表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE WORLD  作者: SEASONS
4月12日
517/1390

別れの言葉

《サイド:天城総魔》



気がつけばもう午後7時になっていた。



4日がかりの実験だったが、

ようやく全て終わる時が来たようだ。



特性の調査から始まり。



構呪という仮説は本当に正しかったのか?


それはどの程度の効果を発揮出来るのか?



そしてルーンの能力は?



疑問だらけだった全ての検証が完了した。


これでもう思い残すことは何もないと言って良い。



「…ふう。何と言うべきか…。」



黒柳の発言によって全員の視線が集まる。



「もはや構呪という能力は実証されたと言っても良いだろう。それは『素晴らしき力』だ。そして同時に『恐れるべき力』でもある。」



素晴らしくもあり、恐れるべき力。



相反する評価だが、

黒柳の言葉に反論する者はいないようだ。



「天城君。きみはその力を持って何をするつもりだ?それは…その力は『魔術という世界』に大きく影響を与えかねない異常な能力だ。それほどの力を、きみは何に使うつもりなのだ?」



…俺の目的か。



どこまで話すべきだろうか?



黒柳は信用できる男だ。


話すことに不満はない。


理解してもらえるかどうかは分からないが、

だからと言って否定してくることもないだろう。



そう思える程度には信用しているつもりだ。



…だが。



少し考えてみたが、

思い浮かぶ結論は『何も言えない』という答えだった。



もしも話せば黒柳達を。



…いや。



御堂や翔子達まで巻き込むことになってしまうだろう。



「悪いが俺の目的に関して話すことは出来ない。」


「…ふむ。どうあっても教えるつもりはない、と言うのか?」


「俺には俺の目的がある。…とは言え、この力に関しては俺が望んで手に入れたわけではない。あくまでも『自分の力』を調べて出た結果に過ぎないからな。」


「…確かにそうかもしれん。特性は自分で決められるものではないからな。だが、その力を何に使うのかは、きみ自身が決めることだ。」



…そうだな。



黒柳の言葉は理解出来る。



だがそれでも。


打ち明けるつもりはなかった。



今はまだ『その時ではない』からだ。



話せば黒柳は協力してくれるかもしれない。


だがそれは黒柳以外も巻き込むことになる。



西園寺や藤沢。


その他の職員達まで巻き込むことになるだろう。



…俺の復讐に巻き込むには…関わりすぎた。



見ず知らずの他人であれば何も感じなかっただろう。


だが同じ時を過ごし、

少なからず心を許し合える関係性を築いてしまった。



…だからこそ。



黒柳達を巻き込むことはできない。



…俺に出来ることは。



受けた恩を返すことだけだ。



「いずれ分かることだが、今はまだ言えない。」


「…そうか。」



説明を避けたことで、

黒柳は沈黙してしまった。



これ以上の追求は無駄だと判断したのだろうか?


黒柳の考えまでは分からないが、

代わりに西園寺が口を開いた。



「私もあなたの力は認めるわ。否定出来ないほどに『結果』は出てしまっているから。もう疑うことは出来ないわね。これであなたは完全に覚醒したと言えるはずよ。」



潜在能力に覚醒したと宣言した西園寺が本題に入る。



「だから…一つだけ聞いても良いかしら?」


「なんだ?」


「魔術大会には参加するみたいだけど、そのあとはどうするつもりなの?」



…大会のあとか。



西園寺の質問によって、

全員の視線が俺に集まっている。



黒柳も同様だ。


俺の今後が気になるようだな。



「すでに俺がこの学園で望んだ目的はほぼ達成出来たと言える。あとは大会に参加して異なる能力者達の実力を見極めたあとに、最後に御堂と戦うつもりだ。」



それが達成出来たなら。



「大会後は…俺がここに留まる理由はもう何もないだろうな。」


「それはつまり『学園を去る』という意味かしら?」



そうなるだろうな。



「それが卒業なのか、それとも別の道かは分からないが…。」


「卒業試験を受けないつもりなの?」


「その時の状況次第だな。」


「あなたは何を狙っているの?」


「その質問に答えることは出来ない。」



西園寺との会話を打ち切る。



そして。



出口に向かってから部屋の扉へと手をかけた。



「…黒柳…。」



振り返ることなく。


扉を開きながら黒柳に話し掛ける。



「感謝している。俺の我が儘に最後まで協力してくれたことを…俺は生涯忘れない。」


「それはまるで…これが最後になるような言い方だな。」


「…そうなるかもしれないからな。」



別れの言葉を残してから部屋を出ることにした。


おそらくこれが最後になると思うからだ。



だからこそ。


黒柳にはちゃんと挨拶がしておきたかった。



「…心から感謝している。」



その想いだけを残して。



研究所をあとにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