洞窟の内部
明るい外部から入ってきたせいだろうか?
内部の暗さが余計に際立ってしまっている。
それに空気の流れが悪いせいか、
じめじめとした洞窟特有の嫌な雰囲気がある。
内部の気温も外に比べればかなり低いように思えるほどだ。
好んで入りたい場所ではないね。
「何も見えないね。」
「ああ。」
「光があったほうがいいかな?」
「あー、どうだろうな。」
曖昧な返事を返す真哉だけど。
僕は左手を掲げて魔術を発動させてみた。
「ライト・ボール!」
明かりを灯す簡単な光の魔術だ。
小さな光の球が僕の左手に現れたんだけど。
その瞬間に僕の体を悪寒が走り抜けてしまった。
「「!?」」
明かりを灯したことで、
今まで見えなかったものが見えてしまったからだ。
出来ることなら見えないままが良かったと思う。
本当に、心の底からそう思うよ。
だけど僕達は見てしまったんだ。
天井を埋め尽くすほどの大群を…。
無数のコウモリの群れを発見してしまったんだ。
「う…わっ?」
「ちぃっ!」
洞窟の内部はコウモリの巣窟になっていたようだ。
慌てる僕達の視線の先で、
コウモリの大群が動き出す。
『ばさばさばさばさっ!!!!』と、
小動物の羽の音が洞窟内に響き渡った。
そして僕達に向かって襲いかかってきたんだ。
『キィーッ!』
『キィーッ!!!』
「くっ!?」
次々と襲い掛かって来るコウモリにあわてふためく僕達だけど。
これはまだ序盤だ。
肝心の大猪と戦う前に逃げ出すわけには行かない。
それに、黙って襲われるつもりもない。
「邪魔だっ!!!エクスカリバー!!!」
真哉の魔術が発動すると同時に、
狭い洞窟内で風の刃が吹き荒れた。
風の刃によって切り裂かれて次々と地面に落ちていくコウモリの大群だけど。
今の一撃だけでは全滅には程遠いようだね。
魔術の影響を受けなかったコウモリの大群が次々と迫ってくる。
『キィーッ!!』
『キィーッ!!!!』
真哉の攻撃をきっかけとして激しく鳴き声をあげるコウモリの大群を相手に、
真哉一人の魔術では対処しきれないようだ。
『キィーッ!!!』
洞窟内を自由自在に飛び回るコウモリが次々と襲い掛かってくる。
「くっ!きりがねえな!!」
「ここは僕が…っ!」
ルーンを発動させて力を解放する。
…とは言え。
洞窟が崩落すると困るからね。
威力は限界まで引き下げておく。
「最弱で放つ!グランド・クロス!!!」
前方へと一直線に突き進む十字の光がコウモリの大群のほとんどを焼き落とした。
洞窟の入口側から奥に向かって一気に殲滅できたと思う。
だけどその瞬間に。
僕達は驚くべき姿を発見してしまうことになったんだ。
「あいつかっ!!」
グランド・クロスの薄暗い光が洞窟の奥を照らしたことで。
僕達は目的の存在を発見した。
依頼対象である大猪だ。
ルーンを構える真哉に続いて、
僕も体勢を整えてから大猪に向き直る。
全長は5メートルよりも遥かに大きく見える巨大な体格。
『ズシンッ!!』と、
一歩踏み出す度に洞窟内に地響きが起こるほどの圧倒的な重量感。
僕のグランド・クロスの射程内にいたはずなのに、
その痕跡がどこにもないほど強靭な肉体。
「ブボオオオォォォッッ!!!」
大猪の上げる雄叫びが洞窟全体を震わせた。




