以心伝心
「う~ん…。」
返してもらったお箸で再度、お肉を食べてみる。
直感的によりすぐったお肉は純粋な生姜焼きだったわ。
うんうん。
こういうわかりやすい味付けは普通に美味しいと思うのよ。
…だけど。
次に選んだお肉は味噌炒め…だったのかな?
極端に味が変わって変な気分になっちゃう。
不味くはないのよ?
でもね?
一緒に炒めてるから別の調味料が混ざって本来の味が変わっちゃってるの。
こうなるともう。
よりすぐってもダメなものはダメって思っちゃうわ。
不味いとは言わないけれど。
変な味って思っちゃうのよ。
「これは結構、運の要素が強いわね…。」
部分的には美味しいけど、
部分的に変なのが混じってるのよ。
それも薄味設定とかじゃなくて、
全部が混ざった結果として味が薄くなったっていう感じ?
これはさすがに沙織じゃなくても、
食べたくないって思うのが普通でしょうね。
「ねえ、総魔。これってホントに完食できるの?」
改めて確認しちゃったわ。
さっきまでは量的にどうなの?って思ってたんだけど。
今では味的にどうなの?って思うからよ。
「無理しないほうがいいんじゃない?」
総魔の体が心配になって聞いてみたんだけどね。
「…さっきも言ったが、味は問題ない。今までの中ではまだマシなほうだからな」
…えっ!?
えええええええええええええええええっ!?
「う、嘘でしょっ!?」
「………。………。………。」
驚く私に反して、
沙織は完全に固まっていたわ。
今日のこれでまだマシって…?
普段の格安定食って、
どこまで危険な味付けなの!?
色々な意味で今まで以上に興味が出てきたんだけど。
さすがにもう二度と交換して欲しいとは思わないわ。
この炒め物でさえマシなほうだとしたら、
他のなんてどう考えても不味いわよね?
興味心だけで味見をしてみる勇気なんて私にはなかったわ。
「ね…ねえ、総魔。もうちょっと私のおかず、あげよっか?」
「いや、必要ない。」
…でしょうね。
そう言うと思ってたけど。
それでも聞かずにはいられなかったのよ。
でもね?
でもね?
でもね!?
こうなったらもうホントに私が作ったほうが良いんじゃないかな?
…さすがにね。
料理の『り』の字も知らないような初心者感丸出しの私でもね。
格安定食には勝てると思うのよ。
だから、練習してみようかな?
沙織に教わって頑張ってみたらね。
絶対、これよりは美味しいご飯が作れると思うの。
「………。」
今もまだ絶句してる沙織にちらりと視線を向けてみると。
「………。」
私の視線に気付いた沙織がそっと微笑んでくれたわ。
言葉にはしなかったけどね。
それでも私の考えを理解してくれたんだと思うの。
私に任せて、って感じで頷いてくれたのよ。
こういうところはホントに頼りになると思うわ。
まあ、実際に上手くできるかどうかは私の努力次第なんだけどね。
ひとまず頑張ってみようって思う瞬間だったわ。
…まあ、総魔の格安定食は気にしないことにするとして。
龍馬が選んだ朝食は小さなお蕎麦と炊き込みご飯だったようね。
もうすでに半分ほどなくなってるけど。
私はまだ自分の定食には手をつけてない状況なのよ。
一応、分けてもらったお肉の炒め物は完食したけどね。
これからようやくお魚の煮物定食を食べ始めるところなの。
何だかんだで総魔は黙々と食事を続けてるけれど。
沙織はもう食事を終えそうな感じね。
さすがにパンとコーヒーだけだと食べるのも早いわ。
でもまあ、この4人で朝食を食べるのって、
なにげに初めてかも?
そんなことも考えながらね。
大人しく食事を始めたの。




