実験中断
《サイド:天城総魔》
…午前6時を過ぎたか。
昨日の午後から実験と検証を繰り返していたのだが、
気がつけばいつの間にか朝を迎えていたようだ。
地下に設立されているルーン研究所から外の様子を窺い知ることは出来ないものの。
時間的に考えればすでに朝日は姿を見せているだろう。
実験室を見渡せば各地で眠りにつく職員の姿が見えるのだが、
今はそれも仕方がないと思う。
脱落と復帰の繰り返しで十数時間にも及ぶ実験だったからな。
ほぼ全ての職員が力尽きて倒れ込んでいるが、
この結果は仕方がないだろう。
かろうじて意識を保っているのは僅か数名だけだ。
西園寺や藤沢達も頭を抱え込む状態で、
まともに動けるのは俺と黒柳くらいか。
その黒柳でさえも周囲を見渡してため息を吐いている状況だ。
あまり余裕がある状態とは言えないかもしれないな。
だからだろうか?
黒柳でさえも疲れを振り払うために、
気持ちを切り替えているように見える。
「…さすがにこの辺りが限界だな。だがまあ、大筋の検証は終わっているから区切りとしては良い方だろう。一旦、休憩を挟むことにしよう。」
黒柳が休憩を宣言した瞬間に。
「「「はぁぁぁぁ…。」」」
辛うじて残っていた西園寺達もその場に崩れ落ちた。
「…疲れました…。」
ため息を吐く西園寺は今にも意識を失ってしまいそうに見える。
「せ、せめて、自分の部屋に…。」
ふらつく足取りで実験室を出ようとする藤沢も同様だ。
無事に自室まで戻れるかどうかすら疑問を感じる状態だが、
それでも藤沢は実験室を出て行った。
「私はお風呂に入りたいです…。」
疲れきった表情で歩き出す西園寺もふらふらと実験室を出て行く。
そのあとすぐに。
「少し寝てきます」
大宮は少し離れた場所で横になって眠りについた。
「俺も限界かな…?」
峰山も離れた場所で眠りにつく。
その結果。
動けるのは俺と黒柳だけになってしまったようだ。
「…ははっ。死屍累々(ししるいるい)という感じだな。」
顎に手を当てる黒柳が俺に振り返る。
「天城君はどうだ?」
「問題ない。」
「ふむ。やはりきみは研究者に向いているのかも知れないな。まあ、急ぎはしないがもう一度考えてみてはどうだ?この研究所で働くことをな。」
「悪くはないが、俺には俺のやるべきことがあるからな。それが終わるまで一箇所に留まることは出来ない。」
「目的か…。終わるあてはあるのか?」
「…いや、今はまだ分からないが諦めるつもりはない。」
「ふむ。きみが何を求めているのか知らないが今は聞かないでおこう。だがもしも話したくなったら何時でも来てくれ、相談に乗ろう。」
「ああ、感謝する。」
下手に誤魔化さずに素直に感謝したからだろうか?
「ははははっ。」
黒柳は楽しそうに笑っていた。
「まあ、とりあえず話は終わりだ。天城君も少し休んだ方がいい。実験はまだまだ続くのだからな。」
「ああ、そうだな。」
俺も一旦、実験室を出ることにした。
「食事をしてくる。1時間ほどで戻ってくるつもりだが、それでいいか?」
「あー、いや、もう少し遅い方がいいな。この状況では実験の再開は難しそうだからな」
…まあ、そうだろうな。
職員がほぼ全滅という状況だからな。
すぐに実験を再開するというのは無理があるようだ。
「そうか。だったら午後にでも出直すことにする。」
「ああ、そうしてくれ。それまでには準備も整っているはずだ。」
「分かった。あとでまた来る。」
食堂に向かうために実験室を出ることにした。
…次の実験は午後からだ。
それまでどうするか。
今日の予定を考えながら研究所の外へと足を踏み出してみると。
予想通り研究所の外はすでに朝日が薄っすらと姿を現していた。
早朝と呼ぶべき時間帯だな。
実験の再開まで特に予定はないが、
ひとまず食堂に向かって移動することにした。




