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THE WORLD  作者: SEASONS
4月10日
434/1342

理不尽な暴力

《サイド:深海優奈》



もうお昼ですね。


午前中の勉強を終えて図書館を出た私と悠理ちゃんは食堂まで移動しました。



もちろん目的は昼食です。



今日も悠理ちゃんと二人でご飯を食べようと思っていたのですが…。



もうすでに入口付近から混雑している様子が見えています。



数え切れないほど多くの生徒さん達が出入りしている光景が見えていました。



「うわぁ~。毎日だけど凄い人数だよね?」


「だね~。…って、あぁぁぁっ!?」



話しかけたことで頷いてくれたのですが、

その直後に足を止めた悠理ちゃんが少し離れた場所を指差しました。



「あの…馬鹿っ!!」



え?


馬鹿?



悠理ちゃんが『馬鹿』と叫んだことで、

てっきり武藤さんがいるのかと思いました。



…ですが。



悠理ちゃんの視線の先を追ってみても、

見覚えのある人はどこにもいません。



どうやら武藤さんがいるわけではないみたいです。



「…誰がいるの?」



聞いてみたのですが。



「やば…っ!?」



悠理ちゃんは答えるよりも先に私の後ろに隠れてしまいました。



慌てて私の後ろに隠れた悠理ちゃんは、

体を小さくして必死に誰かから逃げようとしているようです。



「…どうしたの?」



もう一度訪ねてみたことで、

悠理ちゃんは私の口を塞ごうとしました。



「ごめん、静かに…っ!って、うわぁ!?」



ですが私の口を塞ごうとして動いたことで誰かと目が合ったようですね。



「ぁぁぁぁ…っ!!!!バレたっ!?」



今まで以上に慌てながら、

もう一度隠れようとする悠理ちゃんでしたが、

その前に一人の男子生徒が近付いてきました。



「…よう。探したぜ、悠理。」



全く見覚えのない男子です。


悠理ちゃんは知り合いのようですが、

私は知らない人でした。



誰でしょうか?



よくわかりませんが、

悠理ちゃんは会いたくなかったようですね。



「…最悪ぅ…。」



私の背後で呟く悠理ちゃんは深々と溜息を吐いています。



何となくですが、

落ち込んでいるようにも見えました。



それほどまでに会いたくなかったのでしょうか?



必死に隠れる悠理ちゃんに歩み寄った彼は、

私を無視しながら強引に悠理ちゃんの手をとりました。



「やっと捕まえたぜ。」


「い、いやっ!!放してよ…っ!!」



悠理ちゃんは嫌がっているのですが、

それでも彼は無理矢理引きずり出そうとしています。



「いいからこっちに来いっ!!」


「い…嫌っ!!!」



無理やり引っ張られる悠理ちゃんは必死に抵抗していますが、

腕力ではどう考えても勝てないと思います。


ずりずりと引きずられた悠理ちゃんは、

逃げることもできずに私の後ろから出てしまいました。



「やめて…っ!!放してよっ!!」



必死に叫ぶ悠理ちゃんですが、

それでも彼は手を放そうとはしません。


それどころか強引に悠理ちゃんを抱きしめようとしています。



…さすがに。



これはちょっと問題ではないでしょうか?



どういう関係なのかは分かりませんが、

黙って見ていられる状況だとは思えません。



誰かに助けを求めるべきかもしれませんが、

周囲の生徒さん達は戸惑いながら様子を見ているだけで誰も駆けつけてくれませんでした。



私としても助けを求める余裕なんてありません。



だから。



慌てて二人の間に割り込むことにしました。



「や、やめてくださいっ!」



悠理ちゃんを捕まえる手を引き離そうとしたんです。



…ですが。



その行動が気に障ったみたいですね。



「うっせえ!!!」



不意に反対の手が飛んできて。


気づいた時にはすでに、

私は地面に転がっていました。



「…ぁ、ぅ、っ…?」



一瞬の出来事だったので、

自分でも何が起きたのか分かりません。



ですが。


ほほが痛くて、

口の中で血の味がしました。



たぶん、殴られたんだと思います。


その事実に気づいた瞬間に、

自然と涙がこぼれてしまいました。



「わた…し…っ。」



理不尽な暴力を受けたことが怖くて、

その場から動くことができませんでした。



悠理ちゃんを助けたいのに。


なんとかしたいのに。



怖くて。


どうすればいいのか。


分からなかったんです。



「…悠、理ちゃん?」



助けたいと思う気持ちと怖いと思う気持ちが混ざり合って、

悠理ちゃんの名前を呼ぶだけで精一杯でした。



だから…でしょうか?



