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THE WORLD  作者: SEASONS
4月14日
550/1294

知り合い

《サイド:美袋翔子》



…うぅ~ん?



なんだかよく分からないけれど。


総魔と優奈ちゃんから微妙な雰囲気を感じるわね。



何かを聞きたそうな優奈ちゃんと、

何も話さない総魔っていう感じ?



だから何?ってこともないけれど。


ちょっぴり気になるのよね〜。



…だけど。



多分だけどね。


優奈ちゃんが聞いても話さないのなら、

私が聞いても結果は同じだと思うのよ。



そう思うから。


ひとまず今は気にしないことにしたわ。



とりあえず話題を変えるために、

肝心の大会に関して色々と話がしたいと思うんだけど。



…どうしようかな?



総魔に話しかけてみる?


それとも優奈ちゃんに話しかけたほうが良いのかな?



あえてこのままそっとしておくっていう選択肢もあるんだけどね。



魔術大会自体は予定通り8時40分に開会式が終わったことで、

一旦休憩時間になったところよ。



まあ、休憩時間って言っても20分しかないし。


すぐに第1試合が始まるから、

急いで試合場に向かわなきゃいけないんだけどね。



そんな慌ただしい状況なんだけど。


何人かの生徒が私達に歩み寄ってきたわ。



「…久し振りだね、御堂君。」



真っ先に龍馬に話し掛けてきたのは『グランバニア魔導学園』の1位に君臨する澤木京一さわききょういちよ。



共和国の首都グランバニアの魔導学園で頂点に立つ人物だけあって、

魔術師としての実力は龍馬に匹敵すると思うわ。



本当にね。


とんでもなく強いのよ。



今の私や龍馬と比べるとどうなのかは難しい判断になるけれど。



実際問題として彼が龍馬以外の誰かに負けたという話は一度も聞いたことがないわ。



まあ、そもそも大会での試合結果は学園の成績に反映されないから、

何回敗北したとしても勝率が変動することはないんだけどね。


だから私や真哉の大会での敗北回数も学園的には加算されることがないわ。



あくまでも大会は大会。


学園は学園だから。


成績に影響はないのよ。



だからね。


澤木京一もグランバニアの成績的には無敗の王者なの。



そういう意味で言えば、

今の龍馬は無敗記録が途切れちゃったから勝率だけでみると澤木君に負けちゃうわね。



まあ、どっちにしても総魔には勝てないでしょうけど。



でもね。


それくらい強いのよ。



もしも龍馬がいなければ、

魔術大会で最強の座にいたのは彼だと思うわ。



…とは言ってもね〜。



その完全無敗の龍馬を倒した人物がいるから現時点では3番手って感じ?



まあ、それでもね。


私や真哉よりも格上のはずなのよ。



できれば戦いたくない相手だと思ってる。



それでもね。


その時が来たとしたら全力で戦うつもりでいるし。


やる以上は勝つつもりで戦うけどね。



でもまあ、それはそれとして。


問題はこっちかな?



「どうだ、翔子?俺と付き合う気になってくれたか?」



他の誰でもなく、真っ先に私に話し掛けてきたのは『ヴァルセム精霊学園』1位の大塚義明おおつかよしあきなのよ。



「だ〜か〜ら〜!付き合う気はない、って言ってるでしょ?」



冷めた目で義明を見つめてあげる。



それでもね。


義明は諦めずに出会う度に私を口説こうとしてくるの。



「一度、ゆっくり話をしないか?」


「し、な、い。」



はっきりと断ったわ。



…っていうか。



総魔の前で口説いてくるなんて、

空気が読めない感じが減点よ!減点!!


他の男になんて興味がないのに、

総魔に軽い女だなんて思われたら本気で泣くわよ?



