ただの道化
《サイド:美袋翔子》
総魔のルーンが完成に近づいてる。
そのことに気づいてしまったから、
総魔のルーンを確認して理事長に報告する理由ができてしまったわ。
まあ、その役目さえ終わらせてしまえば私の任務もひとまず終了だから、
ようやく自由になれるんだけどね。
だけど。
正直に言って素直に喜べない気持ちはあるのよね。
…これでまた一歩。
私との実力差が埋まってしまったからよ。
「ついに、ここまできたのね。」
総魔の実力の最終確認が終わるのは好都合よ。
その事実によって面倒な仕事から解放されるのはありがたいと思うんだけど。
それだけじゃ済ませられない複雑な心境に陥ってしまったことも事実だから。
素直には喜べないのよね。
…この状況は良くないわ。
だって、ね。
総魔の調査が終わるということは、
『天城総魔という存在』を相手にしなければいけない日が来るっていうことでもあるんだから。
のんきに自由を謳歌なんて言ってられないわよね。
…現時点での判断なら。
私と総魔の力量は7対3で私がまだ優勢だと判断してる。
だけどね。
それはまだ総魔のルーンを確認してないからよ。
相手の実力の底が見えない現状で、
正確な判断なんて出来るわけないわよね?
だから実際にどうなるのかは分からない。
…それに、ね。
私にとって総魔はすでに恐れるべき相手になってしまっているのよ。
このまま総魔の成長を見続けるのもいいけれど、
試合に向けての対策も忘れてはいけないわ。
何も出来ないまま負ける日が来てはいけないの。
もしもそんなことになれば、
私はただ単に敵を育てただけの道化でしかないから。
だから。
そうならないために。
私は私の立場のために。
総魔の成長を見守りつつも、
絶対的な壁にならなくちゃいけないの。
…そうでなきゃ、私はただの笑いものでしかないわ。
こうなってしまった以上。
このまま黙って見てるわけにはいかないわよね?
そう思うからこそ。
昨日の夜からずっと考えていた事を試してみようなんて思ってしまったのかもしれないわ。




