一応、これでも
《サイド:美袋翔子》
何だかんだで正午ね。
学園中に鐘の音が鳴り響くのとぴったり同じ頃に食堂の前に到着したわ。
…で。
さっそく食堂の中に入ろうとしたんだけどね。
「…あっ!翔子先輩!!」
入口に近づいてすぐに知り合いが駆け寄ってきたのよ。
この声は聞き覚えがあるわね。
声がした方向に視線を向けてみると。
やっぱり悠理ちゃんだったわ。
もちろん悠理ちゃんの隣には優奈ちゃんもいるみたい。
「やほ~♪」
笑顔で声をかけるてみると、
二人も笑顔を浮かべながら私の前に並んで立ち止まったわ。
「もう、大丈夫なんですか?」
心配そうな表情の優奈ちゃんの頭を撫でながらそっと微笑んでみる。
「もう大丈夫よ。私は…ね。」
「どういう意味ですか?」
私の言葉に首を傾げる悠理ちゃんはまだ何も知らないようね。
「何か、あったんですか?」
疑問を浮かべる悠理ちゃんだけど。
なかなか鋭い子だと思うわ。
ちょっとした言葉の差異に気付くあたり、
勘の良い子だと思うのよ。
そんなことを考えながら、
とりあえず二人に説明することにしたの。
「まあ、医務室で目が覚めたあとで色々あってね。話の流れで沙織と試合をすることになったのよ。」
「沙織先輩とですか!?」
驚く優奈ちゃんと悠理ちゃんに、
私は午前中の出来事を思い出しながら話してみたわ。
医務室で目覚めてから龍馬と合流して。
真哉と別れて沙織と試合をしたこと。
そのあとは沙織を医務室に預けて。
龍馬とも別れたんだけどね。
魔力を失った沙織を目覚めさせる方法はないし。
総魔とはまだ連絡が取れていない状況なのよ。
「…とまあ、こんな感じかしら?」
「あ、あの!私でよければ魔力の供給も出来ますけど…っ。」
私の説明を聞いた優奈ちゃんが提案してくれたわ。
確かにその方法も考えてはいたんだけどね~。
…でも。
「すでに私に魔力を分けてるから、沙織の分までは難しくない?」
優奈ちゃんの魔力の総量はイマイチよくわからないんだけど。
私と沙織の二人分の魔力を抱えてるようには思えないのよね。
そう思うから無理にはお願いせずにいたんだけど。
優奈ちゃんは少し戸惑いながらも私に質問を返してきたわ。
「えっと…。沙織先輩の魔力ってどのくらいでしょうか?」
「う~ん。精確なところは分からないけど。私よりも4割くらい上かな~?」
まあ、一週間くらい前なら?
総魔と戦う以前の私なら倍近い差があったとは思うけどね。
今なら少しは差が縮んでると思うの。
一応、これでもね。
頑張った方なのよ。
総魔や優奈ちゃんと違って、
普通は魔力の総量なんてそうそう簡単には上昇しないから。
技術的な面は試合さえ繰り返せば自然と向上するものだけど。
魔力そのものを増やすのは結構手間暇がかかるものなのよ。
だから潜在能力に覚醒した今の私でも、
沙織の魔力には到底及ばないわ。
その辺りも考慮した上で優奈ちゃんには荷が重いんじゃないかな?って思ってたんだけど。
適当に答えてみた私の言葉を聞いても、
優奈ちゃんは笑顔のままだったのよ。
「だったら大丈夫です!翔子先輩の倍とかじゃないなら出来ると思います。」
「ホントに出来るの?」
私よりも大変なのよ?
「はい♪大丈夫です。」
自信を持って頷く優奈ちゃんの言葉が本当なら断る理由はないわ。
…ただ。
出来たら出来たで私と優奈ちゃんの魔力の総量には倍以上の差があるってことになっちゃうのよね?
…う~ん。
分かってはいたけど。
やっぱり吸収の能力は羨ましすぎるわ。
なんて。
ないものねだりをしても仕方がないから、
ここは素直にお願いすることにしたの。
「それじゃあ、お願い出来る?」
「はい♪喜んで!」
快く引き受けてくれた優奈ちゃんと一緒に。
私はまたまた医務室に向かうことになったのよ。




