だったら常に
《サイド:天城総魔》
午前9時。
大会の打ち合わせを終えてから研究所に戻ってくると、
黒柳を除く全員が眠りについていた。
黒柳だけは実験記録を読み直していたようだが、
他は待ち時間の間に睡眠をとっていたようだ。
「おお、戻ったか。待っていたぞ。」
俺が戻ってきたことを確認した黒柳が西園寺達を揺さぶり起こす。
「休憩は終わりだ。」
「ぇ…ぁ?」
寝ぼけながらも体を起こす西園寺が目覚めたことで、
すぐ傍にいた藤沢も目覚めたようだな。
隠すことなく、大きくあくびをしながら起き上がった。
「…ふわぁ~。眠いわね~。」
西園寺よりも年下ということもあるのかもしれないが、
藤沢の行動は少し幼く見えてしまう部分がある。
知力には大きな差があると思うが、
性格的には翔子に近いものを感じるな。
だから、というわけではないが。
黒柳を別とすれば、
研究所の中で最も話しかけやすい人物だと思っている。
「少しは眠れたか?」
「え…?あ、う、うん。本当に少しだけどね。って言うか、あなたはどうなの?呼び出しを受けたせいで寝てないんでしょ?」
「全てが終わったら寮に戻るつもりだ。今はまだ問題ない。」
「うわ~。所長もそうだけど、あなたも根本的に『人間っていう枠』から外れてるわね~。」
「慣れればそれが普通になる。」
「いやいやいや、それは無理でしょ?慣れで睡眠時間は減らない…って言うか、普通は寝ることで精神が安定するものなのよ?」
「だったら常に安定させておけばいい。」
「いやいやいやいや、だからそれが無理なのよ?って言うか、所長もそうなんですか?」
俺の発言を受け入れられない藤沢が黒柳に振り返ると、
黒柳は当たり前のように俺の意見を肯定していた。
「そういうものだろう?」
「いやいや…だから、絶対に違うと思います。」
即座に否定する藤沢だが、
そんな問答を繰り返している間に大宮も目覚めたようだ。
話し声に気付いた峰山も体を起こし始めている。
「もう時間か?」
「…寝た気がしないな。」
小さくぼやく二人の声を聞いて揃って頷く西園寺と藤沢だったが、
そんな幹部達を眺めていた黒柳は大きなため息を吐いていた。
「ったく、おまえ達は…。多少なりとも眠れたなら十分だろう。さっさと目を覚まして頭を切り替えろ。」
「…はい。すみません。」
「申し訳ありません。」
黒柳の指示を受けたことで藤沢と西園寺は検証の再開に気持ちを切り替えたようだな。
先ほどまでのだらけた雰囲気は消え。
席に戻った二人は姿勢を正して真剣な状況を見せた。
そしてそんな二人に続くように、
大宮と峰山も復帰した。
「準備は良いな?」
問い掛ける黒柳に幹部達が揃って頷く。
こうして。
実験4日目が始まった。




