表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE WORLD  作者: SEASONS
4月3日
47/185

最強の魔術

さすがに生徒の総数が多いからな。


まだお昼を過ぎたばかりということもあって、

食堂の中は大勢の生徒達で賑わっている。



見える範囲で言えば空いている席は少なそうだ。


全く空いていないわけではないのだが、

食事を終えても談笑している生徒達によって

ほとんどの席が埋まってしまっている。



そのせいで座る場所を探すのにも

一苦労しそうな状況だった。


さすがに1万2千人を超える生徒がいるからな。


こうなるのは仕方がないだろう。



食堂の規模は2000人を軽く

収容できそうなほど巨大な施設だが、

それでも全体の6分の1に過ぎない。



常に人の入れ替わりが激しいのは当然だ。



席の奪い合いもあるため、

のんびりと食事をするのは難しい状態だった。



それでもどうせ解説を強制されるのなら、

ゆっくりできる場所が良いと思っていたのだが。


肝心の翔子はすでに昼食に気持ちが移り変わっているらしい。



「今日は何にしようかな~?」



ご機嫌な翔子の様子を眺めてみる。


楽しそうに選んでいるのはどれも菓子パンばかりだ。


大きさは様々だが、

3つ4つと選んでいる。


あまり栄養があるようには思えないが、

これで満足出来るのだろうか?



「いつもそうなのか?」


「ええ、そうよ♪」



これが標準らしい。


迷うことなく笑顔で頷いている。



「まあ…お昼は、だけどね。さすがに一日中、パンばっかり食べてるわけじゃないわよ。」


「そうか。」



それなら問題ないだろう。


そもそもたいして興味もない話だ。


翔子の食生活は気にしなくていい。



ひとまず俺は一番安い定食を選んでから

たまたま近くに空いた席に座ることにしたのだが、

すかさず翔子は隣の席に腰を下ろしてきた。



「それで?総魔は何が好きなの?」



………。



どうやら食事の話題は終わっていなかったらしい。


俺としてはすでに終わった話だと思っていたのだが、

翔子の中ではまだ続いていたようだ。



…好きな物か。



どうだろうな。


特には思い浮かばない。


そもそもそんな贅沢を言えるような生活ではなかったからな。



生きるために食べる。



そんな状況だったから、

食べられるだけで十分だったのだが。


それでも微かな記憶…いや、思い出せない思い出と言うべきか?



「強いて言うなら魚か。」



まだ両親がいた時に、

魚を釣り、

共に食べた記憶が微かにある。



…すでに親の顔も思い出せないが。



夢でも幻想でもなく、

平穏な日常は確かに存在したはずだ。



「特別好きというわけではないが、特に嫌いなものもないからな」


「ふーん。総魔はお魚が好きなんだ。私もお刺身は好きよ」



そう言うわりには肉も魚も関係のない菓子パンを両手に持って幸せそうに食べている。


栄養が偏っているような気もするが、

本人が満足しているのなら口を出すつもりはない。



わざわざ機嫌良く食事している所を邪魔する必要はないからな。



翔子のことは放置して定食に向き合うことにした。



それから30分間。



食事の間、翔子のくだらない話に延々と付き合わされたものの。


特に何事もなく食事を終えられたことで、

今は暖かいお茶を飲みながらのんびりとした時間を過ごしている。



「ねえねえ。そろそろ聞いてもいい?」



ある程度落ち着くまで話題を避けるように努力していたのだろうか。


これまでの言動を考えると驚きだが、

その程度の配慮は出来るらしい。



普段からそうであればいいんだが。



…単に食事に夢中だっただけだろうな。



お互いに食事を終えたことで、

休息は終わったということだ。



ついに始まった問い掛けに対して、

今回もまた説明をしなければいけなくなった。



「一応、確認するが、さっきの試合に関してだな?」


「もちろんそうよ。」


「最初に言っておくが、今回も特別な事をしたわけじゃない。ただ圧縮魔術の理論を応用して複数の魔術を『同時』に発動しただけだ。」



最初に結果を前置きしてから、

翔子にも理解出来るように説明していく。



「今回の試合でしたことだが…」



一連の手順を言えば、

まずは霧と翼を展開する事から始まる。


この二つがなければ話にならないからな。


今回は圧縮魔術で同時に発動したが、

今まで通り普通に発動しても大差はない。



ただ単純に効率がいいというだけの理由で圧縮魔術を使用したにすぎないからな。


発動の方法そのものを気にする必要はない。



重要なのは結果に至るまでの過程だ。



「次の工程だが…」



時間はかかるが、幾つかの魔術を圧縮しながら翼に保管していく作業を繰り返す。


多少詠唱時間を短縮したとしても、

十種を超える魔術の準備が必要だからな。


どうしても時間がかかってしまう。


だから試合中に5分間待機していたのはこのためだ。



単に相手に時間を与えるのではなく、

事前準備の時間として確保したと思えばいい。


そうして時間をかけて魔術を蓄積しながら、

対戦相手の魔術も吸収して翼に保管していく。



今回は10種を超える程度だったが、

ある程度魔術の蓄積が出来たら後は発動させるだけだ。



5分という制限時間と対戦相手が途中で攻撃を断念したせいで十分な数を揃えられなかったのが心残りではある。


瞬間的な威力は期待値に近かったが、

本来想定していた威力には届いていなかった。


そういう意味ではまだ未完成と言えるだろう。


時間と状況次第ではまだまだ多くの魔術を

蓄積させることができるからな。


時間をかければかけるほど、

より多くの魔術を翼に蓄積出来る。



どこまで蓄積できるかはやってみなければわからないが、

今回は16の魔術を組み合わせて発動させることに成功した。



目標は一カ所。


攻撃は一瞬。


その一撃に全ての魔術が集約する。



圧縮された16の魔術の高速同時展開だ。



回避は不可能。



破壊力も先程の試合で実証されている。



これが試合場という守られた範囲でなければ確実に相手の命を奪う攻撃になるだろう。



俺が望む翼の最終形態と言える複合攻撃。


それが究極魔術『アルテマ』だった。



「なるほどね~。霧と翼の両方が揃って使える最強の魔術ってわけね」



今回は翔子も理解出来たらしい。



圧縮魔術を応用する事によって本当の意味で翼を完成させたことを。



ただ魔術が使えるだけではない。


ただ高速化できるだけでもない。



あらゆる魔術を取り込んで一瞬で発動できる魔術倉庫。


これこそがまさしく天使の翼にふさわしい特性だった。



そしてこの能力は、

翔子にとっても驚異的な力だったようだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