そうならないように義明を無視して、

別の人物に視線を向けたわ。



もう一人ね。


私に近づいて来る人物がいたからよ。



彼女の名前は文塚乃絵瑠ふみつかのえる


カリーナ女学園で2位の成績なんだけどね。



私とは何度も試合をしてるけど。


全試合が引き分けで、

一度も決着がつかない永遠のライバルでもあるわ。



「久し振りね、乃絵瑠。元気にしてた?」


「ええ。翔子も相変わらず元気そうね。」


「当然でしょ。それが私の取り柄よ!」


「あははっ。それだけ元気なら大丈夫そうね。今回はどうなるか分からないけれど、出来れば決着をつけたいわね。」


「ふふ〜ん♪もしそうなったら私が勝つと思うけどね〜。」


「ふ〜ん。いつも以上に自信満々って感じね。まあ、そのほうが翔子らしいかな?」



話を終えた乃絵瑠がそっと右手を差し出してきたわ。



「お互いに頑張りましょう。」


「もちろん♪」



乃絵瑠の手を握り返して仲良く握手を交わしたわ。



他校の生徒としては一番の仲良しかもしれないわね。



…まあ、自分でもね。



敵同士とは思えない仲の良さだって思ってるわ。



だけどそれくらいね。


個人的には結構、

仲が良い方だと思っているのよ。



…全力で戦っても互角の相手ってなかなかいないしね〜。



貴重っていうと、何か変な感じだけど。


上下のない対等な関係って思えるのよ。



ただそれだけでね。


お互いに通じ合ってるっていう気がするの。



「それで乃絵瑠はどうなの?調子はどう?」


「…あんまり変わってない感じかな〜?」


「ふ~ん。そうなんだ?」



謙遜してるのか実際にそうなのかは知らないけど。



だけど。


もしもね。



もしも乃絵瑠と戦って勝てたとしたら、

ちゃんと成長してるって実感できる気がするわ。



「今回こそ、決着をつけるわよ!」


「ええ、そうね。今回こそ翔子を倒してみせるわ!」


「その言葉をそっくりそのまま乃絵瑠に返すけどね。」



そんなふうに、

お互いに勝利を宣言したからかな。



「「ふふっ。」」



揃って笑っちゃった。



まあ、いつもこんな感じなんだけどね。



…で。



話し合う私達の間に入り込もうとする義明がまだいるんだけど。


全力で義明を無視しつつ乃絵瑠と話し続けたのよ。



そうして笑顔で決戦を誓い合う私達が握手をしているとね。


龍馬と京一の会話も盛り上がっている途中で別の生徒達が歩み寄ってきたわ。



『デルベスタ多国籍学園』

1位のフェイ・ウォルカと2位のマリア・パラスよ。


そしてもう一人『ランベリア多国籍学園』

1位のシェリル・カウアーね。



「久しぶりだな。元気にしているか?」


「みなさん、お久しぶりです。」


「おはよ。みんな元気にしてる?」



フェイ、マリア、シェリルの3人が歩み寄ってきたわ。



「おはようございます。」


「おう。フェイ達じゃねえか、調子はどうだ?」



沙織と真哉が3人を笑顔で迎えてる。


槍の使い手同士、フェイと気の会う真哉は結構仲が良いみたい。



で、沙織はマリアとシェリルと握手をしながら挨拶を交わしているわ。



『多国籍学園』の生徒って私はあまり関わりがないけれど。


亡命組の龍馬や沙織は結構多国籍学園の生徒達と仲が良いみたい。



ちなみに多国籍学園っていうのはその名前が示すとおり、

世界各国から集まった生徒達の為の学園なのよ。



もう一つの『イビスレア多国籍学園』と合わせて3校あるらしいわ。



特に強制ではないけれど。


他の大陸から来た生徒達のほとんどは多国籍学園に入学することが多いみたい。



その理由はただひとつ。


『会話が安定するから』ということらしいわ。



生まれた時から共和国にいて、

ずっとジェノスで育ってきた私には分からない悩みだけどね。


わりと重要な問題かもしれないわね。



亡命しても言葉が通じないなんて、

途方に暮れちゃうと思うのよ。



だから普通に言葉の通じる誰かがいてくれれば、

それ以上心強いことなんて他にはないって私でも思うわ。



だからね。


命からがらこの国まで逃げ延びてきた魔術師達にとって、

同じ言葉で同じ感情を共有できる事がどれだけ幸せかなんて、

それこそ言葉では言い表せないと思う。



そんなささやかな幸せの為に、

共和国内には3箇所の多国籍学園があるらしいわ。



まあ、そのせいで?



3つの各町はあらゆる国の文化が入り混じっているそうよ。



何も知らずに多国籍の町に行くとね。


あまりの乱雑ぶりに混乱すること間違いなし!って言われるほど変わった町並みをしているらしいの。



まあ、実際に行ったことがないから、

本当のところはどうかなんて知らないけどね。



それでもそれぞれに会話が進む中で、

最後に一人だけ沙織に歩み寄る人物がいたわ。



『マールグリナ医術学園』で1位の成績を持つ女子生徒。


栗原薫くりはらかおるさんよ。



共和国最大の医療研究所を抱える学園で、

国内最高の学生医師として広く活動をしている人物でもあるわ。


現時点で治癒魔術師の頂点に立つのはジェノ魔術研究所の神崎慶一郎さんなんだけど。


知名度だけで言えば栗原さんのほうが上かもしれないわね。


国内各地で活動してるからすっごく有名な人なのよ。



「元気そうね、沙織。」



優しい微笑みだと思う。


こういうのを慈愛っていうのかな?



