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THE WORLD  作者: SEASONS
4月10日
429/1326

思いのまま

「ルーンが完成したのか!?」



淳弥が駆け寄るのと同時に両手から光が消えたわ。



…って言っても。



失敗したわけじゃないわよ?



発動に成功したから光が落ち着いたのよ。


完成したルーンに私と淳弥の視線が集まる。



「…なんだ、これ?」



淳弥はまだ分からないようね。


だけど私は分かるわ。



これが…。


これこそが私のルーンなのよ!!



「完全!完璧!理想通りね!!」



自分のルーンに満足したところで、

龍馬も傍に歩み寄ってきたわ。



「おめでとう、翔子。ようやくルーンが完成したんだね。」


「あ~、うん。一応ね~♪」



出来立てだから実際に上手く使いこなせるかどうかは別問題なんだけどね。



だけど私の手の中に。


ルーンは確かに存在しているわ。



「これが私のルーンよ!!」



自信を持って宣言する私に視線を向ける淳弥と龍馬の二人。



自分達の席から近付いては来ないものの。


興味深そうに眺めている木戸君と須玉さんも私のルーンに視線が釘付けね。



そんな感じでみんなの視線を浴びる中で、

私は初めて手にする第2のルーンをマジマジと見つめてみたわ。



うんうん。


想像していた通りの形なのよ。



大きさ自体は本に記されていたものよりも小さめの30センチ程度。



見た目は全然違うけれど。


形状はほぼ同じはず。



広げれば60センチに達する武器なんだけど…。


広げてみる前に淳弥が話しかけてきたわ。



「それって、あれだろ?扇子せんすだよな?」



まあ、ね。


間違いではないけど…ね。



「正確には『おうぎ』よ!」



風を生み出すための扇。


それが私の選んだ形なのよ。



「変な形を考えたもんだな。」



え~?


それを敦弥が言っちゃうの?



「手袋の淳弥に言われたくないんだけど?」


「はぁ?馬鹿にするな。あれにはちゃんと意味があるんだぞ!」


「何よ~!私だって、ちゃんと考えたんだからねっ!!」


「何をどう考えたらそうなるんだ!?って言うか、扇なんかにどんな意味があるんだ?」



…ったくぅ。



一々、うるさいやつね。



こうなったら私の言葉を全く信用しない淳弥に一から十まで説明するよりも、

直接見せた方が早いわね。



そう判断してから席を立って、

勢いよく扇を広げてみせたわ。



ひと振りするだけで『バサッ!!』と広がる神秘的な扇。



色鮮やかにきらめく扇の形状、装飾、色彩、紋様の全てが想像通りだったわ。



不満なんて欠片も存在しないの。


30本の骨組みを繋ぐ魔力の帯がキラキラ輝いていてすっごく綺麗なのよ。



我ながら惚れ惚れする、っていう言葉はこういう時に言っちゃうのかもね〜。



…うんうん!



自画自賛したくなるくらい最高の扇なのよ。



180度に開いてみると、

予想以上に大きく見えるわね~。



なんだかもう、見ているだけで心の底から大満足なの。



…だけどね。



何も理解できない淳弥に思い知らせてあげるためにね。



手にした扇を水平に構えてから『あの魔術』を展開してみることにしたわ。



『…ポゥ…ポゥ…ポゥ…』と、

骨組みの先端に次々と現れる光の粒。



この一つ一つが『魔術の核』なのよ。



光は一瞬で数を増して、

30本全ての骨組みの先端に輝いたわ。



…でもね~。



たぶん淳弥は知らないでしょうね〜。



木戸君と須玉さんだって知らないと思うわ。


不思議そうに光の粒を見つめる3人の視線が何も知らない事実を物語ってる。



だけどね?


