6人中5人
《サイド:天城総魔》
開会式が終わり、
第1回戦の試合場に到着したところで米倉美由紀が歩み寄ってきた。
「さあ、みんな〜!ここからが本番よ!学園で日々努力してきた成果を思う存分発揮していいからね!!」
「はい!最善を尽くします。」
「まあ、楽勝だな。」
激励の言葉を受けたことで御堂が最初に応えていたが、
隣に並ぶ北条は普段通りの気楽な態度を見せている。
まあ、あまり人のことを言える立場ではないが、
北条からは緊張感というものが感じられないな。
だからだろうか?
「はぁ…。北条君?」
余裕を見せる北条の姿を見ていた美由紀が深々とため息を吐いていた。
「一応、言っておくけど。あなたは前回の大会で負けてるんだから、他の誰よりも油断しないようにね?」
「はあ?前回がどうかなんてどうでもいいだろ?やるからには勝つ!それ以外の選択肢はねぇぜっ!!」
どうやら話し合う気もないようだな。
美由紀の忠告を聞き入れようともせずに、
北条は気合いを入れながら試合場へと向かっていった。
そのまま試合に出るつもりだろうか。
一人で先行した北条の後ろ姿を眺める美由紀は再びため息を吐いていた。
「…ふぅ。困った子ね。」
何を言っても無駄だと感じたのだろう。
北条から視線を逸らした美由紀は御堂との会話を再開していた。
「まあ、北条君は仕方ないとして、試合順はどうするつもりなの?」
「そう…ですね…。」
美由紀の質問を受けた御堂が俺に振り返って問いかけてくる。
「きみはどうする?初戦は真哉が行くみたいだけど、その次に行くかい?」
…試合順か。
試合は5戦目まであるようだが。
3勝で勝ち抜けということを考えると、
最後まで順番が回ってくるかどうかは分からない。
そして延長戦が行われない限りは、
基本的に一人だけ不参加となる。
現状では優奈が補欠扱いだが、
補欠が試合に出てはいけないという決まりがあるわけでもない。
必要に応じて優奈も参戦させるべきだろう。
参加人数は6人だが、
試合に出れるのは5人のみ。
つまり。
試合に参加するかしないかだ。
そして参加するなら何番目に出るのか。
その判断を含めて自由に選んでいいようだな。
…だとしたら。
答えはすでに決まっている。
御堂の質問に答える前に、
まずは美由紀に確認してみることにした。
「俺が全ての試合に出る必要はないな?」
「…えっ!?あ~、う~ん…。」
悩んでいる様子だが、
悩んでいるという時点で強制ではないということだ。
「まあ、一応…ね。無理に出なさいとは言わないけれど…。確実な一勝を逃すのはもったいないから、出来れば勝ち星を稼ぐために出て欲しいわね…。」
…勝ち星か。
今の言い方から考えれば試合に出たほうがよさそうだが、
試合に勝てさえすれば出なくても問題はないともとれる。
「それでもね?どうしてもって言うのなら補欠でも文句は言わないわ。」
参加して欲しいが、
強制はできないと考えているようだな。
…だとすれば。
今すぐに参加する必要性はないように思える。
今後も試合は続いていくからな。
出番は何度もあるはずだ。
それに御堂と翔子がいれば、
そうそう簡単に負けはしないだろう。
優奈も状況次第では戦力になる。
あとは沙織と北条の努力次第で勝ち抜くことが出来るはずだ。
対戦相手の実力は不明だが、
こちらの戦力は十分に思えるからな。
そう考えれば今回は不参加にしても、
次の試合から参加すれば遅くはないだろう。
「…そうだな。」
言葉に迷う様子の美由紀から視線を逸らしたあとで、
御堂の質問に答えることにした。
「悪いが今回は参加しない。」
「…そうか。まあ、きみが決めたのなら仕方がないね。」
「…うぅぅぅ~。」
俺の発言によって残念そうな表情を見せる御堂と美由紀だが、
それでも無理に試合を強制するつもりはないらしい。
今回は俺の意見を聞きいれてくれるようだ。
…だが。
不参加を表明したことで、
今度は翔子が話し掛けてきた。
「総魔は試合に出ないの?」
「ああ。俺がいなくても問題ないだろう?」
「え~?なくはないと思うけど~?」
疑問はあるようだが、
はっきりと否定しないあたりに翔子の余裕が感じられる。
やはり御堂と翔子がいれば問題ないだろう。
それに。
期待という意味では3人目もいる。
「優奈。」
「は、はい…っ。」
「昨日教えたことを実践出来るな?」
「…あ、はい。たぶん…なんとか…。」
「試合は優奈に任せる。俺の代わりに勝ち上がれ。」
「は、はい…っ!が…頑張ります…。」
「ああ、頼む。」
俺が不在の間を優奈に任せることにして、
まずは美由紀に歩み寄ることにした。
「手間をかけて悪いが、少し聞きたいことがある。」
「ん…?私に?別にいいけど、どうかしたの?」
「…ここでは話が進まないからな。場所を変えたい。」
御堂達に聞かれて困る話ではないが、
この場にいては解決できない問題だからな。
質問の内容に関わらず、
この場から離れる必要があった。
「ついてきてくれ。」
美由紀から話を聞くために。
二人で試合場から離れることにした。




