龍馬のお願い
《サイド:美袋翔子》
「試合終了!勝者、御堂龍馬!」
即座に試合を終わらせた私は急いで真哉の治療を開始したわ。
あまり得意じゃない回復魔術だけどね。
それでも放っておくわけにはいかないからよ。
明らかに危険な状況だと思ったの。
…ホントにも〜!!
何回死にかけたら気が済むのか知らないけどね。
真哉が危険な状況だっていうことくらいは一目で分かるのよ。
急いで駆け付ける救急班が真哉の体を回収して会場を飛び出して行くのを見送ってから、
次に龍馬へと視線を向けてみる。
だけど振り返った時にはすでに龍馬も救急班によって搬送されようとしていたわ。
だからその前に。
医務室に運ばれようとしている龍馬に話しかけることにしたの。
「大丈夫なの!?」
「あ、ああ…まあ、なんとかね。だけど今日はもう動けないと思う。それで…さ。悪いけど翔子に、一つだけ…お願いがあるんだけど…良いかな?」
お願い?
龍馬が?
私に?
「何?」
首を傾げる私を見た龍馬は、
苦笑いを浮かべながら言ったのよ。
「まだ会議室に仕事を残してるんだ。出来る範囲で良いから手伝ってくれないかな?」
…えっと。
それってアレよね?
龍馬の仕事を手伝ってほしいってこと?
はぁぁぁ…。
…ったくもう。
「こんな状況でよくそんなことが言えるわね~?」
「…こんな状況でもね。僕達の仕事は、減らないから、だよ…。」
それはまあ、そうでしょうけど。
…う〜ん。
正直に言えばやりたくないわね。
…だけど。
さすがにね?
この状況でね。
嫌だなんて言っちゃうほど私の心は歪んでないわよ?
ちゃんと空気は読めるんだから。
「…はいはい、分かったわよ。適当に片付けておくから、さっさと医務室に行ってきなさい。」
「…ははっ、ありがとう。」
最後まで苦笑していた龍馬は、
救急班に運ばれて医務室へ行ったわ。
その様子を眺めてから試合場を振り返ってみる。
…うわぁぁぁ。
これってやっぱり問題よね?
せっかく修繕が終わったばかりの試合場が完全に使用不可能になってるのよ?
教員50人がかりの結界を吹き飛ばして、
試合場を破壊してしまったの。
まあ、今回は会場全体にまで被害が出なかっただけまだマシなのかも知れないけれど。
でもね?
これはこれでね。
あとの片付けが大変だと思うわ。
このあとの修繕って…やっぱり黒柳所長が苦労するんじゃないかな?
直ったと思ったらまた破壊なんて、
やってられないわよね?
大変なんだろうな~。
なんて。
他人のことを考えてる場合じゃないわね。
気軽に引き受けてしまったせいで余計な仕事を増やしてしまったのよ。
もうすぐ6時なのに。
沙織と合流したいのに。
仕事なんてやってる場合じゃないわ!!
…ったく、も〜〜〜!!
どれだけの仕事が残ってるのか知らないけれど。
とりあえず特風会に行ってみるしかないわね。
龍馬がやり残した仕事を確認するために。
急いで会場を出ることにしたのよ。