龍馬だけは違うのよ。



龍馬だけはこの光の正体を知ってるはずなの。



「…し、翔子、まさか、まさかこの光はっ!?」



戸惑いを見せる龍馬が動揺する姿に気付いた淳弥が私に尋ねてきたわ。



「この光は何なんだ?」



…ふふん♪



何も知らない淳弥にね。


私は微笑みながら答えてあげたわ。



「これは圧縮魔術よ。その火種とも言えるけどね。」


「…火種?」



そう、火種。



魔術の核とも言えるんだけど。


まだ理解しきれない淳弥のために、

今度は龍馬が説明してくれるみたい。



「本来なら圧縮魔術は術者の意識に保管されるものだけど。『とある方法』を使えば圧縮魔術を別の場所に保管することが出来るようになるんだよ。」


「はあ!?…んな馬鹿な!?この光が圧縮魔術だと?ルーンに圧縮魔術を保管してるっていうのか!?」



淳弥が驚くのも無理ないわね。


総魔は本当に凄いのよ。


私だって実物を見てなかったら、

ここまで上手くできたかどうか分からないわ。



初めて目にする能力に興味を惹かれた様子の木戸君と須玉さんの二人も机から身を乗り出すように私を見つめてるけれど。


これはまだ準備段階でしかないの。



「実際に見てもいまいち理解できねえが。そもそも、とある方法って何なんだ?」


「いや、それは僕にも分からないよ。でも僕は…いや、僕達は知ってる。彼が圧縮魔術を別の場所へ保管出来ることをね。」



そう。


それこそがエンジェル・ウイングなのよ。



最強の魔術アルテマを発動するための鍵でもあり。


封印した総魔の力の一つよ。



まあ、総魔のように翼の羽の一枚一枚に魔術を保管できるほど私の魔力は高くないけどね。



それでも今の私でも30くらいは余裕で維持出来るわ。


ちょっと前までは1つだけでも精一杯だったんだけどね。



だけど自分自身じゃなくて、

別の場所に保管するという方法なら私でも複数同時展開が出来ちゃうのよ。



まあ、総魔の物まねって言われたら否定できないけれど。



でもね?


これでようやく完成なのよ。



この扇を一振りすれば、たやすくアルテマを発動出来るの。



だから扇にした意味っていうのはね。


そういうことなのよ。



もちろん一つずつ発動することも出来るわよ?



だけどここで重要なのはどう発動するかよりも、

圧縮魔術を保管出来るということにあるの。



総魔のまね事と言われればそうなんだけど。


これが私の特性に最も合ってる気がしたのよ。



複数の魔術を掛け合わせることが出来る特性。



融合の能力を最大限に発揮出来るルーン。



それが『扇』なの!!



骨組みに光り輝く魔術の核は、

全てが私の思い通りに動き出すわ。



単発、複合、結集。



全てが思いのままなのよ。


だからこれで良かったって思ってる。



私の特性はこのルーンだからこそ最大限に発揮出来るのよ。



そんな自信があったわ。



…とはいってもね。



ここでアルテマをぶっぱなすわけにはいかないから解除しないといけないわ。



圧縮魔術を解除してみると。


魔術の核の光も全て消え去ったわね。



そして扇を閉じると細長い一本の棒として収まるの。



このままでも単純な打撃くらいなら出来そうだけど。


あまり痛そうには思えないわね。



でもまあ、頭をしばき倒すくらいは出来るんじゃないかしら?



やろうとは思わないけど。


魔術さえ込めれば鈍器として岩でも砕けるかもね~。



そんな力技に興味はないけれど。


片手で簡単に扱える扇は色々と便利だと思うわ。



弓も好きだったけど、

こっちのほうが私好みかも?



だから今なら自信を持って言えるわ。



これこそっ!!



これこそ私が求めていたルーンの形なのよっ!!!!



華やかかつ華麗に!!



なおかつ武器としての性能以上の可愛らしさっ!!!!



これこそっ!!



これこそ私の求めていたルーンなの!!!!



完成した扇を片手に持ったまま、

心の中で舞い踊りたい気分だったわ。



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