漆黒の光
互いの手が輝いて。
それぞれの手にルーンが現れる。
僕の手にはダークネスソード。
真哉の手にはラングリッサーが現れた。
今の僕のルーンは巨大なエンペラーソードではなくて細身の剣だ。
ありとあらゆる魔術を破壊し、
如何なる結界も切り裂く究極の魔剣だと思っている。
まあ、自称だけどね。
実際にどこまで効果があるのかは色々と試してみなければわからない。
対する真哉のルーンは長身の槍だ。
軽く3メートルはある槍の先端に光る刃だけでも40センチはある。
その刃の左右両側にも一対の刃がきらめいている。
薄く鋭い刃は直線の刃とは別に、
反り返るような幅広い刃が組み合わされているんだ。
いわゆるハルバードだね。
突き刺すことはもちろん、
切り裂くことも可能な槍。
基本的には物理的な使い方が多いけれど。
風属性の魔術を自由自在に操ることも出来る槍。
それが真哉のラングリッサーだ。
互いに踏み出して駆け寄る。
だけど槍を持つ真哉の方が攻撃範囲が広い。
僕よりも先に攻撃が届くんだ。
横薙に振るわれる一撃。
力任せに槍を振る真哉の刃が僕へと襲い掛かる。
…まずは防ぐ!
『ガキィィン!!!』と金属音が鳴り響いた。
槍の刃を剣で受け止めて、
真哉の攻撃を防いだからだ。
そしてそのまま真哉の槍を瞬時に切り裂く。
「な、にっ!?」
武器が破壊されて戸惑う様子の真哉だったけれど。
それはホンの一瞬だけで、
すぐに気持ちを切り替えて槍を復元していた。
「まだまだぁっ!!!」
連続で突き出される槍の突き。
その攻撃を一旦後方に下がって距離をとろうとした。
…だけど。
「甘いっ!!」
重心を動かした瞬間に。
真哉は体勢を低くして一気に僕へと飛び込んできたんだ。
「ボルガノン!!!」
最速の一撃から生まれる摩擦抵抗によって槍の先端に紅蓮の炎が発生する。
それは灼熱と呼ぶべき紅蓮の炎だ。
真っ赤な炎を帯びた最速の一撃が僕へと襲い掛かってきた。
「ぐ…っ!!」
今の攻撃は回避する事も、
剣で防ぐ事も出来なかった。
後方に飛び退こうとした瞬間を狙われたという理由もあるけれど。
純粋な速度では真哉に勝てないからだ。
…くっ!?
真哉の一撃を受けてしまった僕は、
勢いのまま試合場の端まで吹き飛ばされてしまっていた。
「…体が…痺れる…っ。」
急いで立ち上がろうとしたけれど。
震える足がいうことをきかない。
弾き飛ばされた影響で上手く力が入らなかったんだ。
…凌ぎきれなかったか…。
やっぱり経験不足が影響しているんだろうね。
以前なら軽く対応できたはずなのに。
今の僕では真哉の攻撃を捌ききれなかった。
…この状況はまずい。
ふらつきながらもどうにか立ち上がる。
その間にも真哉は容赦なく追撃しようとしていた。
「お前の力はこの程度かっ!?」
叫ぶ真哉が突撃を繰り返す。
炎を帯びた最速の一撃が、
再び僕へと襲い掛かってきた。
「ぐ…あっ!?」
真哉の連続攻撃で再び吹き飛ばされてしまったんだ。
そして。
後方に広がる試合場の結界へと激突してしまった。
『どんっ!!!』と壁に激突する音が鳴り響き、
激突による衝撃で一瞬呼吸が出来なくなってしまったんだ。
「かは…っ!?ごほっ…ごほっ!!」
試合場に崩れ落ちて倒れ込む。
激突の影響で呼吸が乱れて咳込んでしまったけれど。
それでも真哉の攻撃は止まらない。
容赦なく踏み込んで、
何度でも攻め続けてくるんだ。
「隙だらけだぜっ!!」
振り下ろされる槍。
きらめく刃が頭上から迫る。
「…くっ!」
慌てて真哉の攻撃を防いだ。
次の瞬間。
無意識のうちに真哉の槍を切り裂いていた。
「ちっ!切れ味だけは油断できねえな」
分断された真哉の槍に攻撃力はない。
ルーンを破壊したことで辛うじて時間を稼ぐことが出来たようだ。
…一度体勢を立て直さないと!
