レッドクイーン
《サイド:美袋翔子》
午前10時を過ぎた頃。
何か手がかりになる物がないかな~?
なんて思いながら辞典を読み進めていた私の視線が、とある項目で止まったわ。
今まで全然気にしてなかったんだけどね。
辞典の後半部分に、
ものすごく気になる記述があったのよ。
…うぅ~ん。
一瞬、冗談だと思ったわ。
だけどここに記載されてるのは全て実在が確認されたルーンのはずなのよ。
だから嘘じゃないはずなの。
でもね~?
これって、あれよね?
完全に見た目重視よね?
戦闘においての攻撃力は全く期待できないわ。
そもそも武器ですらないし。
どういうつもりでこんな考えに至ったのかが理解できないのよ。
…だけどね。
私の求める答えが『ここ』にあったの!
面白いっていうか、何ていうか。
微妙な感じ?
…こういうことを考える人って本当にいるのね~。
普通なら絶対に思いつかないと思うの。
これはもう武器とは呼べない武器だからよ。
もちろん防具でもないわ。
誰がどう考えても冗談としか思えない形なんだけど。
実際に存在してたみたい。
辞典に記されている記述によると、
能力自体は風を起こすためのルーンらしいわ。
だけどね?
重要なのはそこじゃないの。
気になったのは『形』なのよ。
長さ50センチを越える、
それなりに大きなルーン。
『広げれば』横幅が1メートルに達する可変式。
名前は『レッドクイーン』っていうそうよ。
単に色彩が赤色だからでしょうね。
多分、所持者の趣味で付けた名前だと思うわ。
能力が風なのに赤色ってよく分からないけれど。
まあ、能力や名前なんて別にどうでもいいのよ。
一目見ただけで、ルーンの形に興味を惹かれたの。
やっぱり、こういうことなのよ。
運命的な出会いって、
こういうことを言うんだと思うわ。
これなら私の特性とも相性が良いはずなの。
それこそ抜群って感じに良いと思うわ。
そんなふうにね。
直感的に感じたのよ。
だから私は思い描くことにしたの。
私が望むルーンの形が分かっちゃったから。
求めていた理想の形が極々自然に心の中に浮かび上がってきたの。
これが答えなのよ〜〜〜!!ってね。
自分でも驚くくらいすんなりと理解できたの。
まるで最初からそうだったかのように。
ずっと以前からそうなることが決まっていたかのように。
ルーンの形がね。
はっきりと鮮明に想像出来たのよ。
…だから今なら。
今ならルーンを作り出せるはず!!
確信的な自信を持てたから。
開いた辞典を膝の上において両手を頭上にかざしてみたわ。
不意に動き出した私に視線を向ける龍馬達だけど。
その程度の視線なんて気にするつもりはないわよ。
今の私にはもう、迷いがないから。
みんなの注目を集めつつも両手に魔力を集中させてみたの。
…大丈夫。
ルーンの作り方自体はすでに知ってるんだから、
どうすればいいかなんて悩んだりしないわ。
ただひたすらに魔力を集めるだけでいいのよ。
…きっと出来る!
結晶化するほどの魔力の凝縮。
そのために集めた魔力によって、
私の両手が急速に輝き出したわ。
以前のパルティアは金色だったけれど。
今回は純白に輝く神聖な光ね。
封印の影響で光属性とは言えないけれど。
総魔の翼に似た光よ。
突如として生まれた光にみんなが驚く状況の中で。
龍馬よりも先に、
淳弥が近づいてきたみたい。




