治療、拒否
どさっ…と、試合場に倒れ込むピーターをデルベスタの生徒達が回収に向かう中で、
私も急いで優奈ちゃんに駆け寄ったわ。
「優奈ちゃん!?」
慌てて私のあとを追ってきてくれた龍馬と沙織の3人掛かりで優奈ちゃんの治療を開始する。
下手に動かすわけにはいかないから。
試合場で治療を始めたのよ。
もちろん大会の会場にも医療部隊は待機してるから、
治療をお願いすることは出来るんだけど。
下手に搬送するよりも、
沙織と総魔に任せた方が確実だと思うから自分達で治療することにしたの。
「総魔も急いでっ!!」
少し遅れて到着した真哉と総魔を含めて、
5人揃って優奈ちゃんの治療を急ごうとしたわ。
「どう、沙織!?」
問い掛けてみるけれど。
沙織は不安そうな表情で問題の腹部に手を添えるだけ。
すでにピーターのルーンは消滅してるから、
短剣が刺さってるということはないわ。
だけどね。
だからこそ危険なの!
傷口をふさぐ異物が存在しないから、
優奈ちゃんの出血が致死量に到達しつつあるのよ。
「………。」
瀕死の優奈ちゃんもそうだけど。
止まらない出血を見た沙織の表情もはっきりと青ざめていたわ。
「出血が酷すぎる…。私の魔術だとこれはもう…。」
…うわぁぁぁ!!!
沙織でも治療できないとなると。
私や龍馬の魔術では到底役に立たないわね。
そもそも回復魔術の使えない真哉は論外だから最後の希望は総魔だけなよ。
「お願い、総魔!優奈ちゃんを助けて!!」
総魔に振り返って願ったわ。
冗談抜きで急がないと本当に助からなくなるからよ。
「早くっ!!」
「………。」
必死に叫んで救いを求めてみたんだけど。
何故か総魔は視線を逸らしてしまったわ。
「総魔…?」
…まさか!?
総魔でも…治療できないの?
そんな不安を感じたんだけど。
どうもそういうことじゃないみたい。
総魔は優奈ちゃんに視線を向けようとはせずに、
治療に戸惑っている沙織に話し掛けたのよ。
「先に言っておくが、優奈を助けることは簡単だ。この程度の負傷なら数秒で完治できるからな。だがその前に…今回はお前自身の手で治療しろ。」
「え…っ!?」
戸惑う沙織を真っ直ぐに見つめながら、
総魔は言葉を続けたわ。
「理論を組み直せ。そして自分自身の限界を乗り越えて見せろ。」
「私自身の限界…ですか?」
言葉の意味を理解できずに戸惑う沙織だけど。
それでも総魔の指示を受けた沙織は、
冷静に優奈ちゃんと向き合っていたわ。