真哉から離れるために、
急いで距離をとろうとした。
…だけど。
立ち上がった瞬間に。
脇腹から激痛が走ったんだ。
「う…ぁっ!?」
結界に激突した影響でどこかの骨が折れたのかもしれない。
呼吸するだけでも我慢できないほどの激しい苦痛が襲い掛かってくる。
…まずい!!
この状態だと走ることも出来ない。
回復魔術で治療を試みようとしても、
意識を集中させている余裕がない。
…いや。
そもそもそこまでの治療技術が僕にはない。
「逃がさねえぜ!!」
逃げようとしても追い掛けて来る真哉が僕を攻め続ける。
何度切り裂いてもルーンを復元して襲い掛かって来るんだ。
…このままじゃまずいっ。
必死に剣を構えて槍を切り裂く。
だけど体が思うように動かない。
僕の動きは確実に鈍り始めている。
「必殺!!ボルガノン!!!!」
炎を帯びた最速の一撃が迫り来る。
…くっ!!
回避はできない。
防ぐ体力もない。
向かい来る真哉に対して、
僕は剣を向けるだけで精一杯だった。
だから。
「…ぐぁ…っ!!!」
まともに抵抗できないまま。
三度、弾き飛ばされてしまったんだ。
「く、ぅ、ぅ…っ!」
弾き飛ばされて試合場を転がる。
けれど。
真哉の攻撃は止まらない。
どこまでも容赦なく攻め続けてくるんだ。
「もう終わりか龍馬っ!?あいつなら、天城総魔なら!この程度で終わりはしねえぜ!!」
く…っ!?
真哉の攻撃よりも。
体の痛みよりも。
今の言葉がずっと…。
ずっと僕の心に突き刺さっていた。
…認めないっ!!
僕は強くなるために戦ってきたんだ。
だから。
こんなところで負けられない!
彼なら。
天城総魔ならこんなぶざまな姿は見せないはずだ!!
だから僕も。
いつまでもこんなところで倒れている場合じゃない!!
気合いだけで必死に立ち上がり。
残された力を振り絞って全力で真哉に狙いを定める。
「僕は、彼に勝つためにここまで来たんだっ!」
「だったらその力を示せっ!!行くぜっ!!!ボルガノン!!!!」
突撃の構えをとる真哉に対して向き合う。
…ここで負けるわけにはいかないんだっ!
震える足で必死に体勢を維持しながら。
今の僕に出来る『最強の力』を発動させる。
「これが…これが僕のもう一つの力だ!!グランド・クロス!!!!」
魔術を発動した直後に。
『ダークネスソード』が光り輝いた。
だけどその光は以前とは違っている。
漆黒の輝きを放ちながら。
十字にきらめいて、
接近中の真哉を飲み込んだんだ。
「な…んだとっ!?」
戸惑う真哉だけど。
気づいた時にはもう遅い。
突撃を始めた真哉に回避は不可能だからだ。
「これも…僕の力だよ。」
宣言した直後に。
ダークネスソードから発する漆黒の光が十字を刻み。
真哉の体を突き抜けた。
轟く爆音。
吹き荒れる粉塵。
以前よりも殺傷能力が増した一撃は間違いなく真哉に直撃したはずだ。
…今回は間違いない!
彼の時のように受け流されたとは思えない。
確実に直撃したからだ。
「…ぐあああああああっ!!!!」
真哉の叫び声が響き渡る。
直撃は確定的だ。
その事実を示すかのように。
崩壊した試合場の地面には巨大な大穴が開いてしまっている。
彼との戦い以上の爪痕だ。
圧倒的なまでの破壊力は以前の数倍になる。
後方へと身を引いて逃れることさえ出来なかった僕自身も破壊の余波を受けて倒れ込んでしまうほどだった。
…だけどね。
真哉の方が圧倒的に被害が大きいはずなんだ。
以前を上回る一撃。
天城総魔でさえ認めた僕の最大の攻撃は、
真哉を倒すのに十分な威力を秘めているはずだ。
この攻撃を突破されてしまったら僕にはもう勝ち目がないけれど。
今は攻撃が通じたと信じるしかない。
…どうなった?
動けない僕の代わりに大穴へと近付いく翔子が大穴の中を覗き込んでいる。
…そして。
翔子は即座に逃げ出した。




