逃走
《サイド:美袋翔子》
…で。
またまた特風会に来ちゃったわ。
仕事は一切してないのに、
一日一回以上来てる気がするわね~。
出来ることならこのまま仕事をせずに帰りたいんだけど。
そうもいかないんでしょうね~。
…はぅあぁぁぁぁぁ。
ちょっぴり憂鬱な気分になりながら会議室に入ってみる。
そしてまっすぐ龍馬の机に向かってみたんだけどね。
…うわぁぁぁぁぁぁぁ。
机にたどり着く前からすでに『それ』は見えていたわ。
膨大な量の書類の束。
高さは30センチ以上あるわね。
一枚が1ミリだと計算した場合。
ざっと300枚の書類が積み重ねられていることになるんじゃないかな?
…って?
嘘でしょ!?
この書類を?
全部?
処理しろっていうの〜〜〜〜!?
うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!!!
無理でしょ!?
…って言うか、冗談よね?
あまりの面倒臭さに冷や汗を流してしまうけれど。
隣にいる沙織はのほほんと笑顔を浮かべているわ。
山済みの書類を見ても、
全く気にしてないみたい。
「…あらあら、いつもより多いわね。」
…って!?
感想はそれだけなの!?
いつもより多いとか、
そういう問題じゃないでしょ!?
もっとこう、
他に言うべき言葉があるんじゃない!?
「多いどころじゃなくて、こんなの終わるわけないじゃない!!」
叫んでみたけれど。
沙織の笑顔は崩れないわ。
普通に終わるって信じてるみたい。
「二人で頑張れば終わるわよ?」
ぬああああああああああああああああああああっ!?
無~〜〜〜〜〜理~〜〜〜〜〜っ!!!!
無理、無理、無理、無理ぃぃぃぃぃぃぃ!!!
い〜〜〜や〜〜〜な〜〜〜の〜〜〜!!!
や〜〜り〜〜た〜〜く〜〜な〜〜い〜〜の〜〜!!!
面倒臭さ満載の書類なのよ!?
それも30センチの束よ!
束!!
どう考えても頑張りたくない仕事なのよ!!
「…はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…。」
激しくため息を吐いてみる。
全力で落ち込んでみたけれど。
目の前の現実は何も変わらないわ。
沙織は冷静な態度で時計の針と書類を見比べてる。
そしてゆっくりと私に振り返ったのよ。
「さすがにすぐには終われそうにないから。一度家に帰ってから出直した方がいいかも知れないわね。」
…ん?
…え?
…出直すの?
それって、つまり?
沙織の家に行ってから。
またここに来るってこと?
しんどすぎる…。
なにこれ?
完全に残業よね?
…っていうか。
徹夜になるんじゃない?
うぁぁぁぁぁぁぁ…。
引き受けなきゃよかったぁぁぁぁぁぁぁ。
…って!?
もしかしてこれ!?
沙織が手伝ってくれなかったら?
これを全部?
私一人でやらなきゃいけなかったの!?
無理、無理、無理、無理っ!!!!
絶っ対に無理ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!
10分と持たずに放り投げる自信があるわ。
そう考えれば沙織がいるだけまだマシなのかもしれないわね。
…一応、2人だし?
改めて考え直して。
書類の山から視線を逸らしてみる。
出来ればもう見たくないけどね。
…と言うか。
出来ることなら触りたくもないけどね。
「と、とりあえず、出ない?一刻も早くっ!!!」
沙織を急かして会議室を出ることにしたわ。
『現実』を後ろに放置して、
『幻想』の幸せに逃げることにしたのよ。
別にいいでしょ?
沙織を巻き込んだ以上。
どう考えたってもう逃げられないんだから。
あとのことはあとで考えるわ。
だから今は成美ちゃんに会って、
この心の疲れを癒すのよ!
そう心に決めた私は、
急いで沙織の家に向かうことにしたの!!




