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THE WORLD  作者: SEASONS
4月13日
526/1294

努力しないほうが良い

「どうしたの、優奈ちゃん?食べないの?」


「…ぁ、い…いえ、頂きます…っ。」



翔子先輩に尋ねられたことで、

慌てて手を伸ばしました。



選択肢はあまりありませんので、

まずはパンに干し肉を挟んで食べてみることにします。



本当ならお野菜も欲しいのですが、

一通り探してみても何も見つかりませんでした。



冬の間はあったそうなのですが、

今はもう春なので除外されてしまったそうです。



ちょっぴり残念に思いながら少しだけかじってよく噛んでみたのですが…。


予想通り、ほとんど味はありませんね。



ただただ堅いだけのパンです。



干し肉も保存食なので仕方がないのかもしれませんけれど。


はっきり言うと美味しくはありません。



何もないよりはマシだと思いますけれど。


好んで食べたいとは思えませんね。



せめて調味料を使うか、

調理して食べやすくするなどの一手間がかけられれば感想も変わってくると思うのですが…。



この一食のためだけに調味料を揃えるのは残りが無駄になる気がしますし。


調理道具を揃えておくというのも余分な荷物になってしまう気がします。



それに調理をするまでは良いとしても、

そのあとの片付けのほうが大変そうですし。


食器の片付けまで考えたら休憩と言う範囲を大きく超えて昼食のためだけに数時間費やしてしまいそうです。



そう考えると調理ができないのは仕方がありませんし。


余計な手間暇をかけていられないという事情も何となくは理解できます。



…理解はできるのですが。



それでも味気ないとは思ってしまいました。



これなら翔子先輩が飽きてしまうのも納得です。



「あ、あの…。町を出てから数時間で食事をするのなら、普通のパンでも良いんじゃないですか…?」



無理に保存食にこだわらなくても、

ある程度は魔術で何とかなるような気がします。



そう思って理事長さんに聞いてみたのですが。



「冬の間ならそれでも良いんだけどね。春になると気候が不安定になるでしょ?暖かかったり寒かったり、場合によっては天候が崩れることもあるし。色々と食材に影響が出ちゃうから、なかなか難しいのよ。」



保存食ではない普通のパンを用意するのは難しい理由があるそうです。



「それに出発自体が早朝でしょ?まともなお店はまだ営業してないし、基本的に準備は前日に整えるから、一晩置いておくことを考えるとどうしても保存食になってしまうのよ。」



…あぁ~。



そうですね。


言われてみれば確かにそうかもしれません。



学園を出発するのは朝でも、

準備は前日からしておくものです。



実際に私も荷物の準備は前日に済ませておきました。



だから朝市に仕入れに行く予定がない限り、

食料に関しては保存食を積んでおくしか方法がありません。



「…まあ、でもね。どうしても気になるって言うのならね。沙織やみんなが食事の準備をしてくれるのなら、次回からはお弁当持参っていう感じにしても良いわよ。」


「…それなら良いんですか?」


「まあ、安全にさえ気をつけてもらえるのなら、っていう条件付きにはなるけれど。」



…ですよね。



せっかくのお弁当でお腹が痛くなって試合に参加できないという事態になってしまうと、

なんのためのお弁当なのか分からなくなってしまいます。



「だけど無理はしないほうが良いわよ。…というか、間違いなく無理があるから、努力しないほうが良いと言うべきかしら?」



…えっと。



「それはどういう意味ですか?」


「私が説明するよりも、直接見たほうが早いと思うわよ?」



説明を後回しにした理事長さんは、

こっそり北条先輩を指差しました。



どういうことでしょうか?



北条先輩を見てみます。


そしてすぐに気づきました。



…うわ~。



北条先輩の手の届く範囲の食料が、

もの凄い勢いで減っているからです。



私ではどう考えても持ち上げられないほど大きな木箱に収められていたはずの保存食の山が北条先輩一人で激減していくんです。



その勢いを見ただけで理事長さんの言いたいことが理解できてしまいました。



「…ということよ。理解できた?」


「…は、はい。何となく…。」



理事長さんの言いたいことは分かります。



私や沙織先輩や翔子先輩がどれだけ頑張ってお弁当を用意したとしても、

北条先輩一人のお腹を満足させることさえ難しいということです。



それでも努力しようとするなら、

それはもう徹夜覚悟で用意し続けなければ全く足りないと思います。



「…お弁当を用意するのは…難しそうですね。」


「でしょう?私はもう諦めたわ。」



理事長さんも以前は私と同じ考えだったようですね。


ですが、北条先輩の食欲を考慮した結果として質よりも量という結論に達したみたいです。



「まあ、北条君一人の問題というわけでもないけどね。そもそもの前提として出発前に調達する時間がないというのが最大の理由よ。」



買い出しに行く時間がないという理由で、

保存食を食べる以外に選択肢がないそうです。



「そういうことなら…仕方がないですね。」



ちゃんとした理由があるのなら、

我儘なんて言えません。



…というよりも。



食べさせて頂けるだけで十分です。



不満なんて言えませんよね。



私はそう考えたのですが。


総魔さんだけは最後まで食事を始めようとはしませんでした。



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