決して美女とは言わないけれど。


その笑顔には心を癒してくれるようなそんな優しさが感じられるのよ。



まあ、年下だから余計に可愛く見えるのかもしれないけどね。



そんな栗原さんを見た沙織は少しだけ表情を曇らせていたわ。



「…薫。」



沙織は申し訳なさそうに、

栗原さんに頭を下げたのよ。



その理由はまあ、私も知ってるわ。


謝る必要があるかどうかは疑問だけどね。



沙織らしい行動だとは思うの。



だから、かな?



栗原さんは苦笑いを浮かべながら沙織の手をとっていたわ。



「そんなふうに気にしなくていいのに…。」



沙織の手をそっと掴んで微笑む栗原さんは本当に優しい子だと思うのよ。



…これはまあ、アレよね。



白衣の天使って言葉がぴったりって感じなのよ。



さすがお医者様!とも思うわ。



そんな栗原さんの気遣いのおかげで、

沙織は頭を上げてから小さく微笑んでた。



「ごめんね。」



また謝る沙織だったけど。


今回はちゃんと笑えているわね。



「…あははっ。謝らなくて良いよ。それに、いつでも私は待ってるから…。」



沙織の笑顔が見れたことで栗原さんも微笑んでいたわ。



二人の詳しい関係は私も知らないけれど。


栗原さんがマールグリナ医術学園への編入を誘ったのを沙織が断ったっていう話を聞いたことがあるわ。



…本当ならね。



沙織は向こうの学園に行きたかったと思うの。


マールグリナは医療専門の学園だしね。


成美ちゃんのためを考えたら、

絶対に向こうの学園の方が良いに決まってるわ。



だけどね。


沙織はジェノスに留まったの。



はっきりとは言ってくれなかったけど。


きっとそれも成美ちゃんの為だと思う。



医術学園に行けばね。


より専門的な研究が出来るけれど。


そうなると成美ちゃんと離れて暮らすことになるのよ。



だけど沙織は成美ちゃんから離れることが出来ないから。


成美ちゃんの側にいる為に。


ジェノスに留まったんだと思うの。



だから、ね。



成美ちゃんの為にね。


マールグリナで『研究をしたい気持ち』と。


成美ちゃんの為にね。


ジェノスに『留まりたい気持ち』



その二つの想いを抱えながら、

沙織は成美ちゃんの為に生きているのかもしれないわ。



…だからね。



だからもしも沙織が覚悟を決めたとしたら。



私も一緒に行こうかな?って思ってる。


沙織一人だと寂しいと思うから。


もしも出来るのなら。


成美ちゃんも一緒に連れて行って、

3人の暮らすのも悪くないんじゃないかな?って思っているのよ。



…まあ、だからこそ理事長に反抗できたんだけどね。



総魔の監視を依頼された当初。


私や沙織を束縛しようとするなら学園を出ていくって強気な態度に出られたのはマールグリナっていう受け入れ先があったからよ。


今となってはその必要がないっていうか、

総魔と離れるのは困るから移籍は考えられないんだけど。


あの時はそういう選択肢もあったの。



…まあ、今は総魔っていう最強の味方がいるわけだし。



マールグリナに移籍するのが正解かどうかは難しい判断だと思うわ。



…最終的に。



みんなで一緒に移籍するって言うなら話は別だけど。


さすがにね。


それはないって私でも思うわ。



さすがに理事長も怒っちゃうだろうし。


優奈ちゃんと悠理ちゃんの関係もあるし。


龍馬だってジェノスに愛着があるだろうし。


総魔が医療の道に進む気がしないし?



普通に考えて無理があるわよね。



だからまあ、移籍は考えてないんだけど。


友好関係は大事にしておきたいわね。



移籍どうこうに関係なく。


成美ちゃんの瞳を治せる可能性がある町なんだから。


ジェノスを卒業後に行ってみるとか、

色々と選択肢もあるわけだしね。


沙織と栗原さんの関係は応援しておきたいと思うのよ。



…と、まあ。



そんな感じでみんなと話をしていたんだけどね。



「…さあ、そろそろ行こうか!」



龍馬の言葉をきっかけとして、

私達は解散することになったのよ。



それぞれの学園毎に。


試合場に向かって移動することになったの。



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