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THE WORLD  作者: SEASONS
4月14日
586/1306

互角

「手加減はしないわよ!ホーリー!!!」



掲げた杖から放たれたのは光属性最強の広範囲魔術だが、

発動の仕方が通常とは異なっているように思える。



本来なら上空から地面に向かって降り注ぐはずの光の雷だが、

マリアの光は杖の先端から沙織に向かって水平に放たれていた。



轟音と共に『真横』に飛ぶ幾筋もの雷光。


マリアの特性によって変型した光が沙織に襲いかかろうとしているのだが、

沙織も即座に魔術を展開している。



「リフレクション!」



沙織の声と共にルーン本体の五紡星が輝き、

小さな光が防壁となって沙織の周囲を包み込んだ。



その結界に阻まれて、

マリアの放った雷光は全て弾かれている。


そしてその内の何本かの雷光はマリア自身へと跳ね返っていた。



「…邪魔ね。」



魔術を解除したのだろう。


マリアが杖を振るっただけで、

ホーリーによる全ての雷光が消滅して消え去った。



「相変わらず迷惑な魔術を使うわね。」



不満を口にしながらも次の魔術に意識を切り替えたマリアのルーンから新たな魔術が発動する。



「ダンシング・フレア!!!」



ルーンから放たれる炎は、

波打ちながら一直線に沙織へと襲い掛かった。



本来なら目的の方向へと向かって無差別にうごめきながら燃え盛るはずの魔術だが、

マリアは炎の動きを自由自在に制御できるらしい。



まるで巨大な蛇のように、

指向性を持って炎を操ってみせた。



「燃えなさいっ!」



炎蛇を操って沙織の体を飲み込もうとしているようだが、

炎を見つめる沙織は微動だにせずに迎撃の魔術を放っている。



「ヴァジュラ!!」



放たれたのは光の塊だ。


炎のように揺らめく光がマリアの炎蛇と激突する。



うねり押し合う二人の魔術。


互いの魔術が衝突して相殺し合う。



その攻防は僅か数秒間だっかが、

両方共に消滅する形で終わりを迎えていた。



つまりは互角だ。



二人の魔術は形こそ違えども、

全くの互角の威力をもっているようだな。



…だとすれば。



二人の試合の結末は魔力の総量と互いの駆け引きによって決まることになる。



「テスタメント!!!」



マリアの魔術が発動する。


莫大な冷気が生まれて沙織に襲い掛かった。



『絶対零度』の極寒の冷気だ。


全てを凍てつかせる氷属性の魔術だが、

この魔術もマリアの意思によってその形を変えているようだな。



本来なら目標を凍り付かせるのだが、

放たれた冷気は沙織自身ではなく、

その周囲を渦巻くように滞留している。



…沙織を足止めするつもりか?



