米倉宗一郎
《サイド:天城総魔》
試合順が確定したことで、
ようやく大会の説明が終わったようだな。
係員が話を締めくくっていく。
「…ということで、私からの説明を終わらせていただきます。そして開会式の最後に大会の実行委員長から一言お願いしたいと思います!」
壇上を下りる係員の代わりに、
一人の男が壇上へと上がってきた。
それまでは誰が何をしようと特に興味はなかったのだが。
その男を見た瞬間に………気づいた。
…まさか!?
いや、その姿を見て思い出したと言うべきか。
まさかこんなところで再会するとは思ってもいなかった。
だが、見覚えのある男の雰囲気は以前と何も変わっていないように感じられる。
決して忘れることのない顔だ。
『あの頃』に比べれば少し老けたように思えるが、
それほど大きな変化は見られない。
少なくとも。
記憶の中の印象と雰囲気は一致している。
…だとすれば。
間違いではないだろう。
あの日からずっと探していた男を見つけることができたらしい。
「…えー、大会の実行委員長をやらせてもらっている『米倉宗一郎』だ。」
…米倉?
今まで名前すら知らなかったのだが。
壇上に立った男が堂々とした態度で挨拶を始めたことで初めて名前を知ることができた。
…だが、米倉か。
その名前を聞いて、
今更になって気づいた。
あの男は米倉美由紀の父親だったらしい。
本当に今更という感じがしてしまうが。
名前を知らなかったとは言え、
かつてこの国の代表を務めていた男の顔を知らなかったということだ。
…情けない話だな。
自分自身を笑いたくなる気分だった。
…とは言え。
今はそんなことはどうでもいい。
捜し続けていた男を見つけだしたのだ。
その事実だけが重要となる。
…あの『狂った世界』で。
数少ない記憶に残る存在。
俺の過去を抹消したあの事件において、
ただ一人絶望に立ち向かった男がここにいた。
全てを失ったあの日から十数年。
ずっと捜し求めていた人物の『一人』と、
ようやく巡り会うことができたのだ。




