睡眠不足
《サイド:天城総魔》
午後1時40分。
再び訪れたルーン研究所の実験室では、
すでに実験の準備が整っている様子だった。
「来たか、天城君!待っていたぞ」
歩み寄って来るのは黒柳だ。
笑顔を見せてはいるが、
目の下にはクマが出来ているように思える。
寝てないのだろうか?
少し無理をしているように感じられた。
「寝てないのか?」
「ん…?ああ、いや、1時間程度は眠れたと思うが、それがどうかしたか?」
どうということもないが、
少し気になっただけだ。
「目の下にクマができているからな。寝ていないのかと思っただけだ。」
「ああ、そうか。まあ、眠いのは事実だが、まだ何とかなるだろう。そういうきみはどうなんだ?少しは休めたのか?」
「ああ。十分に有意義な時間を過ごせたと思う。」
結果から言えば俺も眠れたのは1時間程度だが、
今は睡眠よりも優先すべきことがあるからな。
「休息は十分だ。」
「そうか。それは良いことだ。まあ、俺はあまり寝る暇がなかったがな。ははははっ」
寝る暇がなかったと言って笑い声をあげる黒柳だが、
寝ていないという意味では俺も同じだ。
黒柳はまだ気付いていないようだが、
わざわざ説明する必要はないだろう。
今は実験が最優先だからな。
「実験は継続できるのか?」
「ああ、職員も十分に休息が取れたからな。そろそろ実験を再開することにしよう。まだまだ調べることは山のようにあるんだ。きみも大変だろうが、こちらも職員総勢で対応するから全力で暴れたまえ!」
再び楽しそうに笑う黒柳だが、
その様子を見ていた西園寺達はため息を吐いているように見える。
今日の実験は昨日と同じ作業の繰り返しだからな。
これから始まる長時間の実験を考えれば西園寺達の気持ちも分からなくはない。
とは言え。
ここで実験を中断することは出来ない。
最後までやり通さなければ、
実験を始めた意味がないからな。
実験の内容に関わらず、
結果を出すことが研究所の役目だ。
だからこそ。
徹底的に調べ上げるために、
今日も実験場に向かって歩きだすことにした。
「始めよう。」
俺の言葉をきっかけとして、
実験室の空気が急速に張り詰めていく。
「「「「「………。」」」」」
一瞬にして気持ちを切り替えていく職員達の誰もが、
真剣な表情で実験の開始を待っている。
そんな緊張感を楽しむかのように、
黒柳が前に進み出た。
「よし!では、実験二日目を開始する!!全員、気合いを入れて仕事をしろっ!!」
黒柳の合図によって、
実験が再開されることになった。
俺の能力を調べ上げる為に。
今日もまた。
実験が始まった。




