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THE WORLD  作者: SEASONS
4月3日
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ちょっとした嫌がらせ

受付で手続きを済ませてから会場を出る。



もちろん俺の後ろには当然のように翔子がいるのだが、

すでに気持ちを立て直したのだろう。



今はにこやかな表情に見える。



なぜ機嫌がいいのか?


その理由は聞くまでもない。


今回もまた説明を待っているのは明白だからな。



…とはいえ。



試合が終わるたびに、

いちいち説明するのは面倒でしかない。


だから今は翔子を無視しながら次の目的地に向かって歩みを進めている。


出来ることならこのまま放置しておきたいのだが、

翔子は次の試合が始まる前に

一通り説明をしてもらおうと考えているようだ。


興味津々といった雰囲気で隣に並んで見つめてくる。


そんなふうによそ見をしていたからだろう。



「…ん?あれ?」



進んでいる方角が最後の検定会場ではないという事実にようやく気付いたらしい。



「ねえねえ。どこに向かってるの?」



不思議そうな表情を浮かべながら問い掛けてくるが、

用があると言えるほど大した用事ではない。


次の試合に向かう前に済ませておきたいことがあるだけだからな。



「休憩を兼ねての昼食だ。」


「えっ?もうそんな時間なの?」



近場に時計がないかと視線を泳がせている。



「うわ~。全然、気づかなかったわ」



校庭の一角にあった時計の針を確認したことで、

すでに時刻は午後一時を過ぎているのが確認できたらしい。



すでに正午を大きく過ぎているからな。


今は食堂に向かっているところだ。



「うわぁ…。もう1時を過ぎてる〜。」



正確な時間を言えば13時27分だな。


ふと空を見上げれば、

眩しいほどの太陽はすでに真上を過ぎている。


昼食後の時間帯。


この時間ではまた会場で対戦相手が見つからない可能性は十分にあるだろう。


だから時間を調整するために休息をとることにした。



「もうこんな時間だったのね~。色々ありすぎて時間を忘れてたわ。」



…ほう。



少し気になる発言だな。



「忘れていたのか?」


「ん?そうだけど、それがどうかしたの?」


「いや、少し気になっただけだ。」


「え?なになに?ようやく私に興味が出てきたの?」



なぜか楽しそうな笑顔を見せているが、

正直に言えば翔子自身に興味はない。


そうではなく。


これまでの行動から推測して、

今ここに翔子がいるということに少しだけ違和感を感じたにすぎない。



「誰がどこでどうしていようと興味はないが、昨日と一昨日のこの時間帯は俺の監視から離れていただろう?」


「え?えぇぇぇぇぇぇっ!?気づいてたのっ!?」



当然だ。


だからこそ気になったと言えるのだが。



「昼は理由があってどこかに向かっているのではないかと考えていたんだが、今日は行かなくてもいいのか?」


「うぅ~、まあ、そこはちょっと問題がなくもないんだけど…。っていうか、そこまで気づかれてたことに色々な意味でビックリなんだけど。もしかして私が尾行してたことに実はずっと気づいていたの?」


「ああ、始業式の直後からお昼頃まで、そして昼過ぎに再び監視に戻ってきたことは把握している。だから初日は後を追いかけてくるのに苦労しただろう?」


「うわ~。やっぱりあれって私に気づいて尾行を振り切ろうとしてたのね」


「いや、無理に振り切るつもりはなかった。最終的には監視しやすいように見える範囲に移動したからな。」


「それはそうなんだけど、あれって何がしたかったの?」


「ちょっとした嫌がらせだ」


「うわ~。最悪っ。あの時は本気で見失いそうになって滅茶苦茶慌ててたのにっ」


「ただ黙って監視されるのは気に入らなかったからな」


「うぅぅ~。無断で尾行してた立場上、文句を言う権利はないんだけど…。だけど振り回されてたって言われると釈然としない部分があるわね~」



落ち込んでいるのか怒っているのかよくわからないが。


俺が言えることは一つだけだ。



「振り回される程度の実力だったということだな」


「あぅぅぅ…。返す言葉がないわ」



尾行に失敗していたという事実に激しく落ち込んでしまった様子だが、

今ここで気にすべき問題はそこではないだろう。



「それで、俺の側にいていいのか?どこか別の場所に行く予定があるんじゃないのか?」



出来ればどこかに行ってもらいたい。


その期待を込めてみたのだが。



「…まあね。なくはないわ。ただ、約束してるわけじゃないから絶対っていうほどの理由じゃないし、そもそも時間的にすでに手遅れだし、今更焦って向かっても意味はないかも?っていう感じかな〜。」



なるほど。


どうやら時間的に手遅れということらしい。



「つまり、今から向かうつもりはないというか?」


「ええ、そうなるわね。まあ、ぶっちゃけて言えば、ただ友達と一緒にご飯を食べるかどうかっていうだけの理由だから、特に問題はないわ。」



そういうことか。


友人と昼食をするために姿を消していたらしい。



「まあ、そもそも毎日一緒にって決めてるわけでもないし。時間が合う限りは行こうと思うけど、今日みたいに事情があるときは仕方がないわ。それに、私もそうだけど向こうも色々と仕事を抱えてるから、一緒にご飯を食べられないことなんてよくあることだしね」



…ほう。



今のは少し興味深い発言だった。


どうやら翔子と同じように、

その友人も仕事を抱えているらしい。



それはつまり。


翔子と同様の役割を持っていると考えるべきだろう。



だとすれば翔子と同程度の実力者か、

あるいはその上という可能性もある。



ほのぼのと話す翔子だが、

新たな情報を入手することができたのは好都合だ。



ただ、同時に避けられない問題に直面したことにも気づかされてしまう。



…作戦は失敗だったか。



この状況で翔子が離れてくれる可能性がなくなったということだ。



翔子を監視の役目から外すために

予定があるのではないかと訪ねてみたのだが。


これまでの会話の流れから考えて、

翔子が友人のもとへ向かう可能性は完全に否定されてしまった。



その結果。



一人になる作戦は失敗したことになる。



監視されるだけならまだしも

傍に居続けられるのはかなり迷惑だ。



だからこそ。



どうにか翔子を引き離せないかと考えていたのだが、

現時点で他に考えられる方法はない。


全力で逃げることはできるがそれはそれで面倒だ。



…仕方がないか。



翔子の相手をするのは疲れるが、

昼食の合間にでも話をすれば少しは休むことができるだろう。



そんなふうに妥協案を考えている間に

目的の食堂へとたどり着いていた。



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