冷気の中心に立つ沙織を閉じ込めるかのように氷壁を作り出して、

内部に閉じ込めようとしているように思えた。



「まだまだこれからよっ!!!エクスカリバー!!!」



続けざまに放つ風の刃が、

沙織を取り囲む氷の壁へと襲い掛かった。



ザクザクと音を立てながら次々と突き刺さる風の刃が氷の壁を砕きながら沙織に襲い掛かっていく。



…久々に見る複合攻撃だな。



魔術を混ぜ合わせる翔子とは違い、

それぞれの特徴を生かした連携攻撃だ。



一見、無駄な手順にも思えるが。


視界を遮られたうえに多方面から降り注ぐ氷の粒と風の刃の複合攻撃は厄介だ。



冷気を帯びた風の刃は、

通常よりもさらに威力を増しているはず。



そして行動範囲を制限された状態で襲い掛かる冷気と風の刃は確実に凶器と言えるだろう。



逃げ場はない。


並の魔術師なら確実に致命傷になる。



おそらく翔子や北条でも耐えきれないはずだ。


優奈は吸収で無効化出来るが、

御堂でも無傷では済まないだろうな。



…迎撃出来れば凌ぐことは出来るが。



おそらく沙織ならそのどちらも選ばないだろう。



「終わったかしら?」



二種の極大魔術による相乗効果を狙った攻撃が止まったあとは静寂だけが試合場を支配している。



静かに様子を見るマリアだが、

氷に閉ざされて姿の見えない沙織は冷静に答えた。



「いいえ。まだよ。」


「…でしょうね。」



沙織の声が聞こえた瞬間に氷の壁が砕け散り、

内部から沙織が姿を現した。



「悪くないと思うわ。だけど私のシールドを突破するにはまだまだ威力が足りてないみたい。」



…そう。



今の沙織ならそもそもこの程度の攻撃は意味をなさない。


魔法によってシールドの性能を引き上げているからな。



耐える必要も迎撃する必要もない。


全てを遮断すれば済む話だ。



今の沙織に攻撃できる魔術師は限られている。



おそらく北条でも無理だ。



御堂と翔子。


そして優奈の吸収なら結界を破壊できると思うが、

黒柳や西園寺でも無理だろうな。



沙織の防御を破るのは難しい。



…だが、問題は火力不足だな。



治癒魔導師として成長しつつある沙織の攻撃力はそこまで高くはない。



決して弱くはないが、

俺達の中では最下位に位置するだろう。



「次は私から攻めさせてもらうわ!」



杖を掲げた沙織が力を発動させようとしている。



学園一の魔力を込めた攻撃だ。



杖の頂点で輝く五紡星が力強い光を増していく。



「マスター・オブ・エレメント!!!」



沙織に放てる最強の攻撃魔法。


五行の全ての力を解放する一撃によって、

白、黒、赤、青、黄の五色の光がマリアに降り注ぐ。



…今度は沙織の攻撃だな。



沙織との1度目の試合において俺のシールドを貫通した魔術だ。


並の防御結界では意味をなさない高威力の光に対して、

マリアも杖を掲げて応戦してみせる。



「甘く見られたものね。『元素』を極めているのは私なのよ!純属性の私に対して名乗るべき名前じゃないわっ!!」



杖を掲げて発動させるマリアの魔術が、

沙織の魔法とぶつかりあう。



「ガーデン・オブ・エレメント!!!」



数十種類もの魔力の光が放たれた。



あらゆる元素を支配するマリアと、

あらゆる魔術を行使する沙織。



二人の魔術が互いに侵食し相殺し合う。



だが、それだけだ。


どちらが優勢とも言えない戦いになってしまっている。



…予想通り火力が足りないな。



沙織の攻撃力はまだ底上げ出来ていなかった。



試合場の中央で炸裂する二人の魔術は打ち上げ花火のように爆発を繰り返し、

幾重にも重なる衝突音が断続的に響き渡っている。



互いの魔力を込めた最強の攻撃だが、

どちらも同程度の威力があるらしい。



…やはり火力不足の改善は難しいか。



こればかりは性格の問題もあるからな。


治癒系に傾きつつある沙織の性格上、

相手を傷付ける攻撃は不得意になるのかもしれない。



…残念だが。



相手を殺すくらいの気概を持たない限り、

攻撃面での成長は望めないだろう。



そんな予想を証明するかのように、

拮抗した魔術はどちらに傾くこともないまま両者の中心で激突を繰り返している。



学園随一の大賢者同士による魔術の応酬だ。


互いに総力戦とも言える攻撃の中で、

マリアは苦しそうな表情を見せながらも叫んでいた。



「勝つのは私よっ!!」


「…負けたくないのは、私も同じです!」



必死の想いに沙織も応える。



気力の続く限り攻撃を継続する二人。


全ての魔力を出し尽くす勢いで魔術を放ち続ける二人の攻撃は止まらなかった。



…さすが、としか言いようがないな。



試合場に轟く爆発音は100や200程度ではないだろう。


優に1000を超える魔術が二人の中心で激突を繰り返している。



…これが本来の魔術師同士の戦いか。



永遠に続くと思わせるほどの魔術の攻防。



これほどの魔術を使える沙織もそうだが、

互角に戦えるマリアも相当な実力者だ。



…とは言え。



実際に無限の攻撃など起こりえない。


どんな攻防にも必ず終わりがくるからだ。



魔力という『限界』が二人にも必ず訪れる。



それだけは誰にもどうにもできない。



互いに弱まる魔術の威力が目に見えて勢いを失っていく。



その結果として。


二人はほぼ同時に魔術を停止してしまった。



「「………。」」



魔力が途絶えて消え去る魔術。


沙織もマリアも魔力が底をついた様子で試合場に座り込んでしまっている。



それでも戦えないわけではないはずだ。


二人の手にはまだルーンが残っているからな。



…だが。



すでに二人には戦いを続行する気力が残っていないように見える。



「…ったく、ここまで頑張った結果が、引き分け…なんて…。」



マリアは納得できないといった表情のまま意識を失って崩れ落ちた。



…そして。



「…すみません。私も…勝ちきれません…でした…。」



魔力を使い果たした沙織も意識を失って倒れた。



「「「「「「………。」」」」」」



静まり返る試合場。


審判が二人の意識を確認してから首を左右に振る。



「残念ですが…」



立ち上がる審判が試合終了を宣言した。



「二人共試合続行不可能の為。第2試合は引き分けとします!!」



魔力が尽きた二人の試合結果は

『引き分け』だった。



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