舞い散る血飛沫
まさか!?
慌てて大穴から離れた翔子の様子から、
真哉がまだ戦える事を瞬時に理解した。
「つ…っ!?」
痛む体を無理矢理起こしながら、
震える手で魔剣を大穴へと向けて構える。
…来るか?
「………。」
僅かな沈黙が訪れ。
大穴からゆっくりと真哉が歩み出てきた。
「…ちっ!油断したぜ。まさか、グランド・クロスが使えるとはな。」
槍を杖代わりにして歩みを進める真哉だけど、
一目見ただけでも相当な重傷なのは間違いない。
「さすがにきついか…。」
体中に見える傷痕。
まともに歩いている事が不思議なくらい危険な状態に思える。
だけど。
真哉は止まらなかった。
「だが、まだだっ!まだこの程度じゃ『あいつ』には届かねえぜ!!」
構える真哉の槍の先端に再び風が集まっていく。
「これが…最後の一撃だ。これが決まらなければ龍馬の勝ち。だが、決まれば俺の勝ちだ!」
槍に集まる風が真哉の体を覆い尽くしていく。
風を纏う真哉。
槍の先端が、激しく輝きだした。
「対天城総魔用に新たに考え出した究極の奥義だ。ボルガノンを越える最速の一撃。この技で俺は龍馬を越える!!」
力強く宣言する真哉から圧倒的な魔力が槍の先端に集約していく。
くっ!
ダメだっ!!!
これは危険過ぎるっ!!
ただでさえ重症の身体で全ての魔力を注ぎ込む真哉の攻撃。
この一撃は命の危険さえ伴っているように思えた。
…止めなければっ!!
そうは思っても体が思うように動かない。
…動けっ!
…真哉を止めるんだ!
なんとか防ぎきらなければ僕も真哉も命を落としかねない。
そう思えるほどの危機感が僕の思考を埋め尽くしていく。
…真哉の攻撃を防ぐ力を!!!
魔力を込めるルーンが輝きを増す。
…全てを破壊する力を!!!
願うほどに光が強くなり。
僕の意志に反応して輝きを増していく。
…これが僕の力だ!!
全てをねじ伏せる圧倒的な暴力。
その力を示すために。
ダークネスソードを構え直して新たな力を解放する。
「グラビティブレード!!」
ダークネスソードが黒い光を生み出して、
僕の周囲を漆黒に染め上げた。
「…それが龍馬、お前の力か。なら、見せてもらうぜ!どっちが上かをなっ!!」
僕の魔術を見つめる真哉が全力で突撃する。
「ソニックブーム!!!」
『ブワッ!!!!』と風を纏う真哉。
最高最速の突撃によって発生する衝撃波が、
試合場を一直線に削り取っていく。
…速すぎるっ!?
真っ直ぐに地面を削り飛ばしながら。
瞬時に距離を詰めてくる真哉の姿は、
視覚では追えない速さに達していたんだ。
ホンの一瞬で縮まる距離。
秒速で交差する瞬間。
瞬きの一瞬で迫ってきた真哉の究極の一撃が襲い掛かってくる。
「ぶっとべっ!!!」
「叩き落とすっ!!」
気合の一閃。
それぞれの攻撃が交差した瞬間に。
周囲に血飛沫が舞い散った。
「がはっ!?」
「ぐ、ぅぅ…っ」
互いに動きを止めて試合場に倒れ込む。
…相打ちだったのだろうか?
僕の一撃は確実に真哉に当たったはずだ。
だけど真哉の攻撃も防ぎきれなかった。
「残念だけど…引き分け…かな?」
そう思った直後に『タタタタ…ッ』と駆け寄って来る翔子の足音が床を通じて僕の耳へと届いてくる。
どうやら僕はまだ意識があるようだ。
体の痛みは消えないけれど。
何とか耐え切れたのかもしれない。
…というよりも。
最後の一撃が真哉を上回っていたことで、
被害が最小限に抑えられたのかもしれないね。
「く…うっ…!」
なんとか体を起こそうとしても、
思うようには上手く動かない体だけど。
それでもどうにか立ち上がって、
真哉に振り返るくらいのことは出来た。
「真、哉…?」
声をかけても返事はない。
意識を失っているのだろうか?
それとも喋れないほどの重症なのだろうか?
倒れている真哉の表情までは見えない。
けれど。
僕の無事を確認してから真哉に歩み寄った翔子が真哉の戦闘不能を宣言してくれたんだ。
「試合終了!勝者、御堂龍馬!」
僕は真哉に勝てたらしい。




