表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE WORLD  作者: SEASONS
4月14日
587/1330

まだ大丈夫

《サイド:御堂龍馬》



…ふう。



今回は引き分けか。



本当にマリアさんと沙織の実力は互角だったようだね。



もう少し練習する時間があったら、

魔法を扱えるようになった沙織が勝てたかもしれないけれど。


同系統の能力による魔術戦では明確な勝敗がつかなかったらしい。



今回は引き分けという結果で試合が終わったために。


僕達は意識を失っている沙織を救助してから試合場を下りることにした。



…と言っても。



魔力を失って昏倒する沙織を目覚めさせる方法は限られているからね。



僕に出来ることは何もない。



沙織を目覚めさせるためには彼か優奈さんに魔力の供給を頼むか、

あるいは自然回復を待つしかない。



もっとも確実なのは彼にお願いする方法なんだけど。


僕が声をかける前に

深海さんが沙織の胸に手を添えてくれたんだ。



「…魔力を送ります。」



目的を告げた直後に深海さんの手が輝いて、

沙織の体に魔力が満ちていく。


ピーターから奪った魔力が残っているから、

沙織に魔力を譲渡する程度の余力はあるのかもしれないね。



深海さんが協力してくれたおかげで、

沙織の魔力は急速に回復していった。



「…う…ん…?」



無事に目覚めた沙織が体を起こす。


供給を終えた深海さんは疲れた様子も見せずに笑顔で沙織に問いかけていた。



「…気分はどうですか?」


「え…ええ。たぶん…大丈夫、だと思うわ…。」


「…良かったです。」



嬉しそうに喜ぶ深海さんの笑顔を見たからかな?



沙織も気持ちが落ち着いた様子だね。


深海さんに向けて静かに微笑んでいた。



「ありがとう、優奈ちゃん。」


「い、いえ…。私もさっき助けてもらいましたから…。」


「ふふっ。」



照れながら微笑む深海さんを見て、

沙織はそっと深海さんの体を抱きしめていた。



「…ありがとう。」


「え…あ、いえ…わた、私…。」



恥ずかしそうな表情で顔を赤く染めながら慌てふためく深海さんの姿はとても可愛らしいと思うよ。



そんな深海さんを笑顔で見守りながら、

僕も沙織の無事を喜ぶことにした。



「ありがとう、深海さん。」


「い、いえ…。」



僕からもお礼を言ってみると、

深海さんから手を離した沙織は一人で立ち上がってみせた。



そもそも怪我はしてないから体調の心配はいらないんだけど。


どうやら本当にもう大丈夫のようだね。



沙織の無事が確認できたことで、

僕もほっと安堵の息を吐いてみた。



「これでひとまず解決かな。」



僕はそう思ったんだけど。


沙織としてはまだ思うことがあるらしい。



少し申し訳なさそうな表情を見せてから頭を下げて謝罪し始めたんだ。



「ごめんなさい。私も結局、勝てなかったわ…。」



ああ、うん。


まあ、ね。



結果的には勝てなかったわけだけど。


僕達としては沙織を責めるつもりなんてないよ。



それを言い出すとまた深海さんも落ち込んでしまうだろうしね。



「大丈夫だよ。結果は結果として受け止めて、次の試合から巻き返せば良いんだ。」



引き分けならまだ焦る必要はない。



連敗していたら次の真哉の試合でジェノスの命運が決まってしまう可能性があったけれど。


引き分けに持ち込めたことで、

僕まで順番が回ってくることは確定したからね。



だからまだ大丈夫だと思うよ。


僕と真哉が連敗しない限り、

最終的には彼まで順番が回ることになる。



そうなればもうジェノスの敗退は確実に回避できるからね。



「まだまだ大丈夫だよ。僕か真哉のどちらかが試合に勝てれば彼まで順番は回るんだ。それに延長戦に持ち込めれば翔子も参加できるからね。まだまだ逆転の可能性は十分にあるよ。」


「そういうことだ!そんなに落ち込まなくても俺が勝てばトントンだ!!」



沙織を励ました僕の言葉に続いて真哉も笑顔で頷いていた。



「次に龍馬も勝てばこの試合はもう勝ったも同然だろ?だったらあとは気楽に応援でもしてればいい。」



気楽な態度で歩みを進める真哉は係員の言葉も待たずに試合場に向かって行く。


その後ろ姿を見送ってから、

翔子も沙織と深海さんに話し掛けていた。



「まあ、試合結果はともかく、二人とも成長してるのは間違いないと思うし、次に頑張れば良いんじゃない?」



翔子の言葉を聞いて小さく頷いた二人に、

僕も視線を向けてみる。



見た目に大きな変化はないけれど。


新たな道を切り開いて、

成長する兆しを見せた沙織。


そして最初に出会った頃と比べて、

格段に成長している深海さん。



二人は魔術師としてもそうだけど。


精神的な面で成長しているように思えるからね。



今大会に参加したことで確実に一歩を踏み出した二人は、

これからまだまだ強くなれるはずだ。



だから今すぐに結果がでなくても焦る必要はないと思う。



これから少しずつ強くなっていけば良いんだ。



そしていつの日にか。


彼と肩を並べられる存在になればいい。



そんなふうに考えながら、

試合場へと視線を向けてみた。



対戦成績だけを考えると、

すでに1敗1分けで危険な状況だ。



真哉が勝てば五分だけど。


もしも真哉まで負けてしまったら僕達にはもうあとがない。



たった一度の敗北が敗退につながってしまうことになる。



その危険性は回避したいところだけど。


次に出てくるのが誰なのかが分からないままだ。



予想ではフェイだと考えて試合順を決めたけれど。


もしも本当にフェイが出てきたら、

僕達は危機的状況に陥ってしまうことになるだろうね。



フェイは真哉以上の実力者だ。


個人戦なら最強と言える相手でもある。



僕でさえ確実に勝てるとは言い切れない存在なんだ。



だからこそ。


真哉がフェイに勝てる可能性は限りなく低い。



だけど真哉が負ければ…。



僕達にはもう、あとがないんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