冒険者ギルド
《サイド:御堂龍馬》
時刻は午前8時45分だね。
学園を離れた僕は先導する真哉を追ってジェノスの町の大通りを進み続け、
冒険者ギルドと呼ばれる場所にたどり着いてしまった。
「ここは…?」
「…ははっ!」
ギルドを見上げながら呟く僕を見た真哉は平然と笑っている。
「色々と鍛えるには丁度良いだろ?」
「い、いや…。」
そういう問題じゃないんだよ。
真哉の言葉を聞いて少し呆れてしまったけれど。
昨日一日どこに姿を消していたのかと思えば、
真哉は冒険者ギルドに来ていたらしい。
…ということは?
もしかして理事長は知っていたのかな?
さっき真哉の眠そうな態度を見て笑っていたからね。
…だとすると。
真哉がここに来ていることを、
すでに知っていたのかもしれない。
「僕に手伝ってほしいことって、ここなのか?」
「ああ、そうだ。手っ取り早く経験を積むにはここが最適だからな。」
…最適、って。
…はあ。
真哉の言葉を聞いてため息を吐いてしまった。
言いたいことは分からなくもないけどね。
ここでの仕事は命懸けの真剣勝負なんだ。
学園での試合とは違って、
依頼の失敗は命を失う事態もあり得る。
「まあ、色々と言いたいことはあるだろうが、俺も考えた末に出した答えだからな。説教は勘弁してくれよ?」
「いや、そんなつもりはないけど…。」
「なら行こうぜ。時間が勿体ねえからな。」
急ぎ足でギルドに入る真哉は、
そのまま受付に向かってしまった。
ギルド内を迷わずに進んで行くんだ。
その後ろ姿を見るだけで確信できてしまう。
どうやら真哉は本当にここで『仕事の依頼』を受けていたらしい。
…真哉。
きみは何を求めているんだ?
単なるお小遣い稼ぎなわけがない。
そんな事に命をかけなければいけないほどお金に困ってるはずがないんだ。
特風の一員として学園から補助金を受けているからね。
お金に困ってる様子なんて今まで一度も見たことがない。
…それに。
実戦経験を積むにしても。
わざわざ危険なことをしなくても、
他に色々と方法はあると思う。
今はまだ学生なんだ。
危険を覚悟してまで依頼を受ける必要なんてどこにもないはず。
…それなのに。
真哉はギルドを選んでしまった。
…だとしたら。
こうしなければいけないと思い込ませてしまうほど、
真哉の精神状態は追い込まれてしまっているんだろうか?
僕と彼に敗北したこと。
それも原因だとは思うけれど。
…だけどきっと。
…もしかしたら。
翔子に敗れたことが一番の理由なのかもしれない。
…自分よりも下にいたはずの翔子にも負けてしまったから。
だから力を求めて、
自分を追い込むような行動をとっているのだろうか?
…真哉の気持ちは真哉にしか分からないけれど。
僕の疑問なんて気付く様子もない真哉は、
依頼の手続きを終えてしまったようだ。
「よしっ!行くぜ、龍馬!」
何かの書類を握り締めてギルドを出ようとする真哉と共に、
僕も町の外まで出かけることになってしまったんだ。




