表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE WORLD  作者: SEASONS
4月3日
45/185

アルテマ

《サイド:天城総魔》



「ダンシング・フレア!」



二度目の圧縮魔術。


今の俺の実力では二つが限界だが、

今回はこれで十分だったようだ。


大きくうねりながら激しく燃え上がる膨大な炎を放つ。


その強大な炎に直面した美弥子は、

誰の目にも明らかなほどの恐怖を見せていた。



「むっ、無理ぃっ!?いやああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」



立て続けに放たれた魔術によって一分と持たずに倒れてしまう。



その瞬間。


あっさりと試合が終わってしまった。



「し、試合終了!勝者、天城総魔!」



審判員の宣言によって勝利が確定した。



…思ったよりあっけなかったな。



圧縮魔術があったから勝てたというわけではない。


今回は不意を突く形になってしまっただけだ。


勝てたのは単に相手の不注意だったと思ったほうが良いだろう。



…次に期待するしかないか。



苦戦するほどの相手と戦わなければ意味がないからな。



そのために。


再び受付に向かうことにした。







そうして10分と立たずに戻ることになった受付で次の試合の申請を行う。



「もう一度名簿を見せてもらいたい。」


「こちらになります。」



すでに結果を出しているからだろうか?


受付の男性は素直に名簿を差し出してくれた。



…次は加減する必要がないな。



すでに実験の第一段階は終了している。



受け取った名簿に視線を向けてみるが、

今回見るべきは下ではなく上だ。



「この生徒でいい。」



指名した生徒を確認した係員はわずかに眉をひそめていたが、

再び翔子に睨まれるのは面倒だと思ったのだろう。



しぶしぶといった表情を浮かべながらも、

淡々と手続きを進めてくれた。



「…それではCー2の試合場へどうぞ。」



こちらを追い払うかのような態度で指示をだしてきたが、

今更その程度の対応を気にするつもりはないからな。


言われるままに次の試合場へ向かうだけだ。




…ただ。



その移動の間。


珍しく一言もしゃべらない翔子に対しては少なからず疑問を感じたのだが。



…これはこれで静かでいい。



気にするだけ時間の無駄だからな。


さっさと次の試合に向かう事にした。



そして次の試合場となったCー2。



俺と翔子が試合場にたどり着くと、

すでに対戦相手の少年が試合場で待ちかまえていた。



相手は生徒番号131番の立野久雄たてのひさおだ。


彼も先程の対戦相手と同じように、

他の会場での俺の噂は知らない様子だった。



…ただ。



これまでのマジック・ドレインの噂はないのだが、

先程の試合のせいだろうな。


新たな噂が流れているらしい。



俺に視線を向けている周りの生徒達からは、

圧縮魔術の使い手だと囁きあっている声が聞こえてくる。



もちろんそれも間違いではないのだが、

会場を進めるたびに噂話が変わっていくことには呆れてしまう。



とはいえ間違っているわけではないからな。


無理に訂正する気にもなれない。



結局は噂だ。


好きにすればいい。



所詮、噂は噂でしかないからな。



俺の本来の能力は吸収だ。


圧縮魔術の技術は追加要素でしかない。



それでも先ほどの試合では精密な情報を得る為に、

本来の力を使用せずにあえて圧縮魔術のみで戦った。



その結果としてほぼ予想通りの効果と想定内の誤差が確認できている。



だからこそ。


すでに誤差の修正も終えている。



二度の圧縮魔術の実験で新理論の準備は完了したと言えるだろう。



次はこの試合で翼の理論を完成させるつもりだ。



…あとは実証するだけだからな。



頭の中で画いた理論が実現出来るかどうか?


