監禁
「…ったくぅぅぅぅぅ!!わざわざ私達が手伝ってあげてるっていうのに、先に帰るってどういうことよ!?」
「まあまあ、少し落ち着きなさい。」
隣にいる百花がなだめているけれど。
機嫌が戻りそうには見えないね。
「明日はもっと仕事を増やしてやるわっ!」
ブツブツと愚痴を続けているけれど。
それでも仕事の手を止めない真面目さは称賛に価すると思うかな。
すぐ傍にいる桃花も笑顔で理沙を見守っている。
「…まあ、明日のことは明日に考えるとして、あと少しで終わるから、さっさと今日の仕事を片付けてしまうわよ。」
「…はぁい。」
なだめ続ける百花には大人しく従う里沙。
二人は親友だからね。
仲良く作業を進めてくれている。
そんな二人の様子を眺めていると、
まるで沙織と翔子のようだなって思うけれど。
女の子同士の親友っていうのはそういうものなのかな?
僕と真哉だとこんなふうにはならないな…なんて思いながら苦笑していると、
突如として入口の扉が開かれたんだ。
「よう!」
笑顔で入って来たのは、もちろん真哉だ。
噂をすれば…という感じかな。
ノックもなしに入って来るのは真哉だけだからね。
「ん?珍しいのが来たわね。」
少しトゲを感じさせる里沙の言葉だけど。
真哉は気分を害することもないまま笑顔で僕の側へと歩み寄ってくる。
「とりあえず終わったぜ。」
「ああ、ご苦労様。」
真哉の努力を労うと、
百花が僕達に話しかけてきた。
「終わったって、もしかして例の問題児のこと?」
「なんだ?もう知ってるのか?」
真哉の問い掛けに、
今度は里沙が答える。
「鎌田俊雄に関してなら、私達が報告書をまとめたから知ってるわよ〜。それで?結局、最後はどうしたの?」
「あいつなら生徒指導室だ。」
「あ~。やっぱりそうなるのね~。」
『生徒指導室』
名前だけなら聞こえは良いけれど。
実際には学園の地下に密かに用意されている牢獄だ。
問題のある生徒を監禁するための拘留所であり、
反省の態度を示すまでは何ヶ月経っても出ることの許されない監禁部屋でもある。
だからこそ悠理に近づくことができなくなったわけだけどね。
…と言っても。
扱いが酷いとか拷問があるとかそういうことじゃないよ。
単純に外に出られないだけで、
最低限の生活は保証されているんだ。
要は外出禁止の寮だと思えばいい。
ただ、性格に問題のある生徒ばかりが集まっているせいで日々争い事が絶えない場所ではあるんだけどね。
それでも普通に生活する分には問題ないと思うよ。
大人しくしていれば実害はないからね。
ただし。
特殊な結界が存在するために、
生徒指導室にいる間は一切の魔術が使えなくなる。
もちろん彼や僕達くらいの実力者の魔術を封じる力はないけれど。
ファーストやセカンドに所属する生徒達の魔術を封じる程度は出来る場所だ。
その結界の存在によって、
喧嘩をしても傷を治すことさえ出来ないからね。
怪我をしても痛みが消えることがないという罰則もある。
なおかつ毎日反省文を書き続けなければ強制退去として『本物の牢獄』に送られる可能性もあるからね。
精神的な負担は大きいと思うよ。
…だけどね。
この処置は学園の治安を守るために必要なんだ。
そしてこの国の治安を守る為に必要とされている措置でもある。
「ひとまずこれで悠理に近付くことは防げそうだね。」
「まあ、そうだな。あれだけ性格の歪んだ奴を野放しにすれば、いずれ悠理が泣くことになりかねないからな。この程度の処分は必要だろ。」
「ふ~ん。なるほどね~。」
僕達の会話を聞いていた里沙が報告書の最後に一文を書き足した。
「生徒指導室行き、と。これでおっけ~ね。」
完成した報告書をまとめ終えてから。
里沙は静かにペンを置いた。