「…この馬鹿っ!!」



彼に殴られてしゃがみ込んだ私を見た悠理ちゃんは、

逃げるのをやめて彼に怒鳴り始めました。



「優奈に何するのよっ!!謝りなさいよっ!!」



私のために怒ってくれる悠理ちゃんですが、

彼の態度は変わりません。



「うるせえっ!」



再び拳を振るいあげた彼は、

今度は悠理ちゃんを殴ろうとしていました。



…ですが。



「…っ!」



目を閉じて痛みを堪えようとする悠理ちゃんの前に、

一人の男子生徒が割り込んでくれたんです。



そして悠理ちゃんを庇うかのように立ちはだかって。


彼の手をつかみ取ることで。


怯える悠理ちゃんを守ってくれたんです。



「ああ…っ?何だ?てめえはっ!?」



突然現れた人物を怒鳴りながら睨みつけていましたが、

その態度は私から見ても間違っていると思います。



どう考えても勝てる相手ではないからです。



「…3秒間だけ待ってやる。」



悠理ちゃんを守るために間に入った北条先輩が、

彼に対して冷ややかな視線を向けながら警告していました。



「大人しく土下座して謝るのなら、見逃してやるぜ?」


「はぁ?ふざけんなっ!!」



彼は悠理ちゃんを手放した手で北条先輩に殴り掛かろうとしたのですが、

その前に『ゴキィッ!!』と、

何かが折れるような音が響きました。



「ぐ、ぐああああああっ!!!!????」



突然、悲鳴をあげた彼は肩を押さえながらうずくまっています。


これは…たぶん、あれですよね?



おそらくですけど…。


腕が動かないということですよね?



つまり今の音は、

骨が折れた音…なのでしょうか?



突然始まった惨劇に戸惑う人達が見守る中で、

北条先輩は彼を見下しながらカウントを始めました。



「…1…。…2…。」



3秒はあっという間です。



「…3…。ゲームオーバーだ。」



時間切れを宣言した直後に。


しゃがみこんでしまった彼のあごを北条先輩が全力で蹴り上げました。



「が…っ!!!!」



あっ!?


うわわわ…っ!



顎を蹴り上げられた彼の口から、

何本かの歯が砕け落ちたように見えます。



さすがに今の一撃はかなり痛かったのではないでしょうか?


彼は叫び声すら出せないまま、

背中から地面に倒れ込んでいました。



「…ったく、ザコが意気がるんじゃねえぜ。」



吐き捨てるように呟いた北条先輩はまだ気が済んでいないようですね。


倒れ込んでいる彼に歩み寄った北条先輩は、

強引に彼の髪の毛を掴んでから私の側まで引きずってきたんです。



そして、彼の頭を踏みつけて無理やり土下座をさせました。



「く、っ!」



頭を踏み付けられて地面に顔をこすりつける彼は相当苛立っているように見えますね…。


ですが北条先輩は気にしていないようです。



憎しみを込めて睨み付ける彼を見下ろしながら、

再び宣告しました。



「今度は手加減しねえぜ?これ以上、痛い思いをしたくなければ大人しく謝りな。」



とても冷たい声だったと思います。


見ている私でさえ寒気を感じるほどだったからです。



だから、でしょうか?



殺気とも思える威圧感を受けた彼は、

涙を流しながら叫び始めました。



「わ、悪かった!俺が悪かった!謝るっ!だからっ、だから許してくれっ!!!」



泣き叫ぶ彼の姿を見たことで、

ようやく北条先輩は満足したようです。


戸惑って何も言えないでいる私に尋ねてくれました。



「どうする?もういいか?」



今の表情はとても優しい笑顔です。


つい先ほど冷たい言葉を発したとは思えないような、

とても明るい笑顔で私に話しかけてくれたんです。



「…あっ、は、はい…っ。私なら…大丈夫です。」


「そうか。なら、いいな。」



私の確認を取った北条先輩は踏みつけていた彼を無理矢理引きずり起こしてから再び冷たい声で彼に囁きました。



「これが最終警告だ。二度とこいつらに近付くんじゃねえ。いいな?」



北条先輩の問い掛けに、

彼は無言で何度も頷いています。


その様子をしばらく眺めてから、

北条先輩は手を放して彼を解放しました。



「さっさと消えな。」


「く、くそおおおおおおっっ!!!」



全力で走り去っていく彼を見ていると、

とても反省しているようには思えませんね。



きっとまた来るのではないでしょうか?



そんな不安を感じながら彼の後ろ姿を眺めていると、

自然とため息が出てしまいました。


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