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THE WORLD  作者: SEASONS
4月1日
6/185

監視

眼前にそびえ建つ巨大な校舎。



7階建てという高さも驚きを感じるが、

各階の規模も文字通り広大だ。



ざっと見える範囲だけでも、

数えきれないほどの窓が確認できる。



上の階に向かうほど小さくなっていくピラミッド形の校舎。


いや、実際には台形というべきか。


最上階が尖っているわけでないからな。



階段状の階層となっている校舎だが、

1階に見える窓の総数は少なく見積もっても150以上はあるだろう。



各教室に6つあると仮定して考えると、

ざっと20以上の部屋数があるということになる。



それほどの横幅を持っていながらも、

校舎は正方形型のため、

奥行に関してもほぼ同等の距離があるはずだ。



ただ実際には廊下や階段などもあるからな。


敷地面積の全てが部屋ではないはずだが、

300以上の部屋数があると思われる。



上の階に行くほど少しずつ面積が狭くなっていくとは言え、

相当な数の教室があるだろう。



「校舎内を一通り見るだけでも相当な時間が必要だろうな」



全ての部屋数を合計すると千では数え切れない。


それほど巨大な校舎だからこそ、

国内最大規模の学園と言われているのかもしれない。



数多くの生徒達が行き来する校舎。


すれ違う生徒達のことは気にせずに、

静かに校舎を見上げ続ける。



そんな俺の行動を不思議そうに眺める生徒達も何人かはいるようだが、

他にも校舎を見上げている新入生達は数多くいるからな。


それほどおかしな行動をとっているわけではないはずだ。



ひとまず周りの視線は無視して校舎の外観を眺めてみる。



思い浮かぶことはいくつもあるが、

考えるべきことは一つしかない。



…ここからだ。



ここから上り詰める。



…この学園で力をつけて、いつか必ずたどり着いて見せる。



今はまだ駆け出しの初心者だ。


盗賊を狩れる程度の実力はあっても魔術師としては素人でしかない。



だが、それでも。



魔術師の頂点に立つという目的をもってここにきた。



最低でもその程度の実力を手に入れなければ叶えられない目的があるからだ。



…必ず叶えてみせる。



ただそれだけを願い。


今まで生きながらえてきた。



全てを失ったあの日からおよそ15年。



学園に入学するための資金を調達するために年単位の時間をかけてしまったが、

この程度の苦労はこれからの事を思えば些細な事でしかない。



求めるモノはただ一つ。



不可能を覆せるほどの『力』だ。



あの日の誓いを叶えるために。


そのために強くならなければならない。



だから俺は、その為だけに、共和国に訪れた。



魔術師として強くなる為に。


共和国最大と呼ばれるジェノス魔導学園まで訪れたのだ。



「…ここからだ。」



静かにつぶやき、

一度だけ視線を足元に落とす。


そうして深呼吸をしてから再び顔を上げる。



ただそれだけで、

気持ちを切り替えることが出来た。



何を目指すにしても、

段階というものがあるからな。



学園に入るために資金を調達したように。


力を得るためにも下準備は必要だ。



…焦るのはまだ早い。



興味はあるが、

校舎内を見て周るのは後回しにしておこう。



そもそも一日で全てを見るのは無理だ。


だったら校舎以外を確認しておいたほうが効率が良いと判断して、

校舎には入らずにこのまま学園の敷地内を散策することにした。



…出来ることなら。



今すぐにでも魔術の勉強を始めたいとは思う。


だが今はまだどこに何があるかすら分からないからな。



まずは学園内の確認を済ませておくべきだろう。



ここで生活する以上、

学園内を把握しておくことも必要になる。



何も知らず。


ただ流されているだけでは願いなんて叶わない。



ここで何を学び、

何を得るのかを自分自身で考える必要がある。



…なにより、時間は無限ではないからな。



学園にとどまれる期間は限られている。



学園が定めている年齢制限という限界が先か。


それとも手持ちの資金が尽きて学園を放り出されるのが先か。



今後どうなるかは分からないが、

どちらにしても学園にいられる時間は限られている。



俺の場合、最長で3年だ。


22歳になれば強制的に退学が確定してしまうからな。


そうなる前に卒業しなければならない。



…とは言え。



手持ちの資金では数ヶ月の生活が限界だろう。


入学費のために、

ほぼ全ての資金を費やしてしまったせいだ。



長期的に考えるならどこかで資金を調達する必要があるのだが、

そうなると勉強に費やせる時間はさらに減ってしまうことになる。



だから今は限り有る時間をできる限り有効に使わなければならない。



…そもそも数か月先まで考える必要があるかどうかすら疑問だがな。



考えなければならないことが数多くあるからだ。



この学園が、いや、共和国がどこまで把握しているかは知らないが。


残された時間はそれほど多くはないだろう。



…時間は有限だ。



その『事実』は無視できない。



個人的な事情。


学園の内情。


共和国の情勢。



様々な状況を考えながら散策を続ける。



そうしてあてもなく歩き続ける学園内で周囲を見回してみると、

いつしかすれ違う生徒の大多数が上級生ばかりになっていた。



「少し雰囲気が違うな。」



俺と同じように入学式を終えたばかりの新入生の姿はほとんど見当たらないからだ。


全くいないわけではないのだが、

