覚えてない
《サイド:美袋翔子》
…ぅ、ん?
目が覚めると。
すぐ側に沙織がいてくれたわ。
「…沙織?」
「翔子!?」
心配そうな瞳で私を見つめる沙織は、
目を覚ました私を見てほっと息を吐いてた。
ん~?
どういう状況なのかな?
ゆっくりと周囲を見渡して、
自分がどこにいるのかを確認してみる。
広々とした室内。
比較的静かな部屋だから、
外の喧騒だけが微かに聞こえて来るわ。
ただただ静かだと思ったの。
室他に誰もいないんじゃない?って思えるくらい静まり返っていたのよ。
「ここって医務室なの?」
「ええ、そうよ。優奈ちゃんと悠理ちゃんにも協力してもらってここに運んだんだけど、調子はどう?どこか痛いところはない?」
心配そうな表情で問い掛けられたけどね。
特に気になることはないと思う。
だからゆっくりと体を起こして沙織と向き合ってみたわ。
「多分、大丈夫。どこも痛くないし、健康っぽい。」
「そう?だったらいいけれど、あまり無理はしないでね。」
「うん。」
私の無事を確認した沙織は、
隣で眠ってる人物に視線を向けたわ。
つられて視線を向けてみたんだけど。
そこにいたのは真哉よ。
まだ眠り続けているみたい。
「真哉はまだ目を覚まさないの?」
「…ええ、治療は終わってるから、意識が戻るのを待つだけなんだけどね。」
それでもまだ起きないらしいわ。
まあ、あれだけボコボコにしたんだから仕方ないのかな。
…って、あれ?
わりと瀕死の重傷じゃなかったっけ?
手加減なしで攻撃しちゃったのに。
もう治療が終わってるの?
…状況的に沙織が治療したのかな?
それとも。
美春達が駆けつけて治してくれたのかな?
まあ、誰が治療をしたのかは知らないけれど。
そもそも試合後にどうなったのかが分からないのよね〜。
…一応、確認しておこうかな?
真哉の怪我が完治しているのを確かめてから、
改めて沙織に問い掛けてみることにしたの。
「結構、重傷だった気がするんだけど、沙織が治したの?」
「え…っ?」
…え?
何故か沙織が言葉を詰まらせて驚いていたわ。
良く分からないけれど。
不思議そうな目を向けられてしまったのよ。
ん~?
何か変なこと言ったのかな?
「翔子…もしかして、覚えてないの?」
…って、聞かれてもね〜?
覚えてないから聞いてるわけだし。
聞き返されても困るのよ。
「覚えてって…何を?」
首を傾げてしまったわ。
色々と考えてみたけどね。
特に思い出せることなんて何もないのよ。
…というか。
試合が終わったあとのことなんて、
意識がなかったから何も知らないの。
だから、質問してるの。
「沙織が治療したわけじゃないの?」
「北条君の治療をしたのは彼よ。」
「…えっ!?」
「もちろん、翔子の魔力を回復したのもね。」
「…ええええぇぇぇぇぇぇ!?」
…総魔が来てたの!?
沙織の話を聞いて、
記憶を蘇らせようとしてみたけれど。
全くと言って良いほど何も思い出せなかったわ。
…うぅぅぅ~ん?
なんとなく。
なんとなく、だけどね?
微かに。
総魔の声を聞いたような?
気がしなくも、ないんだけど…?
でもね?
全っ然、覚えてないのよ。
「あらら…覚えていないのね?」
…うん、全然。
まったく。
何にも。
覚えてないの。
「…何があったの?」
意識を失ってる間に何があったのか聞いてみると。
沙織は私が倒れてからの出来事を、
ゆっくりと説明してくれたわ。