その最終実験を行うつもりで試合場にやってきたのだが、

何も知らない立野はあくまでも噂を信じて話しかけてきた。



「…あなたが圧縮魔術の使い手ですか?」



やはりその程度の認識らしい。


もはや訂正することすら面倒だが、

今回は首を横に振ってから答えることにした。



「それも間違いではないが、圧縮魔術が専門というわけではないな。」


「他にも力があるという事ですね。」



こちらの返答に満足したのかどうかは分からないが、

久雄はそれ以上追求するわけでもないまま堂々と試合場に立ってこちらと向き合った。



「あなたが噂以上の実力を持っていると判断して全力で行きます!」



やる気を見せる立野だが、

俺は無言のまま試合開始を待つことにした。



…余計な先入観を与える必要はない。



噂を否定することも肯定することもしない。


自分の能力を語る必要もない。



…互いに手探りでいい。



相手の実力を読みあうギリギリの戦いがしたい。


そのために余計な会話は避ける。



「それでは今から試合を行います。」



会話のない重い空気。


僅かに険悪な雰囲気が出始めたところで審判員が歩み出てきて試合開始を宣言する。



「準備はいいですか?それでは…始めっ!!」



審判員の合図の直後に圧縮魔術を展開する。



『ホワイト・アウト』


そして


『エンジェル・ウイング』



圧縮魔術によって二つの魔術が解放され、

俺を守るように霧の結界と天使の翼が発動した。



「な、何だ?」



対峙する立野は何も知らない。


俺の力を何も知らない立野は、

恐れる事なく魔術を発動させてしまう。



「テスタメントっ!!」



最上級魔術の一つだ。


絶対零度の膨大な冷気が放たれたが、

当然この攻撃は通じない。


霧の結界に触れると同時に音も立てずにあっさりと消え去ってしまう。



「なっ、魔術が消えた!?何故だっ!?」



驚きを隠せずにいる立野だが、

ここまでは予定通りだ。


すでに実証している現象だからな。



…試したいのはこの後だ。



新たな魔術の実験。


そのために静かに静観する。



「5分間だけ待つ、その間は好きなだけ攻撃すればいい」



状況の読めない翔子と立野は戸惑いながら俺を見つめているが、

今回はこちらから攻撃を仕掛けるつもりがない。



今回は新たな魔術を完成させることが目的だからな。



立野が動くのを待つだけだ。



「………。」



一方的な宣言によって沈黙の時間が生まれてしまう。



それでも考えても答えは出ないと判断したのだろう。


立野は次々と魔術を撃ち始めた。



「サンダー・ストーム!!」



突き出された両手から複数の雷撃が放たれた。


上級魔術ではあるが最上級ではないな。


勢いよく渦を巻いてた雷撃は竜巻となり、

霧に向かって襲い掛かる。


だが、これも俺には届かずにあっさりと消滅してしまう。



「くっ!ならっ、ボム・クラッシュ!!」



大きな空気の塊だ。


最上級風魔術のエクスカリバーほどの殺傷力はないが、

瞬間的に広範囲に影響を及ぼす暴風。


空間がゆがんだかのように見えるほど強力な爆風だ。


爆音とともに勢いよく炸裂した暴風だが、

それすらも生まれてすぐに消失してしまう。



…なかなかの威力だが、どれも無意味だ。



連続して放たれた高位魔術だったが、

霧の結界を吹き飛ばすには至らなかった。


そのどれもが霧の結界に触れると同時に吸収されてしまったからだ。



…さあ、次はどうする?



立野は再び沈黙している。


どうするべきか考えているのだろう。



「もう終わりか?」



内心で頭を抱える様子の立野に問いかける。



「まだ時間はあるが、諦めるのならここまでだ」


「………」



挑発されてもどうすればいいのか悩んでいるのだろう。


動きを止めたまま何もできずにいる。



…ここまでか?



どうやら思い浮かぶ限りの攻撃は仕掛けたようだ。


そのことごとくが無効化されてしまったことで有効な打開策が思い浮かばないのだろう。


ただただ時間だけが過ぎてしまい、

そのまま5分が経過してしまった。



「…立ち止まってしまったら何も掴めない。」



何もできなくなった立野に向けて右手を掲げる。


その行動につられるかのように、

自然と立野と翔子の視線が俺の右手に集まる。



これから何が始まるのか。



周囲にいる生徒達も異様な雰囲気にのまれて俺の動きに注目しているようだ。



「「「………。」」」



翔子を含む観客達が様子を見守る。


その中で、次の俺の行動に誰もが驚く事になる。



…これが真の破壊魔術だ。



「アルテマ!!」



魔術名を宣言する。


ただそれだけで翼から放たれる魔術。


この魔術に詠唱は必要ない。



瞬間的に光り輝く両翼の羽根。


会場にいる誰もが光を認識するよりも早く、

検定会場から全ての音が消え去った。


いや、正確にはかき消されたというべきだろうな。



ほんの一瞬。


瞬きの間に放たれた十数種の魔術の一斉掃射。


多重同時展開によって発生した爆音が、

人の聴覚の限界を超えたからだ。



単独では決して起こり得ない破壊の嵐。


ただの乱撃でも連続攻撃でもない一点集中攻撃だ。


その結果として。


会場にいた全ての人々の聴覚が麻痺してしまうほどの爆音が会場中に響き渡った。



「「「………。」」」



音が消えてしまった会場に訪れる数秒の静寂。


その場で目撃していたはずの生徒達でさえ、

状況を理解できなかったようだ。


もちろん翔子ですら理解出来なかっただろう。



直接その体で経験したはずの立野ですら、

何が起きたのかわからなかったかもしれない。



「………。」



痛みを感じるよりも先に意識を失ってしまったのだろう。


自分に何が起きたのか?


知ることすら出来なかったと思われる。


そしてそれは試合場内に立っていた審判員も同じようだ。



何が起きたのかが理解できずに、

驚きを隠すことさえ出来ずに、

ただただ呆然としている。



そんな誰もが不可解な状況の中でも、

俺だけは魔術の結果に満足できる気分だった。



「…試合は終わりだな?」


「………。」



審判員に問い掛けてみたのだが、

いまだに混乱状態にあるのだろう。



審判員は無言のままコクコクとうなずくだけで精一杯だったらしい。



「………。」



結局最後まで試合終了の宣言はなかったが、

それでも俺の勝利は確定だ。



これで生徒番号131番を獲得した。


サード・ステージの一人として十分な結果を出せただろう。


この番号であれば問題ない。


この会場も役目を終えたということだ。



…いよいよ最後の会場だな。



当初の目標としていた第1検定試験会場。


その最後の会場を目指すために。


この会場から出ることにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