嫌そうな表情
《サイド:深海優奈》
…はふぅ。
一息吐いてから時計を確認してみました。
うわ~。
もう午後3時なんですね。
ここに来たのが1時頃だったはずですので、
気がつけば2時間も話し続けていたようです。
「…あらあら、もうこんな時間なのね。」
私に続いて時計の視線を向けた沙織先輩は、
時間を確認してから翔子先輩に話しかけました。
「今日はもう遅いから出来ることはないけれど。明日のために研究室に行って準備を整えてくるわ。」
「おっけ~!あとで迎えに行くわね。」
「ええ、ごめんね。」
話し合いを終えてから、
沙織先輩は席を立ちました。
そして私と悠理ちゃんにも挨拶をしてくれたんです。
「それじゃあ、またね。」
「あ、はい。」
「また明日~、かな?」
「ふふっ。そうね。また明日、一緒にお食事しましょう。」
「「はいっ!」」
明日の約束をしてから、
沙織先輩は魔術研究所に向かって行きました。
あまり詳しいことはわかりませんが、
色々と研究で忙しいそうです。
先ほどの会話で聞いた話なのですが。
沙織先輩は妹さんの目の治療の為に、
ほぼ毎日研究所に通っているそうです。
私としても一日でも早く治療法が見つかれば良いな~、とは思うのですが。
なかなか難しいようですね。
もちろん私では何のお役にも立てません。
魔術がどうこう以前に医学的な知識は何もありませんので、
私に協力できることは何もないと思います。
ただ、総魔さんにも協力をお願いしているそうなので、
総魔さんの返事を期待していると沙織先輩は言っていました。
私にはどうなるのか分かりませんけれど。
総魔さんならなんとか出来るのではないでしょうか?
とは言え。
私では何の役にも立たないと分かっていますので、
あまり勝手なことは言えません。
ひとまず沙織先輩の妹さんの目が治ることを祈りながら、
悠理ちゃんに話しかけることにしました。
「どうする?悠理ちゃん。今日も図書館に行く?」
「うぅ~。そうなるわよね…。」
嫌そうな表情ですね。
その気持ちは私にも凄く分かるのですが、
勉強を続けないことには新たな魔術を覚えることが出来ません。
今のままだと何時まで経っても先輩達に追いつけないんです。
「もうちょっとだけ頑張ろ?」
「…うん。」
憂鬱な雰囲気で頷く悠理ちゃんは勉強を始める前からすでに力尽きた雰囲気ですね。
だからでしょうか?
そんな私達を見ていた翔子先輩が苦笑していました。
「暇だし、私でよかったら勉強を見てあげよっか?」
「えっ?」
「良いんですか!?」
声をかけていただいた瞬間に。
私と悠理ちゃんは敏感に反応して翔子先輩に振り向いていました。
「あ~、うん。まあ、沙織ほど賢くはないけどね。」
「「全然!大丈夫です!!」」
沙織先輩も言っていましたけれど。
翔子先輩は学力でも上位100位に入るそうですので、
先生役としては十分すぎます。
むしろ学力が低すぎる私達に協力していただけることが申し訳なく感じるくらいです。
「「よろしく、お願いします!」」
「そ、そう?ならいいんだけどね。」
重なる私達の声に戸惑いながらも翔子先輩は頷いてくれました。
私達の勢いにかなり引き気味でしたけれど。
それでも笑顔で快く引き受けてくれたんです。
「とりあえず、行こっか?」
「「はい!!」」
元気良く立ち上がった私と悠理ちゃんは、
翔子先輩と一緒に図書館に向かうことになりました。




