大雑把な質問
《サイド:御堂龍馬》
午後8時過ぎ。
僕はまだ特風会にいるんだけど。
すでにもう、僕以外は誰もいない。
沙織と淳弥は1時間ほど滞在しただけで、
それぞれの場所へと帰って行ったし。
里沙と百花はちょっと前までいてくれたんだけど。
一通りの報告書の整理を終えたあとは片付けも終えて、
日がくれる前に帰宅してしまったからね。
それからはずっと一人だった。
まあ、しばらく留守にしていたせいで、
やらなければいけない仕事がいくつか溜まっていたからね。
全てを確認していたらこの時間まで残ることになってしまったんだ。
だけどそれらも一段落して、
ようやく帰宅できる準備が整ったのがこの時間だった。
少し疲れたけれど。
さすがに今日はもう残業する必要はないと思う。
ひとまず通常業務には明日から戻れば良いんじゃないかな?
理事長が不在の間は特に気をつけなければいけないからね。
特風は学園の平和を維持して安定を保つ為に存在しているんだから。
常に情報を集め続けて、
どんな状況にも対応出来るようにしておかなければいけないと思ってる。
だからこそ。
ここに送られてくる報告書には極力全て目を通すことにしているんだ。
そのおかげでこんな時間にまでなってしまったんだけどね。
そろそろ帰ろうかな?と思って席を立とうとしたその時に入口の扉が遠慮なく開かれた。
「ん?」
『ガチャッ』と扉が開く音に気づいて視線を向けてみる。
そこにいたのは…真哉だった。
「よう、龍馬!」
「あれ?どうしたんだい?真哉がここに来るのは珍しいね。」
書類と向き合うのを嫌がる真哉は滅多に会議室に来ないんだ。
それこそ翔子以上に面倒くさがるからね。
何らかの事情があって誰かが呼び出さない限り会議室に来ることはないんじゃないかな?
少なくとも真哉が自分から来るなんて数ヶ月ぶりだと思うよ。
だからこそ問い掛けてみたんだけど。
「ああ…まあ、あれだ。」
真哉は笑顔を浮かべながら答えてくれた。
「部屋の明かりが点いてるのが見えたからな。もしかしたらと思って来たんだが、やっぱり龍馬だったって感じだな。」
…と言うことは。
どうやら僕を探していたようだね。
「わざわざ会いに来てくれたのかい?」
「ああ、ちょっと聞きたいことがあったんでな。」
「聞きたいこと?」
なんだろうか?
「…まあ、色々とだ。」
真哉は空いているテーブルに腰掛けながら、
真剣な表情で話し掛けてきた。
「まずは俺が倒れてから今日までのことを知りたい。」
………。
今日までのこと、か。
真哉の質問にどう答えるか悩んでしまうね。
質問が大雑把すぎてどう答えれば良いのかが分からないという理由もあるけれど。
そもそも真哉がどこからどこまで知っているのかが分からないからだ。
「確か真哉は翔子と一緒に行動してたと思うんだけど、詳しい話は聞いてないのかい?」
「ああ、翔子か?まあ、大まかな流れくらいは聞いたが、それでもまだ話についていけてないのが実情だな。」
…なるほどね。
翔子と一緒にいたから、てっきり一通りの話を聞いているのかと思っていたんだけど。
どうやらそうじゃないみたいだ。
…となると。
簡単に説明出来ることじゃないから、
順を追って説明する必要があるかな。
「真哉が倒れたあとから説明したほうがいいかな?」
「ああ、それでいい」
「うん。分かったよ。」
僕の知ってる範囲で、
順番に説明してみることにしたんだ。




