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THE WORLD  作者: SEASONS
4月10日
426/1318

だってそうでしょ?

《サイド:美袋翔子》



さてさて。


特風会についたわ。


なんだかんだでここに来るのは久しぶりな気がするわね~。



何日来てないのかな?


そんなことさえ思い出せないくらいにね。


長い間、来てない気がするわ。



…まあ、そんな気がするだけで。



実際には総魔と二人きりで来たこともあるから2、3日ぶり?



久しぶりって言うほどでもないわね。



「今日は誰がいるのかな~?」



会議室の扉を開けて、

龍馬と一緒に中に入ってみると。


室内にはすでに3人の生徒がいたわ。



一人目は生徒番号36番の木戸祐樹(きどゆうき)君。


二人目は生徒番号45番の須玉聡美(すだまさとみ)さん。


そして三人目は私に敗北して降格した長野淳弥ながのあつやよ。



個人的には珍しい組み合わせだと思うけど。


淳弥がここにいるのはわりと標準かも?



あっちこっち調査に出かけることもあるみたいだけど。


基本的には私の代わりに書類整理とか各種報告をまとめてくれているからよ。



え?


私がやらない理由?


そんなの面倒だからに決まってるじゃない。



事務作業って嫌いなのよ。


地味だし、疲れるし。


何より長時間座ってるのって苦手なのよね~。



おしりも痛くなるし。


字もそんなに綺麗じゃないし。


沙織みたいに何でも完璧になんてできないの。



だからこういう仕事は全部淳弥に任せてるのよ。



その代わりに実働は私が担ってるから仕事はちゃんとしてるわよ。



こういうのを役割分担って言うんじゃない?



間違ってるかな?



よくわかんないけど、私はそう思ってる。



で、3人を見てみると、

報告書の束を整理してる最中みたいね。



それなり以上に忙しそうに見えるわ。



まあ、書類整理は管轄外(私がそう思ってるのよ)だから手伝うつもりはないけどね。



とりあえず面倒な仕事は淳弥に任せておくとして。


ひとまず中に入ってみると、

3人揃って私と龍馬に視線が向いたわ。



別に仕事をしろっていう意味じゃなくて、

誰か来たから視線を向けてみたって感じね。



ついこの間、試合をした淳弥はともかくとして。


木戸君と須玉さんの二人に会うのって、

今月は今日が初めてかもしれないわ。



あ、でも、仕事上の情報交換はしてたわよ。


ぶっちゃけて言うなら総魔の調査に関して書類のやりとりをしてたの。



霧とか翼とか吸収の能力の解析とか、

色々とお願いしてたのよ。


まあ、結果から言えば分析不可能っていう回答だったんだけどね。



そこは文句が言えることじゃないから例外としても、

研究者としての実績を持つ二人は特風内では分析班として活躍してくれているわ。



ただ、基本的には桃花が分析班の責任者としてここに顔を出すことが多いから、

木戸君と須玉さんはほとんど毎日を研究所で過ごしていてなかなか出会えなかったりするの。



だから、って言うほどでもないんだけど。


私もここには滅多に来ないからあまり関わりがない存在ね。



一応同じ特風に所属しているから全く知らない仲というわけでもないんだけど。


それでも特別仲が良いという関係でもないわ。



当たり障りのない関係ってやつよ。


仕事上の付き合いとも言うわね。



そんなふうに思ってるわ。



で、まあ、無理に関わるつもりがないから気楽に挨拶をすることにしたんだけどね。



「おはよう♪」



元気良く挨拶をしてみると、

真っ先に淳弥が歩み寄ってきたのよ。



「珍しいな。翔子が来るのは久しぶりじゃないか?」


「まあね~。」


「まあね~、じゃなくてだな。諜報部の責任者なんだからちゃんと仕事をしてくれないか?翔子が放置してサボってる分を『全部』俺が負担してるんだからな。」


「えぇぇ~~~〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」



疲れた表情を見せる淳弥に対して、

不満の声で応えてあげたわ。



だってそうでしょ?



淳弥の代わりに、

ちゃんと実働部隊として働いてるのよ?



総魔の傍で。


総魔の為に。



毎日毎日、朝から晩まで頑張ってるの!!



もうこれ以上働く必要なんてないわよね?



「これ以上まだ私に働けって言うの!?さすがに過酷すぎないっ!?」


「…いや、待て。ちょっと待て、翔子!!何でそんなに不満そうに言えるんだっ!?むしろそれは俺の方が言いたいぐらいだぞっ!?」


「どうしてよ!?」



こんなにも。


それこそ命がけで頑張ってるっていうのに!



…っていうか。



実際に死にかけたっていうのに。


まだ私に仕事をしろって言うの!?



ただでさえ総魔に好きになってもらえるように一日中考え続けてるっていうのに。


これ以上余計な仕事をしてる暇なんてないのよ!!



「…ったく、こんなも頑張ってるっていうのに〜。」


「ど、こ、が、だ、よっ!?」



…あ〜!!


…も〜!!



面倒くさいわね〜。



「ああ言えばこう言うけど、私にどうしろって言うのよ!?」


「仕事を、すれば、良いんだよ!!」



訴える淳弥だけど、

私は全力で即答してあげる。



「…やだ!!」


「やだじゃねえええええええええええええええええええええええっ!!!!!!」



全力で叫び声を上げる淳弥だけど、

いちいち気にしてられないわ。



「この手の仕事は淳弥の役割でしょ?私に押し付けないでよね」


「ふざけんなっ!!押し付けてるのはお前だって言ってんだろーーがっ!!!!!」



何度も何度も叫ぶ淳弥がうざいわね。


そんなふうに思った瞬間に。



「…ははっ。」


「…ふふっ。」



今まで黙って様子を見ていた木戸君と須玉さんの笑い声が聞こえてきたのよ。



あれ?


