え直して連続で振るう。
「連斬!オメガ・クロス!!」
十字に振り抜いた聖剣の軌道に沿って衝撃波が生まれ、
宙を舞うフェイの体を突き抜ける。
『ズドオオオオオオオオオオンッ!!!!』
試合場を吹き飛ばすほどの高威力の破壊魔術を上空に向けて放った。
アルテマほどの威力は無いが、
御堂のグランド・クロスと同格の魔術だ。
爆発の直撃を受けて吹き飛び。
上空に広がる防御結界に激突したフェイの身体が重力に引かれて試合場に落ちた。
「…ぐ…ああぁ…っ!!」
痛みで苦しんでいるが、
まだ意識があるようだな。
「…さすがに一撃では落ちないか。」
そのまま転がらなかっただけジェリルよりはマシかもしれないが。
今の一撃だけで意識を奪うことはできなかったらしい。
…大した男だ。
「な、なんという…威力だ…っ!まさか…これほどとは…っ。」
フェイは震える体でゆっくりと立ち上がってみせた。
…まだ立てるのか。
予想以上、いや、期待通りと言うべきか。
「気迫だけでなく、戦士としても超一流だな。」
「…ふっ。嫌味にしか…聞こえないな…っ。」
…嫌味か。
もちろんそんなつもりはない。
「どんな状況であったとしても、立ち上がる意思を見せる者を嘲笑う趣味はない。」
「…は、ははっ。変わった…男だな…。」
どうだろうな。
どう思われようとどうでもいいことだ。
「念のために聞いておく。降伏するなら見逃そう。」
「素直に、認めると思うか…?」
「いや…。」
そうは思わない。
諦めるつもりがあるのなら、
すでに立ち上がってはいないだろう。
だが今のフェイは槍を杖代わりにして立ち上がるのが精一杯の状況だ。
どう見ても重傷だからな。
もはや戦闘続行は不可能だろう。
「最後に言い残すことはあるか?」
「ふっ。すでに…勝ったつもりか…?」
強がるフェイだが、
戦える状態ではないのは一目瞭然だ。
「強がるだけで勝てるのなら苦労はしない。」
「…ああ、そうだな。だが戦いを放棄するつもりはない!勝ちたければ…俺を倒してから前に進め…。」
…なるほどな。
同じ系統というわけではないだろうが、
フェイは北条と同様に最後まで戦って負ける結末を望むらしい。
「いいだろう。お前を乗り越えて次へと進むことにしよう。」
フェイの意志を汲み取って聖剣を向ける。
「御堂に匹敵する実力は認める。…いや、近接戦において頂点にいることは認めよう。だが…それでもまだ、俺には届かない。」
互いの実力差を宣言してからフェイを斬る。
『ザシュッ!!!』
「ぐあああああああああああっ!!!!!」
防御も回避もできずに直撃を受けたフェイは槍を手離して崩れ落ちた。
ころころと転がった槍は、
ものの数秒で魔力を失って霧散する。
そうして最後まで戦う意志を見せたフェイも意識を失ってしまったようだ。
…これで終わりだな。
動けないフェイの様子を眺めながら再び聖剣を解除した。
「試合終了!!!勝利はジェノス魔導学園です!!!これで3回戦進出はジェノス魔導学園に決定しました!!!」
騒ぐ観客と係員に視線を向けるつもりもないまま試合場をあとにする。
ただ一人。
試合場に倒れるフェイを残して。