その数が極端に少ない。


物珍しそうに、あるいは不安そうに学園内を歩く生徒はごく少数だ。



校舎の入り口付近ではそれなりに見かけることができたのだが、

それ以外の場所ではすれ違うことが少なくなっていた。



…いや、今日はこれが当然か。



新入生が少ない理由には心当たりがある。


おそらく、ほとんどの新入生は真っ先に学園の寮に向かったのだろう。



自室の確認と荷物の整理は優先すべき事柄の一つだからな。


そして今後の学園生活のために、

入学式で配られた資料の確認も必要になる。



もちろん他にもやるべきことは幾つもあるだろう。


本来なら俺も寮に向かうべきかもしれない。



今も荷物を持ったままだからな。



寮の自室で荷物の整理をしたいとは思うのだが、

今はまだその気になれなかった。



…そもそも手持ちの荷物が多いわけでもないからな。



他の新入生達とは違って、

わずかばかりの荷物しかない。


鞄と呼ぶのもおこがましく思えるような袋一つだ。


このままでも学園内の散策は出来る。



それに書類の確認はどこでもできるからな。


寮でなくても問題はない。



…だがまあ、おそらくはアレだろうな。



東の方角に視線を向けてみれば、

複数棟並ぶ男子寮はすぐに確認できた。


校舎からはかなりの距離がある。


時間はあるとはいえ、

往復するだけで30分以上はかかる距離だ。


それだけの時間を考えれば、

あとで向かう場所にわざわざ今から足を運ぶのは時間の無駄としか思えない。



どうせ夜になれば向かうことになるからな。


特に急ぐ必要はないだろう。



効率を考えながら寮とは関係のない方向へと進んでみる。



目的があるわけではない。


どこか行きたい場所があるわけでもない。


それでも学園の情報を集めておくことは決して無駄にはならないはずだ。



すれ違う生徒達の様子を眺めることで得られる情報もあるだろう。


聞こえてくる会話に耳を傾けることで知ることができる情報もあるだろう。



少なくとも土地勘を鍛えておけば単純に学園内で迷子になるという事態は避けられる。



そのためにも入学式で受け取った地図を確認しながら校舎や他の建物の位置関係を覚えていく。


こうして行動範囲を拡大していくことも将来的には役立つ日が来るはずだ。



他者からみれば初心者が学園内で道に迷っているように見えるかもしれないが、

周りからどう思われようと気にしないからな。



…そんなことはどうでもいい。



迷子と思われても特に困ることはないのだが、

確実に一人だけは異なる感想を持っているだろうな。



今も俺の後を追ってくる尾行者だけは事情が異なるからだ。


こちらが動き回れば動き回るほど追跡も続くことになる。



よほど職務に忠実な性格でもなければ、

舌打ちをしたくなる衝動にかられているだろう。



…どこまで追い続けるつもりだ?



無理に撒こうとは思わないが、

それ相応の苦労はしてもらうつもりでいる。



相手の実力を図るために、

相手の嫌がりそうな道を選ぶ。



出来る限り視界の開けた場所は当然だ。


人混みがあれば強引に紛れ込むのも良い。


時には足を止めて景色を確認するふりをしながら振り返る。



そうして何度も追跡者を探してみたが、

なかなか相手の姿は確認できなかった。



…この程度の揺さぶりでは難しいか。



だが、後方にいるのは間違いないはずだ。



この散策に目的地はないからな。


先回りして待ち伏せることはできない。


だからこそ、後方の何処かにいるはずだ。



監視者が隠れにくい方向を探しながら進む。



時折すれ違う生徒達の隙間を通り抜けて、

不意に道を変えることで姿を隠すように行動した。



俺を見失って慌てた尾行者は距離を詰めようとするはずだからな。



無理に接触するつもりはないが、

相手の顔くらいは確認しておきたいと思っていた。


そのために様々な方法でかく乱を試みてみたのだが、

どんな手を使っても相手の姿は特定できなかった。



…思った以上にやっかいだな。



これ以上は危険かもしれない。


あまり無茶なことはできないからな。


一旦、あぶり出しは諦めたほうが良いだろうか。



…尾行に気づいていない振りを続けておかなければ監視の目が強化されかねないからな。



一人くらいならどうでもいいと思うが、

あまり数が増えると面倒だ。



だからこそ追っ手を振り切らない程度にささやかな嫌がらせを繰り返して翻弄していたのだが。


相手の警戒心を弱めるために、

わざと見える範囲に姿を現すことにした。



そうして学園内の散策を続けていたのだが、

あぶり出しを諦めてから数分ほど過ぎたあたりで突然監視の目を感じなくなった。



…はぐれたのか?



尾行に失敗してこちらを見失ったのだろうか?


それとも尾行そのものを諦めたのだろうか?



答えはわからないが、先程まで感じていた視線が感じられなくなっている。



…いないのなら気を使う必要はないが。



いなくなった理由がわからない。


振り切ったわけではないと思うのだが、

気配は完全に感じられなくなっている。



…監視を中断したのか?



諦めてくれたのであればそれで良いのだが、

何か別の理由があるのかもしれない。



どういう事情があるのかはわからないが、

ひとまずここからは自由に行動できるようだ。



…今のうちにこの場を離れたほうが良いだろう。



ようやく一人になれたからな。


人目を気にせずに移動できる。



そうしてのんびりと学園内の散策を続けていると、

学園内に幾つかある休憩所らしき場所にたどり着いた。



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