意外ね。



超が付くくらい真面目な優等生だと思っていたんだけど。


思っていたよりも全然普通に笑えるみたい。



だとしたら、もう少し笑わせてみたい気がするわね…って、違うわね。



そんな馬鹿なことを考えてないで、

私は私でやるべきことをしなくちゃいけないのよ。



「悪いけど、急いでるからあとにしてくれる?」



あっさりと淳弥との会話を打ち切ってやったわ。


それでもまだ不満があるみたい。



「あのな…。」



まだ何か言いたそうだったけど気にしないわ。


淳弥と遊んでいられるほど暇じゃないからよ。



「暴れてる暇があるならちゃんと仕事をしなさいよね~?」


「いやいや…それはおかしいだろ?」



まだ文句を言ってくるけど。


きりがないからひとまず無視して本棚に歩み寄ることにしたわ。



「とりあえず~」



適当な本を選び取ろうとして本棚を眺めてみると。



「…ったく、何を探してるんだ?」



すぐ後ろについてきてた淳弥がまたまた話しかけてきたのよ。



…はぁぁぁ。



文句を言ってる暇があるのなら仕事をすればいいのに…。



「特に何ってこともないけどね。一応、ルーンの一覧かな?」



何となく答えてみると。


淳弥は本棚から一冊の本を取り出して、

私に差し出してくれたのよ。



「そう言うだろうと思っていたからな。辞典はすでに探しておいた。この本には観測された全てのルーンが記載されているから何か見つかるんじゃないか?」



淳弥が用意してくれていた辞典はね。


以前、総魔も手にしていた本よ。



『ルーン一覧』って、題名の書かれた本には最強のルーンであるラグナロクについても記載されているわ。



「とりあえずはそれでも見てから考えるんだな。」



辞典を手渡してくれた淳弥は、

あっさりと私から離れて行ったのよ。



なんだかんだと文句を言うわりには準備がいいのよね〜。


こういうところは補佐官として優秀だと思うわ。



…まあ、口はうるさいけどね。



だけど仕事はできるのよ。



それに戦闘の実力も私達とそれほど変わらないと思ってる。



前回はアルテマが直撃したから勝てたけど。


本気で戦っていたらアルテマを発動させる前に組み伏せられていたんじゃないかな?



全然本気を見せないやつだけど、

実はかなり強いはずなのよ。



それこそ龍馬と互角に戦えるんじゃないかな?って思うくらいにはね。



強いはずなの。



本人にその気がないからサードで留まってるけど、

たまに実践で見せる戦闘能力は真哉よりも怖かったりするわ。



力がどうこうとかじゃなくて戦闘技術が危ないのよ。



いわゆる暗殺特化ってやつね。



不意打ち、奇襲、闇討、駆け引き。



そういうのが得意っぽいの。



だから正々堂々と戦う試合では実力を発揮できないでしょうけど。


実践なら誰よりも怖い能力者なのよ。



出来ることなら戦いたくないと思うわ。



真哉や龍馬がどう考えてるかは知らないけどね。



それが私の評価なの。



諜報部の一員としては間違いなく優秀でしょうね。



だから理事長も淳弥を特風に引き抜いてきたんだと思う。



そもそもね。


本来ならね?



サードから特風に入ることってないのよ。



今まで一度もなかったの。



唯一の例外が淳弥だけ。


それくらい優秀なのよ。



だからむしろ私よりも向いてるんじゃないかな?



そう思うけど。



本人は目立ちたくないみたいで、

責任者の立場は私にさせてくれているわ。



まあ、個人的には立場なんて何でもいいんだけどね。



沙織と仲が良いから特風にいるだけだし。


責任者でも下っ端でもなんでも良いのよ。



沙織が辞めるって決めたら、

私も一緒に辞めるつもりだしね。



特風自体に悔いも未練もないわ。



…なんてね。



色々と考えちゃったけど。


敦弥のことはどうでもいいのよ。



…そんなことのためにここに来たわけじゃないんだから。



今はルーンの調査のために。


辞典を手にしたまま自分の席に座ったわ。



でもまあ、今は私を含めて5人しかいないから空席が目立つわね。



14人分の席の半数以上が空いてるからよ。



そもそも全員が揃うことなんてまずないから、

これくらいが標準ではあるんだけどね。



何気なく周囲に視線を向けてみる。



龍馬はすでに仕事を始めていて、

木戸君と須玉さんの二人の意見を聞きながら書類作業に取り掛かっていたわ。



忙しいというほどではないっぽいけど。


大変そうとは思うかな?



…で。



皆とは少し離れた場所で報告書をまとめている淳弥もちゃんと仕事をしてるみたい。



たま~に、こっちをちらちらと見てくる行動に不満が感じられるけど。


口出ししてこないだけまだマシだと思うわ。



もちろん何を言われたとしても聞くつもりなんて一切ないけどね。



ひとまず今はみんなの邪魔にならないように静かに読書をしようと思うだけよ。



ここで調べるべきことはただ一つ。



ルーンの『形』だけなのよっ!!



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